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3話 チュートリアル武器

 暗闇の中から、突然真っ白な空間へと踊り出される。

 目の前には60のカウント。

 察するにこれが0になれば始まるのだろう。


 それまで待って色と言うことか。

 まるでこのタイムラグの間が気になるけど、それは考えすぎ遠いものかな?


 ただ、考え込めば一分と言う時間は短く、すぐにキャラクター編集画面が現れる。


 髪色は茶。

 瞳の色はオレンジ。

 身長はいじらないでおこう。

 体重は身軽な方がいいので少しだけ減らして。


「おっと、バランスを取るのが難しいな」


 思いの外、現実の肉体に引っ張られていることに気づく。まさかここまでヴァーチャルがリアルに侵食してくるとはね。

 私は少しこのゲームを舐めすぎていたかもしれない。


 少し盛りすぎな調整を控えめに、いつものアキカゼ・ハヤテになり変わる。


「よし。長井くんには悪いが、これも先行体験者特典だからね」


 優先権は何よりも勝るのだ。

 全ての項目を決定し、チュートリアル空間への移行を確認した。

 ちなみに、ネーム決定の儀はまだ行われていない。


 今はまだ姿形のアキカゼ・ハヤテを模倣したにすぎない。


「当然、名前も先に使わせてもらうけどね!」



 『チュートリアル空間に進みますか?(チュートリアル空間に移動後、定員に達するか一定時間後にチュートリアルが始まります)』


 まだ武器すら選ばせてくれないのか。

 いや、チュートリアル武器というのがあるとは知っていた。

 そこで初めて用意されるのだろう。

 ならばそれまで待機しておこうか。


 しばらくすると、空間がひらけた。

 そこには、同じような装いのプレイヤーがいた。

 アナウンスにあった通り一人づつではなく、一斉に行うのがこのゲームの仕様ということなのだろう。



【お待たせいたしました】


【これより第一回チュートリアルを開始いたします】



 周囲の人の多さに右往左往していると、またもや頭上からアナウンスが走る。

 皆が一斉に上に向けて顔を上げてるのが面白いね。


 中には強者感を出してるプレイヤもいる。

 これは油断出来なさそうだ。

 そうこうしてるうちに、上空からの尊大な言葉が殊更に強くなる。



【これからあなたたちプレイヤーは私たちの世界で思う存分、自由気ままに行動していただきます】


【その行動の制限はありませんが私たちの世界に招き入れる前にこの規約に目を通していただき、問題がなければ承諾ボタンを押してください】


【承諾出来ない方は強制ログアウトとなります】


【全員がどちらかを選び終えたらその時点で次のチュートリアルへと進みます】


【制限時間は5分です】



 流石、プレイヤーに人権のないゲームといったところか。噂に違わぬせかし具合である。

 ほとんどの人が規約をよく読み込まずに承諾してる中、私と同様に規約を読み込んでる人たちはこぞって顔色を悪くしてる。


 中でも『このゲーム内にいる限り人権の保証はされません』という項目が如実に輝く。

 知ってた。


 だからこそ、こんなゲームを孫に勧めていいものだろうか?


 だが、ゲームシステム的には遊べるらしいので、私はこの項目を見なかったことにした。


 大丈夫だ、何せ彼女は好んでハーフマリナーに転職したし、ショゴスを可愛いと呼べるのだから。

 ちょっとくらいの理不尽を与えられたくらいでへこたれる子ではない。


 なので、乗り越えられると信じて前を向く。



【さて、今ここに残っているプレイヤーは先に進むことを決めた者たちだけとなりました】


【ですので、これからプレイヤーたちの思考を分析し、これまでの経験に基づいた最適な武器を与えましょう】



 プレイヤーの前に玉虫色に泡立つ三つの影が現れる。

 それが形を為し、見慣れたものが形成されていく。


 それはファンタジー作品に見られるものだったり、日常的に見られる用具だったりする。


 私の前に現れたのは……パターゴルフ、一眼レフカメラ、炬燵(コタツ)だった。


 どれも武器とは程遠い。

 かろうじてパターゴルフが武器になりそうだが、周囲の大剣やら両手槍、芝刈り機などに比べて殺傷力で格段に落ちる。


 ワンチャン炬燵を盾にすることも可能だが、取り回しが悪そうなのでパス。

 やはりこの手に馴染むフォルムのこいつだろう。


 私が手にしたのは一眼レフカメラ。

 世界が違えど、ブログ機能くらいはあるだろう。

 そこに私のスクリーンショットでも添えれば、違う世界の話を信じてもらえる。


 だって私は、他の人のログイン権を獲得しにきてるのだからね。


 この時の私はまだ知らなかった。

 このゲームにスクリーンショットの影も形も存在してないことを、知る由もなかったのだ。

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