#5
午後の授業も無事に終わり、放課後を迎えた。クラスメイトと雑談をしてから教室を出たけど……せっかくだし、帰る前にちょっと探索してみよう!
早くも新しい学校の雰囲気に慣れ、ルンルンで校内をウロついた。パソコン室や図書室など、色々覗くことができて万々歳、というところで。
道に迷った。
ベタベタなオチに我ながら悲しくなる。
でも階段さえ見つかれば、下に降りるだけだからな。そんなに心配しなくても大丈夫だろう。
そう気楽に考えてた時、ダンッというものすごい音が真横の壁から聞こえた。
反射的に身を引いたものの、音の原因が気になって目の前の教室へ寄る。ドアに手をかけ、中をそっと覗いた。
「……七瀬?」
床に寝転がる仰向けに倒れるひとりの男子生徒。
そして、彼の上に跨る七瀬がいた。
喧嘩? いや、あの温厚な彼に限ってまさか。
でもよく見たら、七瀬が押し倒してるのは今朝見かけた生徒。康太君に手を出すなと凄んでいた男子だった。何がどうしてあんな事になってるんだ。
ドキドキしてると、わずかに中の声が聞こえた。
「知ってるよな、稲川。ここで男の恋人を作るのは禁止。だってさ」
……なんて?
台詞の意味は理解できても、納得できる内容ではない。
というか昼間とキャラ変わり過ぎだぞ。
男に馬乗りして、あなたの方が襲いそうな空気醸し出してますよ……!
嫌な汗がダラダラ流れたが、状況が分からないから会話に耳をそばだてる。七瀬はどこか楽しそうに、しかし挑発的な口調で話し始めた。
「今朝、廊下で大声で話してたみたいだな。気持ち悪い口喧嘩を聞かされた子が不憫でしょうがないよ。男を巡ってギャーギャー騒いで……ほんと、色恋に走った馬鹿は常識が抜け落ちるよな」
「うるさい、お前には関係ないだろ! 生徒会長がそんな偉いのか!?」
いや偉くないよ。生徒会長は生徒だから。と心の中でツッコんでたら、七瀬は彼の襟を強引に締め上げた。
優しい奴だったのに、どうしてあんな真似を……いくらなんでもやり過ぎだ。
何かの間違いだと思いたいけど、彼は怖いぐらい綺麗な顔で笑っている。
「生徒会は関係ない。単純にムカつくんだ。男同士でイチャつく、お前らの存在が迷惑なんだよ」




