4話 ワールドの洗礼
【それではこれからプレイヤー同士の接触を解禁します】
【これまで姿だけ見えていた他のプレイヤーたちに声をかけることも、触ることも可能になります】
【また、プレイヤーネームについてはこの期間中に設定しておいてください】
【設定せずこのチュートリアル空間から出てしまいますと強制的にプレイヤーネームが【ナナシ】に設定されます】
【ちなみに、プレイヤーネームは今後特殊な事情がない限りは一切変更不可能です】
【プレイヤーネームが決まりましたらウインドウ画面を操作することで自由にチュートリアル空間を抜けてフィールドに繰り出すことか可能になります】
【このチュートリアル空間から抜け出しフィールドで出た後はこのチュートリアル空間に戻ることが出来ませんので、まず安全に交流したい場合にはここでゆっくり腰を落ち着かせるのも手でしょう】
【弱き者は群れることで絶対的力に抗うことになりますからね】
チュートリアルから随分と脅してくるが、気のせいかな?
ともあれ、これで名前も見た目もアキカゼ・ハヤテだ。
長井君には悪いけどね、これも先行プレイの特典だ。
「さて」
あたりをぐるりと見渡す。
見た目が同様のプレイヤー達に声をかけていこうか。
初心者ならではのコミュニケーションというのを大切にしていかねばね!
「すいません、少しお時間いいですか?」
「はい?」
同じタンクトップを身に纏った少女。
ツーサイドアップで、随分とボディラインの起伏が激しい。
顔立ちは孫と同じくらいだろうか?
それにしては随分と育ちがいいが、孫の名誉のためにも肉体の成長は個人差があると思っておくのがいいだろうな。
「私これこれこういうもので」
渡す名刺もないので、このゲームで遊ぶ目的。
風景写真を撮るのが趣味であること、初心者同士でコミュニティを持たないかという提案をしてみた。
名刺とか渡せればよかったが、あいにく持ち合わせはなかったからね。
「はぁ、これはこれはご丁寧にどーも。いや〜、私に目をかけるなんてなかなか見どころがありますね。でもダメですよ? 私には好きなヒトがいるんですから。ナンパはお断りなんです! ぷんぷん」
「ああ、いや。ナンパだなんてそんなそんな。私はこんな見た目でも、中身は腰の曲がったおじいちゃんです。今日はですね、高校生の孫がこのゲームで遊びたいと申し込んできて、実際に遊んで大丈夫かのチェックをしにきたわけなんですよ、はい。確かにお嬢さんは魅力的だ。しかし私は妻を裏切れない。なので、ここは一つ。お互いに利用し合うというのではどうでしょうか?」
「利用し合う、ですか?」
「そう。これから出てくるであろうナンパ避けに、私を使ったらいい。その代わり、私は自分以外の発想力が欲しい。自分一人だけの考えではプレゼンする上で中途半端になりがちだ。どうだろう? 君はただ感想を述べるだけ。私はそれを参考に孫にプレゼンする。みたところ君は孫と近い感性を持ってそうだ。なのでお願いするなら君がいいと思っていた」
「いや〜、この人グイグイきますよ〜? まだ了承してないのに、まるで了承してもらったかのように話を進めてきます。そんな強引なところが憧れの人にそっくりでゾクゾクしてきちゃいますね!」
彼女はなかなか妄想が得意なようだ。
「あの、無理なら無理で断ってくれていいんですよ?」
「ああ、いやいいですよ。どうせ今ライブもなくて暇ですし。そうそう、私の名前は【ボマード】って言います。こう見えて第一陣プレイヤーなんで……」
【【ボマード】の【名称公開】】
【【ボマード】に知名度に応じたステータス低下効果付与】
彼女は自己紹介を終える間際、脱力してその場で倒れ伏した。
「ああ、そうでした。この【包丁次元】では自己紹介はNG行為。知名度に応じてステータスが大幅にダウンしてしまうんです。おじいさんはくれぐれもそのようなことはないよう……ガクッ」
「ボマードさぁあああん!」
それだけ伝えて、彼女は粒子になって消え去った。
まいったな、ここは想像以上に過酷な場所のようだ。
まさか名乗りすら封じてくるとは。
しかし困ったぞ? 早速協力者が一名脱落してしまった。
今の現場を見られてしまったのか、新規のみんなは私から距離を取るようになってしまった。
このピンチを乗り切るために、私にできることは……あれしかないか!




