第58話 ウェディングドレス
お読み頂きましてありがとうございます。
本日3話目です。
それを見て、今まで騙されていたのが僕だということがわかった。マクシミリアン国王とアマーリエ王女の結婚式だけ行われ、マムはやはり側室という身分で後宮入りをするとマクシミリアン国王から告げられており、疑いもしなかったのだが・・・。
しかも、昨日結婚式を挙げたばかりの僕たちは、マクシミリアン様の結婚式の出席を免除されていたのだが・・・それも、このことの辻褄あわせだったのだろう。
僕は、アマーリエ様にお祝いを言う儀式のためにマムの姿で後宮にむかったのだが・・・目の前には、ウエディングドレスを着たアマーリエ王女とは、別にウェディングドレスが飾られていたのだ。
つまり、マムもウェディングドレスを着てマクシミリアン国王と結婚しろというわけらしい。
何を考えているんだ?マクシミリアン様は。
仕方が無い。罰の一種なのだろう。僕は、何でもすると答えてしまっている。嫌などと言うつもりはない。
母さんもリラ様もこのことは知っていたようで支度をしながら、うるうるしている。昨日の本当の結婚式は笑顔だったくせに・・・。
「リラさんまで・・・。」
「だって、本当にお姉様にそっくりなんですもの。このまま奪ってしまおうかしら。」
そうリラ様は皇后様の年の離れた妹だったのだ。早くに亡くなった皇后様の代わりに2人の息子達の行く末を見守っていたのだという。でもその姉コンは病的らしい。
昨日の様子だとロビンも知っていたようだ。
道理でこんな時期に結婚したい理由を言わなかったわけだ。何が何でも僕の初婚の相手が自分であることに固執したのだろう。
これも死ぬよりも辛い罰の一種なのだ。
だが結婚式を昨日終えたばかりの僕には、花嫁と花婿がキスをするシーンがあることを知っている。いや、昨日の結婚式にはマクシミリアン国王も出席されていたのだから知っているはずだ。
まさか、いまだにマクシミリアン国王はマムとキスをしたいなどと思っているのだろうか。まさか、まさかと思うけど、新婚初夜まで・・・そんなことは無い。無いはずだ。誰か無いって言って・・・・。
・・・・・・・
王宮での結婚式は絢爛豪華だ。僕とロビンの結婚式の数倍だろう。
全ての貴族たちが一堂に会しており、さらにルム国からも多くの方々が出席されている。
しかも、出席しないはずのロビンがロブの姿でいる。しかも大人しく見守っている。奪いに来る気は無いらしい。くそっ、裏切り者め。
結婚式は厳かな雰囲気で進行され、例のキスシーンも披露された。
本当に嬉しそうな顔でキスをしようとするマクシミリアン国王を見ていると嫌な顔もできない。懸命に嬉しそうな演技をする。
自分でも何処までがマムとしての演技なのか、本心では嫌がっていないのかわからなくなってしまったほどだ。
だが嫌なものは、嫌だ。
そこで僕の顔の周囲にうっすらと風の壁を作らせてもらった。
1分・・2分・・攻防が続いたがなんとか諦めたようだ。
マクシミリアン様は憮然とした顔を一瞬したが次の瞬間には、笑って客たちのほうを向く。目だけは笑っていなかったが・・・。
その後、王宮前からオープンタイプの馬車に乗り込み、王都を一周する。
マクシミリアン国王もアマーリエ王妃も笑顔で沿道で手を振り、声援を送ってくれる国民に向かって笑顔で手を振っていた。
もちろん、僕もそうだ。
その時、ひと際僕に対する声援の声が大きくなった。
沿道を見るとあの戦で一緒に戦った国軍の兵士たちだった。
ドーン。ドーン。と祝砲を挙げている。
見知っている顔も多い。僕は一生懸命に手を振った。
「マム。歌ってあげなさい。」
マクシミリアン国王がそう言って、馬車の隊列を止めた。
僕は目の前の兵士たちのみならず、王都全てに響けと歌を風に載せる。
『おお 見てみろ 夜明けの光を』
『夕暮れ 陽が落ちる時 我等が思う』
『それは輝く星の旗を我々は目にした』
『櫓に見た 勇壮に翻りし あの旗』
『赤き炎立ちのぼる 砲音空に轟く中』
『耐えろよ 旗は尚そこにあり』
『おお 星輝く旗は 今ここに棚引く』
『楡の大木 勇者の故郷』
1番は皆静かに聞いていたが、2番からは目の前の兵士たちも肩を組み歌い出し。3番は周囲にいる国民皆で大合唱となった。
眉唾だとは思うが後から聞いた話だと、この歌声が本当に王都の端まで届いていたという。
これにて完結となります。
ここまでお読み頂き本当にありがとうございました。
皆様に支えられようやく完結できたことを感謝しています。
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