28:レールと想い
その日、リオンは話があると言われ、父親の前にいた。
普通の家族であれば感じることなどないだろう、重い、重い、なにかが体に乗っているような気分だ。
「学校はどうだ?」
「おかげさまで、十二分に学ばせていただいております」
口ではそんなことを聞いてくるこの父親に、本当はリオンの学校など興味がないことは分かっている。
「まだ3年…4年制の学校ですので、それまでは、と思っています」
そう、聞いてもらえるのかほとんど希望の持てない願いを伝えておく。
言わないよりは、ましだろうと吐き捨てるような気持ちではあったが。
「聞いているかもしれないが、西か、南か、どちらかになる予定だ。私としては西にと。準備はしておけ」
リオンは顔にやんわりとした笑顔を作り上げ、「承知いたしました」とだけ言った。
それを聞いて父親、いや国王はその部屋を出て行った。
国王を見送るために丁寧な礼をし、リオンも自室に戻ろうと踵を返した時、ひどく自分の手の中が痛いことに気づいた。
気づけばぐっと握ってしまっていた拳の中の爪が自分を傷つけていたのだ。
サラの言っていたことはどうやら本当だったようだ。
南のあの王子のところへ行かされなくて済みそうなのは少しだけほっとしたものの、西の王子は会ったことも見たこともない。
王族の結婚などそのようなものは当たり前なのかもしれないが、やはりいざ面と向かってそれが言葉にされるとリオンにも思うものはあった。
(けど、まぁ、もはやどちらでも良いか)
そう投げやりな気持ちになりながら自室に戻り、学校に戻るための準備をした。
その日は学校が終わってから急いで城に来たためローブも持ってきていた。
夜空の闇をさらに濃くしたような青色のそのローブも、手で持つのも面倒なので城の中で羽織って馬車に向かっている時だった。
「あら、誰かと思えばリオンさんじゃない?」
声を聞いただけでうんざりする相手だ。
「お久しぶりです、ニメア様」
そう丁寧な礼をしながら挨拶をした相手は、この国の第一王妃であり、随分とリオンのことを疎ましく思っている人間だった。
「そんな格好だったので、警備の人間を呼ぶところだったわ」
見たくもないものを見てしまったかと言わんばかりの目をリオンに向けてくるニメアのドレスは、これでもかというほど豪華なものだった。
首元に付けているルビーも随分と大きく、その地位と権力を表さんばかりのものだ。
「学校の制服なので、失礼いたしました」
そう作り笑いを顔に携えリオンが言うとニメアは見下ろすようにリオンを見た。
「魔術だなんて、物騒なもの学んでらっしゃるようで、何の役にも立たないでしょう?」
「……そうかもしれませんね」
なんとか笑みを浮かべ答える。
「まぁせいぜい国王が聞いてくださった我が儘を満喫するといいわ」
そうニヤッと笑ってニメアはどこかへいってしまった。




