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糖度100パーセント  作者: リクルート
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お泊り会 執事とメイドと夕飯

 前に俺が言ったことをこの中で覚えている人はいるだろうか。きっといないだろう。なぜなら、一人として申し訳なさそうにしている奴はいないからだ。前に俺はこう言った。俺の住んでいる家は正確には俺の家ではなく両親の物だ、と。しかし、それを聞いたはずの来織はなんとも楽しそうに他の人と話している。先に言っておくが男は俺一人ではない。北がこの場所にいる。北はなんと姫灯の本当の執事らしい。姫灯も北も言っていたことなので本当と信じるしかない。ちなみに仕えている人はもう一人いる。彼女は織姫のメイドさんの世葉(よわ)さんだ。以前に織姫を家まで送っていったときに一度だけ姿を見ただけだが改めてみるとメイド服がコスプレのようではなくしかっりとした仕事着であることがわかる。本物のメイドだ。彼女は織姫が迷惑をかけないようにと見張りと彼女の世話を頼まれているそうだ。


「そうですね、自己紹介をしましょう。私は(きた)勇郎(ゆうろう)、姫灯お嬢様の執事にございます。何か御用がおありでしたら私をお呼びください」

 彼は娯楽倶楽部ではあまり気にしなかったがかなり背が高い。多分、百七十、八十あるだろう。彼の着ている燕尾服が娯楽倶楽部の物とかなり違っているのはコスプレから制服に変わったのだろう。こちらは本当に執事のようで世葉さん同様、様になっているのだ。

「じゃあ、歳は。あ、高校にいたから私たちを同い年ぐらい?」来織が興味深々に訊く。

「歳は二十一歳です。学校はオランダの執事養成学校に通っておりました。卒業後、お嬢様に仕えております」

 彼はにこにこと笑顔を絶やさない。というか、二十一歳で執事とかすごいな。さらに年上だった。

 一方、世葉さんはすでに仕事を黙々と進めていた。それは夕食の準備である。


 急に開催されたこのお泊り会の為に俺は夕食の食材を買いに行った。それで人数も多いし、鍋料理にしようかと言われたので、そうすることにして、その材料を買いに行こうとしたのだが、北さんが買いに行くと言って買い出しに行った。それから買ってきたものを来織と織姫で調理しようとしたところ、世葉さんが夕食の準備を始めていたのだ。彼女は自分からは話すことはなく、こちらから何か聞けば答えてくれるのだが、それ以外は黙々を仕事をしてくれていた。最初は北さんも手伝おうとしていたのだが、キッチンを見た瞬間に戻ってきた。そのときの言った、一人の方が効率がいい仕事をなさっていましたという言葉の」意味は、よくわからなかった。その言葉を言った時の彼の顔は少し悲しそうな顔をしていた。


「夕食の準備ができました」キッチンからでてきて世葉さんがそういった。

「そうですか、ありがとうございます。それじゃ、みんな食べようか」

 

 そう促すと各々席に着いた。椅子のあるテーブルもあるのだが、人数が多いので今日は床に座ってもらうことになっている。俺は鍋から一番遠いところに座る。正面には世葉さんが鍋の追加の食材をいつでも入れられるようにしていた。

「世葉さん構えてないで一緒に食べましょうよ」

「いえ、私はあとでいただきますので」

「鍋はみんなで食べるからいいんです。世葉さんが食べなかったら俺が申し訳ない」

 そういうと彼女は織姫の顔を見た。

「こういう場では遠慮はしてはいけませんよ。世葉さん」

「そうですか。では、お言葉に甘えて私もいただきましょう。もちろん、材料の追加も私がします。何かあればお言いつけください」

「勇郎もちゃんと食べるのよ。いい?」

「わかりました。私もいただきます」

 しっかりとみんなで鍋を囲んで夕食をとった。皆が楽しそうにしていて、気づけば世葉さんも微笑を浮かべていて、北さんも作ったような笑みではないようで、とても楽しい時間だった。


 夕食を終えて、今度は世葉さんが質問攻めを受けていた。今は、世葉さんに代わって、北さんが食器委など、洗い物をしてもらっている。なんとしてもやるつもりだったらしく、世葉さんが手を付ける前にキッチンに入って、作業をしていた。

「そうですか。では北勇郎がしていたように私も自己紹介をしましょう。私は世葉(よわ)千歌(せんか)と申します。花崎家のお手伝いの長をやっております。このメイド服は私の趣味であり、仕事着ではありません」

「え、その服は仕事着ではないんですか……?」驚きからか、反射的に質問してしまった。

「ええ、この服は私が自分で製作したものです。織姫様から聞いてませんか」

「そうですね。話していませんでした」

「では、改めて。私は純粋な日本人です。しかし、漫画やアニメにはメイドというものがあります。それは幼い私にはとても可愛いもので、なんとしても着てみたいものでした。それから、私はまずは形から入るのではなく、その心から勉強することにしました。ですので、奉仕というものを学びました。それから花崎家にお手伝いとして雇ってもらい、そこで何年か仕えました。その成果で母上様、お嬢様に仕えることができるようになった時、このメイド服の提案をしました。この提案は二つ返事で承認され、今の私になったのです」その自分語りが終わると綺麗な所作で一礼した。

 なるほど、そんなストーリーがあったのか。それにしても小さなころからメイドに憧れていて、それを貫けるとは。なんとも意志が強いというかなんというか。

続く

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