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朗読家になれない朗読人  作者: 白餅りんね


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04 やさしいまおう

それは、人間と仲良くなることを願った魔王の物語。


種族の垣根を越え、人間と共に生きることを望んだ魔王は、

人間がどれほど魔族に酷い振る舞いをしても、常に友好的であり続けた。

そうすることだけが、自分たちが無害であると証明する術だったからである。


だが人間は、魔王が友好的であればあるほど、

その存在に不気味さを覚えるようになっていった。

人間一人ひとりの力が、魔族に比べてあまりにも非力だったからである。


魔王と人間の歪んだ関係は、長い年月にわたって続いた。

そんなある日、些細なことから人間同士の争いが起こる。


そんな人間たちの姿を見ていた魔王は疑問を抱いた。

なぜ、同じ種族で傷つけ合うのか。

なぜ、戦うことすらできない弱き者たちまで巻き込むのか。


魔王は考えた。

憧れる人間たちが、これ以上傷つかないために、自分にできることはないのかと。


そしてある日、魔王は魔族を引き連れ、人間たちに宣言した。


「人間は醜い。

小さなことで、力なき者までも巻き込む争いを生み出す。

私はそれが許せない。だからこそ、私がお前たちを支配する」


魔王の敵対によって、人間は戦争をやめた。

そして、手を取り合った人間と魔族の、大きな戦いが始まった。


その結末は、言うまでもない。


――魔王は、人間同士の醜い争いを止めるため、自らの犠牲を選んだのだ。

魔王の犠牲によって、多くの人間が救われた。

そして魔族との戦いで、人間の犠牲は一切出なかった。


魔王は、戦いを決意したとき、魔族たちにこう願った。


「私は人間が好きなんだ。

これ以上、小さなことで互いを傷つけ合ってほしくない。

だから私は、彼らと敵対することで争いを終わらせようと思っている。

皆の力を貸してほしい。

そして彼らを傷つけずに、彼らと争ってほしい」


その願いを聞いた魔族たちは、人間を傷つけることなく、

本気で戦い、そして負けていった。

それは、心優しい魔王の最後の願いを叶えたいという、魔族たちの意志だった。


討伐された魔王は、最後に人間へこう語った。


「人間は、素晴らしい生き物です。

個々の力では魔族のほうが優れているはずなのに、

互いに助け合う事で、その力を無限に伸ばしていく。

私はその儚くも気高い人間の強さに惹かれたのです。

ずっと思っていた。魔族ではなく人間として生まれたかった。


同胞たちよ。

私の最後の願いを叶えてくれて、感謝する。

理想郷で、また会おう」


そう言い残し、魔王はその生涯を終えた。


人間はその後、争いのない世界を作ることを誓った。

そして魔王を人間の仲間として迎え入れた。

人間と同じように墓を建て、

その墓石には「英雄、ここに眠る」と刻まれ、

その英雄の物語は――「やさしいまおう」として、語り継がれていった。



小さな人間は、物語の朗読を終えた。


「カ、カッコイイ!!!」


魔物は瞳を輝かせて叫んだ。

自分も、そんな存在になりたい――そう憧れたのだった。


その気持ちを汲み取った小さな人間は、優しく言った。


「君なら、この物語に出てくる“やさしいまおう”みたいになれると思う。

ううん、ぜったい、なれるよ」


その言葉に、魔物は歓喜した。


「モシ、ボクガ、マオウニ、ナレタラ、

ソノトキモ、オハナシ、キカセテネ」


小さな人間は、笑顔で「もちろん」と答えた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


僕は朗読を終えた。

若い男性は続きを気にしていたが、僕は語らなかった。


なぜなら、不思議なことに、その先の記憶を、

どうしても思い出せなかったからだ。

忘れてはいけない大切な記憶のはずなのに――。


あの魔物は、今どうしているのだろう。

そんなことを考えながら、僕は城下町を後にした。


後で聞いた話だが、

その城下町は、僕が去った数日後、

魔王軍の襲撃によって壊滅したのだった。

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