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第27話 蒼真の悪夢

 ブラウがソーマたちの旅に同行したいという話をしている頃。


 ホルマの街の一角で、表向きは小さな料理店としている建物の中、

すでに灯りを消して暗闇の中に潜む三人の男達が、こんな会話を繰り広げていた。


「いたな。ちゃんと見たな? 」

「ああ、見た見た。」

「おれもこの目でしっかりと見たよ。」


 三人とも、声に抑えきれない興奮の感情が籠(こも)っていた。


「他のところの者たちからの連絡はなかったな? 」

「おれたちにはなかった。」

「他所で見てれば、そいつらだって後を追うくらいはしているはずだが。」


「この街をお選びに? 」

「それならおれも嬉しいけど、違うんじゃないか? 」

「傍にいたあの少女も街で見たことはなかったぞ? 」


「あの少女も? 」

「一緒に、と? 」

「そもそも聖書に少女の記載はあったか? 」


「聖書のことはいい。どう見る? 」

「わからない。」

「おれもだ。どうすればいい? 」


 三人は互いの顔もおぼろげにしか見えない闇の中で、

沈思に長く時間を要した。


「……本部に報告と、彼らの尾行、ここで待機、だな。」

「じゃあおれは報告に。」

「なら尾行するわ。」


「おい、それじゃおれがここで待機かよ。」

「そりゃそうだろうよ。」

「おまえがいなきゃこの店どうするんだよ。」


「わかったわかった。残るよ。」

「そうしとけ。」

「彼らは今日は泊まるみたいだし、明日の朝からだな。」


「頼むぞ。」

「おう。」

「任せとけ。」


 話が終わり、建物を出て尾行を請け負った男が

報告を請け負った男と二手に別れ、一人街中をぶらぶらと。


「……ついに、ついに邪神様がお出ましになった。

完全に人の姿をとっているのはなぜかわからないけど、

これから、これからなんだ……

この世界をぶっ壊してくれるのは……ヒヒヒヒヒッ!! 」


 夜の下、闇の中、丸い月明りに照らされて浮かぶ口元に、醜く歪んだ下弦の月。



*



 あぁ、これは夢なんだなぁ。


 おれはその場にいるはずなのにそこにいない。

そこをおれを通して見ているような、ふわふわとした不思議な感覚。


 ここは元いた世界かな?


 見慣れた街並み、見慣れた風景、見慣れない人々の流れ。

おれであり、おれじゃないおれは地に足がつかない感覚で通り抜けていく。


 通り過ぎる人々とすれ違っていくも、彼らは無関心に流れ過ぎていく。


 この人達はどこへ行くんだ?



 そんな疑問を抱いて振り返る。



 振り返った視線の先にあるものを見てゾッと背筋が凍った。


 彼らの歩いていく先には、ぽっかりと空いた巨大な黒穴が待ち受けていた。

人々が自分たちから その穴へと落ちては姿を消していっていた。


 慌てて正面へ向き、穴から遠ざかろうとした。

でもおれじゃないおれの体は言う事を聞かず、次第に穴へと吸い込まれていく。


 そのことに恐怖を感じながら、同時にこれは悪夢だと冷めている自分がいた。

穴に吸い込まれて落ちるのを嫌がる一方で、同時にしかたないと諦めている。


 それでも生存本能ってやつは意思とは無関係に体を動かしてくれて、

穴から逃げるために動いてくれているが逃げれない。

 地に足がついていない……と思ったら、おれだけわずかに浮いているみたいだ。


 まぁ、夢だしな……


 これは夢だ、悪夢だと冷静に見ているとおれの視界にあるものが入った。

穴へと自ら歩を進めている人々の流れの中に、見覚えのある人物がいたからだ。


 ホームレスのおっさん!?


 おれが異世界に飛ばされる日に、おれが最期を看取ったあのおっさんがいた。

彼はおれに気づくこともなく下を向いたまま、穴の中へと吸い込まれて消えていった。


 それを見た瞬間から穴の吸い込む力が強くなって、

おれが抗う隙もないまま、穴へと吸い込まれ視界も闇に飲み込まれてしまった。


 これで夢から覚め―― なかった。


 今度は元の世界とも異世界とも違うみたいだ。


 まるでゲームに出てくるラストダンジョンみたいだな。

ってのが正直な感想だった。


 夢を見ているって自覚しているのが大きいからなんだけども。


 西洋の城の内装と生物の骨と内臓と、

床に流れる溶岩と闇とを混ぜたような空間で、

 おれの周囲を異形の怪物たちが囲い、おれへと視線を向けているのがわかる。


 怪物たちは怪物ゆえ、どんな感情の表情をしているのかはわからない。


 ここは……地獄なのか?


 そう思った矢先、おれの正面にいた怪物たちが すぅーっと左右に退いた。


 怪物たちの姿に隠れていた人物が、視線をおれに捉えたまま一切逸らさず、

周囲の怪物たちをいないもののように悠々とこちらへと歩いてきている。


 アルテナ……

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