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44話 魂の繋がり

「ご主人しゃま? 大丈夫でしゅか?」


「コハク……」


「この瓶から、なんだかとっても懐かしい匂いがするでしゅ。これは何でしゅか?」


「……」



愕然として、言葉が出なかった。

どう伝えればコハクを傷つけずに済む?


いや、無理だ。

どんな言葉を選んだところで、傷つくどころの騒ぎじゃない。

自分の親がこんな姿になっていたなんて――

受け入れられるはずがない。



「リアムよ。誰かコハクを連れて外に出してくれないか」


「……承知。おい」


「はっ。では、私がコハク様をお預かりいたします。

初めまして、コハク様。私は執事長のキースと申します。仲良くしてくださいね」


「コハク、少しの間キースさんと遊んでてくれる? オヤツもらいな」


「はいでしゅ! キースしゃん、遊ぶでしゅ!」



ラミンはきっと気づいていた。

これはコハクに聞かせてはいけない、と。

リアム陛下も何かを察したのか、すぐに執事長のキースさんを呼び、

コハクを外へ連れ出してくれた。


扉が閉まった瞬間、空気が重く沈む。



「それで……どういう事なのか、説明してくれるな?」


「……この竜は、邪竜ではありません」


「何故わかる?」



リアム陛下が問いかけると、

俺の頭の上にいたラミンが静かに口を開いた。



「邪竜はいわば同胞ではない。

竜族にとっては悪であり、竜に成り損ないのただの強化材料に過ぎぬ。

触れたところで、オリオンが骨と共鳴するなど有り得ぬのだ」


「それは一体どういう――」


「我々竜、そして竜族は魂で繋がっている。

同胞に触れた時、身体が共鳴し、その竜に何があったのか、逆に竜族に何があったのかを伝え合うことができる。

つまり――

オリオンが苦しんだのは、この骨が同胞であり、その想いが伝えられたということ。

そして、邪竜ではなかったという何よりの証拠なのだ」


「そんな……では暁の翼は虚偽の報告を?!」


「……そこまでは知らぬ。

だが、既に辞めているオリオンには関係のないことだ」



ラミンの説明で、すべてが繋がった。

俺に流れ込んできた記憶――

あれがコハクの父親のものだと証明してしまったことが、何よりも胸に重くのしかかる。



「暁の翼を……招集してもらえませんか」


「……かつての仲間に、何を問うつもりなのだ?」



気づけば口が勝手に動いていた。

問いたださずにはいられなかった。



「コハクは……白狐(はっこ)の亜人と竜との間に生まれた子なんです。

この骨に触れた時、その想いが流れ込んできました。

“我が、甘えん坊の白き幼子よ……

その小さな手を護ってやれなくて、すまない”と」


「なっ……それは、まさか」


「この骨は――コハクの父親です。

さっきコハクが懐かしい匂いがすると言ったのは、自分の父親の匂いを感じたからです。

本人は忘れているかもしれませんが……」



「そんな……では暁の翼の連中は、

あの幼き狐の子の父親を殺した、ということか……?」


「……コハク自身、今は魂だけの存在なのでどう思うかは分かりません。

ですが、この竜が討伐されるまではコハクも生きていたはず。

この事実は……俺には重すぎます」



わざとにせよ、誤解にせよ――

コハクの父親は暁の翼の手によって討伐された。

もしコハクがこの事実を知れば、その力を暴走させてしまう可能性だってある。

だからこそ、コハクを巻き込む前に、当時の状況を確認しなければならなかった。



「暁の翼は今どうしておるのだ、ザッカリー」


「現在、依頼は受けず、近場のダンジョンに潜ることを優先して生活しているようです。

グロリアでエドとラリッサ以外の三名が酷い怪我を負ったとかで、そのリハビリ中との情報があります」


「……あのパーティが怪我? どういうことだ」



リアム陛下が側にいたザッカリーという人物に尋ねると、

暁の翼の現状をすべて把握しているようで、思わず驚いた。


(情報通すぎない? あの人……宰相さんかな)


そんなことを考えていると、ラミンが淡々とグロリアでの出来事を暴露し始めた。



「何が怪我だ。あいつらは、ただのブルーアップル中毒者だ」


「えっ」

「なんとっ」

「まさかっ! Sランク冒険者ですよ?!」



「オリオンが精霊魔法を使用しなければ死んでいた。

甘い言葉に誘われ、己の力を楽に強めようとした結果、瀕死の状態となったのだ。

……何とも情けない話だ」


「そんなことになっておったのか……まさか、暁の翼が」


「……」



ラミンがあっさりと暴露したせいで、俺は何も言えず黙り込んだ。

本当にラミンはエドたちが嫌いなんだな、と改めて実感する。


(まぁ……ことと次第によっては、俺も許せない存在になってしまうが)


「ザッカリー。すぐに王城に来るよう通達を出せ。

騎士団長エリック、直ちに暁の翼に事情聴取をしてくるのだ。良いな」


「御意」

「承知いたしました」


「オリオンよ。我々がすぐに事情を把握する。それまでこの場で待ってはくれぬか?」


「……分かりました。お手数おかけしますが、よろしくお願いします」



リアム陛下の判断は驚くほど迅速だった。

ザッカリー宰相と騎士団長エリックさんは、陛下の指示を受けるとすぐに部屋を出て行った。


その結果、俺も帰るに帰れず、

リアム陛下の言葉に従ってこの場で待機することになった。


一体、どんな答えが返ってくるのだろう。

そして――俺はその答えを受け止められるのだろうか。


不安が胸を締めつけ、心臓の鼓動が少しずつ速くなっていった――

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