33:夏休み前日
夏休み前の試験は無事に終わった。
もちろん1位はカイ、2位がリオンだった。
いつものように掲示板の前で多少渋い顔をしてしまったが、今年の夏休みはこれまでと違うのだ。
初日から帰ると人が多くて嫌だとカイは休みの2日目から帰ると言うのでそれについて行くことになっていた。
「じゃあサラ、明日からしばらく会えなくなるけど元気にしててね」
そう部屋の中の洋服や身の回りのものをまとめているサラに向かってリオンは言った。
「リオン、結局どこにも行かないんだよね?」
お出かけ用のワンピースを丁寧に畳みながらサラが言う。
サラが気に入っている水色の、柔らかな素材のワンピースだ。
「あ、明日、カイの家に遊びに行くんだ。言ってなかったっけ?それ以外はここにいるよ」
そう言うとサラの手から畳んでいたワンピースがハラリと落ちた。
「カイの…家?」
そう目を丸くしてサラは聞く。
「うん。なんか誰かの家でもいいから行ってみたいって言ったら、私が読みたいような本もあるし良かったらって誘ってくれたの。サラの家にも行ってみたいけど、サラ、おうちにいないもんね」
「……カイ、なかなかやるな…」
「え?」
「いや、こっちの話。私の家は卒業してからでもいつでもきたら良いよ。それか来年、親に頼んで出掛ける期間短してもらうから、来てね」
「え、嬉しい。それめちゃくちゃ嬉しい。サラの家、楽しそうだし、何ならサラの家の子になりたい」
サラが随分穏やかに言ってくれたのでうれしくて思わず目を潤ませる。
「相変わらず、大袈裟ね、リオン。……カイの家、楽しんできなさいよ」
コクンとリオンは頷いた。
翌朝早い時間にサラは出かけて行った。
夏休み初日のその日は、生徒達が一斉に出かけていく。実家に帰る者、バカンスに出かける者、仕事に駆り出される物、それぞれがそれぞれの表情をしていた。




