32:早起きと夏の約束
休みの日、午前から図書室に行こうとしていたが部屋の片付けやら何やらしていたらお昼前になってしまった。
仕方がないので食堂で早めの昼食を食べてからにしようと決め食堂へと足を運んだ。
「あれ?カイ、今日早いねごはん」
休みの日もカイは朝から図書室に入り浸ってる。だからお昼は普通の時間か、少し遅い時間に行くことが多い。
「朝早く起きすぎて、朝食早くて昼も早くなった」
その答えにふふっと笑いながら、リオンは今日の日替わりランチ、鷄のトマト煮込みが乗ったトレーをテーブルに置き、カイの向かいに座った。
もぐもぐとランチを食べながら、カイとなんてことのない話をしていた。
「カイは今年も家に帰るの?」
「あぁ、10日間くらい。そのうち後半半分くらいは仕事手伝えって言われてるから休みなのかどうか微妙だけど。リオンはここに残る?よな」
「うん、そのつもり。けど良いなぁーなんかみんな非日常を味わう感じで。
いや、図書室大好きだけど、なんかみんなのそのいつもとちがう、ちょっと浮き足立ってる感じが羨ましい。誰かの家でも良いから、遊びに行ったりしてみたいなぁ」
そう何の気無しに言ったらカイがフォークを口にくわえたままパチパチと瞬きをした。
何だろうと思って首を傾げるとカイが口を開いた。
「家、来る?仕事は後半だから、初日とかなら。母親いるから、きっと人が来るって言ったらあのクッキー焼くし、リオンに見せたい本も沢山あるし」
「え!ほんとに!?それ、すっっごく魅力的なんだけど!」
思いがけない誘いに思わず身を乗り出してしまうと、カイは落ち着けと言わんばかりに両掌をリオンに向けた。
「ちょっと母親に聞いてみるけど、多分、というか絶対、盛大な歓迎すると思う」
リオンの心は踊っていた。
非日常、カイの母親が焼くクッキー、そしてカイの家の本を読めると思ったらもう早く夏休みよ来いとでも言いたくなった。
その後はいつもどおりカイと2人図書室で勉強をしていた。
しばらくして次は魔法史でもやろうかと思っているとカイに小さな声で話しかけられた。
「ちょっと寝るから10分くらいしたら起こして」
「え?」
朝早く起きすぎたと昼に言っていたのできっと眠くなったのだろう。
カイはそのまま机に突っ伏して寝始めた。
図書室で彼が眠る姿は初めて見るが、仕方がないなと思い放っておくことにした。
しばらく本に集中してふと時計を見ると10分どころじゃなく時間が経っていた。
(あ、起こしてって言われてたんだった)
パッと左に座るカイを見ると気付けば顔をこちらに向けて眠っていた。
(子供みたいな顔してる)
なんとなくその顔を眺めていたく、言われた10分はとうに過ぎていたがリオンは口元に笑みを浮かべたまましばらくカイを眺めることにした。
流石にそろそろ起こそうかと思った時、ちょうどうっすらとカイが目を開いたのに気がついた。
「起きた?」
ぼんやりしながら頭を上げたカイはコクンと頷き時計を確認していた。
「起こしてって頼んだ」
ちょっとムスっとした顔でカイが言うので小さな声でリオンはごめんと言った。
「寝顔、可愛かったよ?」
笑ったままそう言うとカイは余計にムスッとした顔になった。
カイのそんな顔、初めて見る気がして、それが面白くってリオンは声を出さずに余計に笑った。




