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糖度100パーセント  作者: リクルート
20/70

変えられない運命

 格好つけている彼女は放っておいて、俺たちは帰ろうとしたところ、彼女は後ろから俺たちに合わせた歩調で後をついてきた。なんとも迷惑な中二さんだ。というかこんなわかりやすい奴はいないだろう。

「ふむ。圧倒されているからとはいえ、逃げることはないだろう。私は危害を与えるつもりはない」

 いや、危害与えられてるのだが。

「とりあえず、その話し方やめろ。そして、一度あんたの世界から出てこい」

 灯勇(ともよ)は彼女に一切反応することをやめたようだが、俺は気にしてしまう。なぜなら、こいつにこういわないといつまでもついてきて、中二病チックなことを言ってくるからだ。

「私の世界から出る? 普段からこうした口調なのだが。気に食わなかったか」

「はぁ、いい加減にしないと、俺も無視するぞ。いいな」

 俺はそれ以降、そいつが話し方を変えるまで一切話さないつもりでいた。それが分かったのか、それとも他の要因なのか。彼女はその作ったような口調をやめた。

「あの、その、本当に用事はあるんです。ごめんなさい。でも、ああしてないと緊張してしまって、その、うぅ……」

 こいつは誰だ。


 用があるのは本当のようなので、俺たちは彼女と近くの公園に移動した。灯勇は気に食わなさそうな顔をしていたが、俺についてきた。

「それで、用事って」俺は簡潔に聞いた。

「その、それは、あの、う、うぅ」顔を俯かせて何か言うのを躊躇っているような風だ。

 この雰囲気は知っている。来織の告白の時だ。何か言いづらそうにしていて、顔を俯かせていた。今のこの状態もかなり似ている。というか同じだ。この推理は俺の自惚れであってほしい。これはフラグではありませんように。

「早く言って。今日はあきと二人で帰るんだから」灯勇は彼女を睨んでいた。

 そんな風に見られて彼女は涙目になっている。これは少し助けたほうがいいのか。いやしかし、助けなくてもいいではないのか。そんなことが頭の中でぐるぐるしていた。そんなとき彼女は俺の不意を突いてこう言った。


辺泥(にべ)君が好きです! 私も一緒に居たいんです!」


 最初は何を言ったのかわからなかった。叫んだ。そういう認識しかできたなかった。しかし、次第にその言葉が頭に浸透していく。簡単に言うとフラグ回収。その内容は俺のことが好きだという。


 たっぷり時間を取って俺は理解を試みた。しかし、彼女の顔は明らかにlikeの好きではなく、loveの好きだろう。この雰囲気で俺が人としてかな? なんて訊けば間違いなく頬をぶたれるか、泣かれるかのどちらかだ。お、それでいいのではないか。そうすれば相手は俺を嫌い、四人仲良く遊んでられる。それにこれ以上増えるのは困ると考えていたのはどこのどいつだ。それなら、選択肢は一つだろう。最低なのはわかっている。それでもやるしかない。よし。


「俺は、その、彼女はいるんだよ?」


 違う。言いたいのはそれじゃない。これで俺はタイミングを逃した。これは確実に相手の好意がわかって言ってしまっているじゃないか。これは望んだ結果にはなりそうもない気がしてきた。

 いや、まだ灯勇がいる。なんとか追い払ってくれないだろうか。いや、最低なのはわかっている。

「いや、その、辺泥君に彼女がいるのは知ってるけど、あの、私は近くにいるだけでいいの」

「それは……」

 そうか、俺に恋人がいるとかは関係ないのか。それは困った。割と本気で。ちなみに俺が今こうして冷静に思考しているのは目の前の彼女がかなり慌てているため、俺が落ち着かざるを得ないからだ。しかし、俺も普段と変わらないかと言われるとそうではない。俺も落ち着いてはいない。

「やっぱり、だめですよね。わかってました。そうですよね。私なんて、なんて」

 最初のあの威勢のよさはどうしたというのか。それより何か言わなければ彼女が沈んで行ってしまうだけだ。それはよくない。何がよくないのかわからないがよくない。

「あき。この人も」いつの間にか灯勇は睨んでいた顔を引っ込めていた。

 その言葉の先はわかっている。彼女も一緒ならいいのではないか。そういうことだろう。来織が灯勇に言ったことをそのまま彼女にも適応する。彼女はそう言いたいのだろう。


 しかし。しかしだ。それをすると俺の精神的に今よりも大変になるということ。それは正直、嬉しくない。でも、目の前の彼女が悲しそうな顔をするのはさらによくない。

 俺は心の中でため息をついた。長く、長く息が吐き出る。心の中なので、際限がない。しかし、それで意見がまとまった。そうだ、これでいいや。

「あの、きみが居たいならいいよ。それで」

 これでいいか、と灯勇に視線だけで訊くと彼女は頷いた。曖昧ではなくはっきりと。

 目の前の彼女の顔は嬉しそうだった。というか泣くほどの事ではないだろう。結局行きつく場所は「泣く」というところだった。


 それから彼女は今日はこれでと言って帰って行った。それから俺は灯勇を送り届けるため、帰路についた。

「灯勇、なんか大変になってきたなぁ。俺、この先の人生が心配だ」

「あき、これでいいんだと思う。大事なのはこれから先。心配するなら行動するべき」

 その通りだな。


 起こったことは戻せない。それなら、変えられるのは未来だけ。でも、生きていけるのは今だけだ。そういうことなら、未来を考えるだけではなく、行動することも必要だ。俺ができるかはわからないが。


 それから灯勇の家まで送り届けて、俺は家に帰る。

つづく

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