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不思蜀  作者: 自称速水真澄


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後編ーここは楽しいので?(転生者ざまぁ回)

(転生者ざまぁ回)

数週間後。魏の首都・洛陽。


俺は、豪奢な宴会の席にいた。

蜀は完全に滅び、俺は魏の臣下として「安楽県公」の爵位を与えられていた。


(ふぅ……国は滅んだが、結果オーライだ。皇帝としての重労働(ニート維持のシステム構築)からも解放され、これからは魏の予算で一生ニート暮らしができる。これぞ真のFIRE(早期リタイア)だぜ……!)


俺が心の中でガッツポーズをしていると、宴席の最上段から、冷徹な視線が突き刺さった。

魏の大将軍、司馬昭である。彼は手元の杯を弄びながら、意地悪な笑みを浮かべて俺に問いかけた。


「時に、安楽公。……これほど贅沢な洛陽の暮らしだ。少しは、故郷(蜀)のことが恋しくなったのではないか?」


歴史に名高い、あの有名な質問だ。

現代人の知識を持つ俺は、満面の笑みを浮かべ、史実通りの「完璧な正解」を口にした。


「いいえ! ここは本当に楽しくて、蜀のことなんて、もう思い出しもしません(不思蜀)!」


これでよし。この暗愚なセリフを聞けば、司馬昭は「なんだ、ただの無害なバカか」と安心し、俺を終生監視付きのニートとして養ってくれるはず――。


しかし。

神にブーストされた司馬昭は、フッと鼻で笑い、冷たく言い放った。


「……やはりな。国を滅ぼされてなお、その『働きたくない』という恥知らずな本音を堂々と口にするか」


「え?」

俺の笑顔が凍りついた。


「安楽公よ。お前が成都で行っていた内政改革のデータ(竹簡)は、すべて我が方で精査させてもらった。……驚くべき生産性の向上、流通の最適化、そして完璧な財務健全化。お前には、一国を数ヶ月で大黒字にするほどの、凄まじき『実務能力ワークスキル』がある」


司馬昭はすっと立ち上がり、一通の分厚い書状を、俺の目の前に叩きつけた。


「我が魏国は今、全土のインフラ再整備と、呉国を滅ぼすための大規模な軍事予算の編成という、未曾有の『大プロジェクト』を抱えている。だが、宮廷の官僚どもは無能ばかりで人手が全く足りん。……よって、お前を本日付で、【魏国・国家開発総省の最高執行責任者(CEO)】に任命する」


「……は?」

俺の口から、情けない声が出た。


「お前のその『不眠不休の肉体』と『絶対洗脳カリスマ』のチート能力、我が魏国の国力アップのために、有効活用させてもらう。……さあ、これが明日からの業務スケジュールと、ノルマの仕様書だ」


渡された竹簡を開くと、そこには「1日20時間労働」「休日:なし」「達成目標:3年以内の呉の殲滅と全中華のインフラ一新」という、元の世界のブラック企業すら生ぬるく見えるほどの、地獄のような「超絶過密タスク(デスマーチ)」がびっしりと書き込まれていた。


「ま、待ってください! 俺は降伏したんですよ!? 命の保障と、安楽な暮らしを……!」


「命は保障してやる。働いている限りはな」

司馬昭は、かつて俺を過労死させた元上司と全く同じ「邪悪な経営者の目」をして笑った。


「お前ほどの有能なリソースを、ニートとして腐らせておくほど、私は優しくないのだよ。さあ、今夜からさっそく徹夜で予算案を組んでもらう。断れば……『業務怠慢』として、即座に処刑(解雇)だ」


「ひ、ひえええええええーーー!?」


俺は頭を抱えて絶叫した。

国を滅ぼしてニートになろうとした結果、さらに巨大なメガベンチャー企業(魏)へと強制的に吸収合併(M&A)され、その最高級デスマーチの「プロジェクトマネージャー」として、死ぬまで馬車馬のように働かされる未来が確定したのだ。


天界の水鏡の前で、北斗星君と南斗星君は、ようやく晴れやかな顔でハイタッチを交わしていた。


「やった……! ついにやったぞ! 司馬昭が、あのニート転生者を『究極のブラック労働環境』に引きずり戻した!」

「国は滅びたが、結果的に『不眠不休で働く最強の官僚』が誕生したな! これで中華統一も爆速で進むぞ!」


地上の洛陽のオフィス(執務室)では、元の世界と同じ、いや、それ以上の地獄の業火に焼かれながら、涙目で徹夜の書類仕事に追われる元社畜(劉禅)の、悲痛な叫びが響き渡っていた。


「あああああ! 戻りたい! サボれてた頃の成都に、マジで戻りたい!! 蜀のこと、今めちゃくちゃ思い出してるよちくしょーーー!!」


彼が真の意味で「不思蜀(蜀なんて思い出しもしない)」と言える安楽な日は、二度と訪れないのであった。

昔のニコニコ動画でも劉禅ものかなりありましたよね。私は劉禅好きです。またいつかネタができたら投稿します

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