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22話 王のスキルと魔物?との遭遇

「お、これかな?一応摘んで帰るか。」


「わざわざそんなものを持って帰ってやるのか?」


「これさ、別に何の効能もないんだけど、貴族の間で流行ってるらしくて。

一応宝石の花じゃん?それにこういう高難易度のダンジョンとか、そういう場所にしか咲かない花だから人気なんだって。」



無事にシグナスの治癒を終えて駆け足で20階層を出た俺たちは、順調に1階層ずつ魔物を討伐しながら進んでいた。

そして、シグナスが受けていた依頼の品であろうクリスタルフラワーを見つけたので、持って帰ろうと何本か摘んだ。


クリスタルフラワーはその名の通り、花びらのすべてが宝石でできている花。

すごく薄い花びらなのに、鑑定結果では7種類の宝石が含まれていると出ているから、間違いないんだろう。

この花を持っていたからといって特別な効果があるわけではない。

ただ「見栄」と「家の繁栄の象徴」とされていて、貴族の間ではクリスタルフラワーを取ってきてほしいという依頼が後を絶たない。

もちろん、その依頼を受けられる冒険者は限られているため、この王都でもほとんど出回ってはいないらしい。



「くだらんな。ただ単に見栄だろう?」


「そうそう。まぁ、見栄もあるし、魔除けとか邪気を払うって言われてるみたい。

何本か採って帰ろうか。帰ったらハルクさんに渡しておこう。

っていうか、こういう時に空間収納が使えたら便利だよなー。」



ラミンはこういう貴族的な発想が理解できないらしく、「くだらない」と言って俺の頭をポンポン叩いた。

まぁ、確かに俺も見栄のために冒険者を危険な場所へ向かわせる依頼は嫌いだなと思っていた。

そんなことを話している時、ふと「空間収納のスキルやアイテムが欲しいなぁ」と思った。

こんなものを持ったまま上まで上がるのはしんどいからだ。

するとライオネル王が「ちょっと待っておれ」と言い、その手を空間にかざした。



ヴィンッ――



「ええ?ライオネル王、空間収納スキルあったの!?」


「ああ、このスキルは私の父親が持っていたものでな。どうやら受け継いだようなのだ。」


「へぇ!スキルって遺伝することもあるんだね?

じゃあ、この花お願い!」


「任せよ。この空間収納は状態を保てるからな。いつでも同じ状態で保存できるのだ。」


「めっちゃ便利!すごいなぁ!さすがライオネル王だなぁ。」



まさかライオネル王が空間収納スキルを持っているなんて思いもしなかった。

やっぱり昔から特別なスキルって存在していたんだなと驚いた。

しかも父親からの遺伝でスキルを授かるなんて、親子の絆って感じがしてちょっと羨ましい。

まぁ、今の俺には本当の親よりも俺を心配してくれる魂が二つもあるから、まぁいっか。

そう思いながら、少し温かい気持ちになっていた――







40階層――



寝泊まりを数回繰り返し、ようやくこのダンジョンの最上階までたどり着いた。

通常なら制覇に2週間ほどかかる場所だけど、俺たちは1週間もかからなかった。

それもこれも「領域刻印」というスキルのおかげだ。

……って、ラミンに言われるまで全然スキルや能力のことなんて知らなかったけど。



「ふむ。さすがに40階層ともなれば手応えはまぁまぁあるな。」


「そう言いながらライオネル王、めっちゃ楽しそうに倒してるじゃない。

多分、俺より倒してる数が多いよね?」


「まぁ、元々様々な場所で冒険をしておったからな。それなりにやれるのだよ、私も。」


「ラミンもライオネル王もヤバいよね?絶対!」



楽しそうにしている二人を見ながら、俺も負けないようにと頑張ってみたものの、この二人には一生敵わない気がしていた。

化け物だよ、絶対。

そんなことを考えながら、最後の階層にある外へ出るための転移装置へ向かっていた時だった。



「ね……あれさ……魔物?か何かが倒れてない?」


「ふむ。そうだな。他の魔物にやられたか……」



転移装置のすぐ側に何かが倒れているように見えて、駆け寄った。

そこに倒れていたのは白銀の狐の幼体だった。

よく見ると尻尾が2つある。

……双尾の狐ってことか?

俺は初めて見る存在だった。

魔物?いや、動物?どっちなんだろう……



「既に息をしておらぬな……」


「そう……だな……

こんなに小さいのに、可哀想に……」



何かに襲われたのか、既に息絶えていた狐の子。

なぜこんなにも小さな子が犠牲に……

そう思うと胸がギュッと締め付けられ、思わずその体を撫でた。

息を引き取って間もないのか、まだ少し体が温かい……

そう感じていた時だった。



ポワァッ――



「え?」


「オリオン……またやったのか……」


「ほう。それがオリオンの力か。」


「なにが?」


「見てみろ。魂を抜き取ったぞ。ちゃんと責任取れよ。」


「んん?」



体を撫でただけなのに、その体から光の塊が飛び出した。

そして、その塊は小さな狐の形を取り、とても幻想的な光景に見えた。

というか、俺の手はどうにかなっているんじゃないのか?

ライオネル王の時もそうだった。体に触れたら魂が抜け出したんだ。

え?俺っておかしいんじゃないの?

そう不思議に思っていると、白銀の狐の魂は俺の目の前に降りてきた。




【僕は死んでしまったのでしゅか?】


「え?」


【あそこにいる狐さん、僕でしゅか……?】


「あ……ああ、そうだな……あれは君だな……

魔物にやられたようだ……」


【そうでしゅか……死んだでしゅか】



魂はやはり子供のようで、自分が死んだのかと悲しげな声を出した。

動物なのに喋ることができるのか…そう思いながら亡くなっている事実を伝えると、その声のトーンはさらに暗くなった。

自分の遺体を目の前にして喜ぶ者なんていない。そう思うと不憫で、胸が締め付けられた。



【あなたが僕の魂を救い出してくれたのでしゅか?】


「救ったわけじゃないけど……まぁ、抜き取ったのは俺だな。」


【そうでしゅか……】



俺が触れてしまったばかりに、この子は嫌な思いをしているのかもしれない。

そう思うと申し訳ない気持ちが込み上げた。勝手に抜き出されたんだ。そりゃ嫌にもなるよな…。

可能であれば、この子の魂を天に還してやりたい。そう考えていた時、魂は思いがけないことを言った。



【僕を飼ってくだしゃい。】


「え?」


【僕はもう死にまちたが、一人ぼっちは嫌でしゅ。僕を連れてってくだしゃい。】


「おいおい唐突だな……なんか、出会った時のライオネル王みたいなこと言う奴だな?」


【ご主人さま。僕を連れて行ってくだしゃい!】


「んんん……

ど、どうしようライオネル王、ラミン!」



突然の提案に呆気に取られた。まさか「飼ってくれ」と言われるとは思わなかった。

本当にライオネル王みたいに、突然とんでもないことを言い出すなと思いながら、ラミンとライオネル王に助けを求めた。



「うむ。貴様、竜と白狐ハッコの亜人のハーフか。極めて珍しい生き物だな。

ハーフとはいえ竜の血も入っておる。ということは、我々の一族だ。

連れて行っても問題はないだろう。」


「ラミン殿が言うくらいなのだ、相当珍しい個体なのだな。

それではこの亡骸も一緒に連れて行こう。」


【あれれ?二人も魂なのでしゅか?】


「分かるのだな?これは優秀な狐だ。

オリオンよ、今日から我々の家族に加えてやりなさい。」


「なんか、勝手に決まったけど……まぁ、いいや。

じゃあ狐って呼ぶのもあれだから名前を決めようか。」



相談するつもりだったけど、ラミンとライオネル王の判断で結果的に狐を飼うことになってしまった。

いきなり魂をペットとして迎えるなんて、そんなことあるか?何もかも突然すぎる。

そう思いながら名前を考え始めると、意外とすぐに浮かんだ単語があり、もうそれでいいんじゃないかと思って魂に提案した。



「なぁ、コハクって名前はどう?」


「コハクでしゅか?どういう意味でしゅか?」


「んー?コハクって単語が急に浮かんできた。だめ?」


【ダメじゃないでしゅ!今日からコハクでしゅ!】


「コハクか。良き名だな。

ではコハク、これから外の世界に出るからオリオンの体に入りなさい。

それからコハクが入る器を探しに行こうではないか。」


「それが良いな。コハク、早くオリオンの中に入るのだ。」


【分かりまちた!】



俺が浮かんだ単語は、なぜか「コハク」だった。特に深い意味はない。

だけどコハク自身も気に入ってくれたようで、「コハク、コハク」と喜んでいた。

そんなコハクに俺の中へ入るよう指示をし、ライオネル王はコハクの体を空間収納にそっと収めた。

そして転移装置に触れてダンジョンの外へ出ると、コハクは「初めて見る世界でしゅ」と楽しそうな声を上げた。


もしかして、コハクはこのダンジョンで生まれたのか?

でもラミンは「亜人と竜のハーフ」と言っていたよな?

ということは外の世界で生活していたはずだよな……


ちょっとよく分からないけど、ひとまずコハクの器を探すのが先だ。

それからコハクの生い立ちについて調べてみよう。

そう思いながら、俺たちは王都へと向かった――……



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