20話 秘密を分け合う相手
冒険者ギルド――
「オリオン、お前……そんなことになっていたのか……
でも、何で俺に話してくれたんだ?こんな重要なことを。」
「ライオネル王とラミンが、一番信用できる人には自分の素性をちゃんと話しておけって。
ほら、俺、誰も頼れないじゃないですか。
だから、一番信用できるハルクさんに話すのが一番だと思って。
あ、でもローランドさんには少し色々バレちゃってるんですけど、口止めしてあるので大丈夫です。」
「そうか……そうかそうか。
孤児だったお前が、一番立派な血筋を持っていたなんてな。」
今日は冒険者ギルドに出向き、ダンジョンの魔物の暴走化についてと、自分の血筋の事情と、ラミンとライオネル王について本当のことをハルクさんに話した。
というのも、何かあった時に誰も何も知らないという状況は自分にとって不利になるし、手を差し伸べてくれる人がいないのは避けるべきだと言われたからだ。
俺にとって一番信用できるのは、暁の翼になってからずっと変わらずお世話になっていたハルクさんだった。親代わりだとも思っていたしな。
だから、ハルクさんには全部話しても絶対に悪い方向にはいかないと思ったんだ。
「それにしても古代竜に、この国の初代国王の魂をすくい上げたってお前……
やることが大きすぎだろう、オリオン……」
「ははは、本当にたまたまなんですけど……
色々あるけど、冒険者の仲間っていうよりは、俺の家族って感じです。」
「そうか。んじゃ、ライオネル王とラミンもギルド登録しておいた方がいいな。
登録がなきゃ何をやっても恩恵は受けられねぇしな。
……とはいっても魂だからなぁ。普通に個人の登録は難しい。
従魔と従者としての登録が妥当だが……」
「ええ?!いやぁ、二人とも俺の親みたいな人なのに従者と従魔ですか……
いやぁ、さすがに抵抗あるなぁ……」
ハルクさんはいろいろと驚きながらも、俺の話を嘘だとは言わず、きちんと聞いて受け止めてくれた。
やっぱりハルクさんは本当に良い人で、最高に信頼できる人だと思う。
そして、そんなハルクさんにラミンとライオネル王のギルド登録を勧められたけど……
二人を従魔や従者として登録なんて絶対にできないだろう。仮にも古代竜と初代国王なんだから。
なんて思っていたのは、どうやら俺だけらしい。
「オリオンよ。良いではないか。私も久々に冒険者という職業をやりたいと思っていたからな。
それに、元国王として扱われるより、オリオンの家族としての登録の方が私も良い。」
「ライオネル王……
ねぇ、ラミンは?従魔だよ?」
「どのみち我はぬいぐるみだからな。従魔でも何でも良いわ。」
「んんー……
二人がそう言ってくれてますので、じゃあ……お願いします……ハルクさん。」
「決まりだな。ちょっと待ってな!」
ラミンもライオネル王も、ハルクさんの提案をあっさり受け入れてくれた。
俺の方が気まずい気持ちになったけど、もう頷くしかなくて。
ハルクさんにお願いすると、すぐに登録書類を持ってきてくれた。
ライオネル王は本名で登録するのは危険だと思い、前に咄嗟に考えた仮の名「ライオウ」で登録することにした。
そして登録が終わったところで、ハルクさんは俺たちが最初に軽く話していたダンジョンについて切り出した。
「これで登録できたからな。それで、最初に話してたダンジョンのことだけどな。
正式にオリオンに仕事としてやってもらえないか?1ヶ月金貨5枚出すからよ。」
「ええ?50万ガルドも?!出しすぎじゃないですか?」
「何言ってんだよ……
あのダンジョンは高レベル者しか行けねぇんだぞ?
それに下手すりゃ命だって危ないんだ。それを頻繁に潜ってもらうんだからな。
金貨5枚でも安いくらいだぞ?」
「そうなんですか……なんか、申し訳ないです。」
「オリオンよ。そなたは控えめだから申し訳ないと思うだろうが、危険な仕事にはそれ相応の対価が必要なのだ。ありがたくもらっておきなさい。」
「ライオネル王……」
俺たちはたまたま「ダンジョンの魔素が濃くなって危ないね」と話して、時々潜っていただけなのに。
それがまさか正式な仕事になって、毎月50万ガルドももらえるなんて思いもしなかった。
すごく申し訳ないと思ったけど、ライオネル王に言われた俺は、ハルクさんの提案を素直に受けることにした。
「じゃあ、早速今日も行ってきますね。ラミンがうるさいので。」
「ははは、ラミンはすっかり親代わりだな。いいじゃねぇの。しっかり強くなってこい!
ほれ、帰還石だ。」
「ああー……はぁ……行ってきますぅ」
ハルクさんなら「いじめないでやれよー」くらい言ってくれるかなって少し期待した。
だけど、考え方はやっぱりラミンと同じで、「しっかり強くなってこい」と送り出されてしまった。
まぁ、ハルクさんも「鍛錬は日々やるから意味がある!」っていつも言っていたから、しょうがないけどさ。
そう思いながらギルドを出て、ダンジョンへと向かった――
◇
「ねぇー多い多いー!」
「フンッ!トウッ!そうだな、さすがに今日は数が多いな。」
「アイス・レインッ!
何故我もやらねばならぬのだ……」
「皆でやった方が早いだろー?!」
ダンジョンに潜り、魔物を討伐しながら上へと進んでいた俺たち。
魔物の数がやたら多く、ライオネル王だけでなくラミンにも手伝ってもらいながら進んでいた。
今日初めてラミンの魔法を見たけど、しっかり強くて驚いた。
やっぱり古代竜っていうのは伊達じゃないんだなぁ……
なんて思いながら、俺も文句を言われないようにそれなりに頑張っていた。
「ラミン!レベルまた上がった!」
「良いことだ。竜族はレベル上限がないからな。やればやるほど強くなれるぞ。」
「ええ?!何それ困るんだけど……」
魔物を倒している最中にレベルが上がったことを伝えると、ラミンから「竜族はレベル上限がない」と告げられ、ドッと疲れが出た気がした。
竜族って規格外すぎないか?俺はそういうの求めてないんだけど!
そもそも仕事として依頼されなきゃ、頻繁にダンジョンなんか来ないからな。
なんて相変わらず文句が止まらない俺だけど、今まで荷物持ちとしてひそかに援護するしか出来なかったから、こうして皆と一緒に戦っているのが妙に嬉しく感じていた。
「10階まで来たけど、どうする?あと30階くらいあるけど……」
「まだ半日しか過ぎておらん。今日は行けるところまで行き、ここに泊まって最上階を目指す。」
「うへぇ……」
「はっはっは!オリオンにとっては鬼教官だな?ラミン殿は。」
「ですよねライオネル王!絶対に親代わりじゃなくて鬼教官だ!」
「やかましい!貴様のためを思ってこそだぞ。」
「はいはーい。」
今日は10階層で終わろうと思っていたけど、ラミンが「泊まりで最上階を目指す」と言い出した。
こうなると絶対に引かないから、俺は諦めて魔物退治を続けるしかなかった。
ダンジョンの最上階まで行くのか。面倒だなぁ……
でもまぁ、一度は上まで行ってランクの高い魔物を倒しておかなきゃいけないもんな。
別に俺じゃなくてもいいとは思うけど……
二人が楽しそうにしてるから、我慢するかな。
そう思いながら、三人でさらに上を目指して進んでいった――




