17:救いと約束②
呼び止められる前にリオンがいることには気づいていた。
けれど4年の学年長と話をしていたので声をかけるのはなんとなくやめておこうと気づかぬふりをしていたのだ。
何を話しているんだろうか、とふと思った。誰が誰と何を話そうが自分には関係のないことだ。そうカイは思っていた。
けれどもその時だけは思ってしまったのだ。
彼女のことだ。きっと勉強でも教えてもらってるのだろう。
それにリオンとはそもそも生きる世界が違うと思っていたのだ。だから自分には関係のないことだと思いそのまま通り過ぎようとした瞬間に、リオンに呼び止められた。
一緒にいた4年生の学年長の表情はきっとリオンには見えていなかっただろう。
随分と険しい、睨みつけるような明らかに嫌な顔をカイに向けてきた。
何故そんな顔を向けられるのかは全く心当たりがないので自分は何もしてないと言いたくもなったが、リオンの言葉と少し困った表情に何か都合が悪いことでもあったんだろうと理解し、カイは頷きだけ返したのだ。
「既成事実作るために今度の休み、よろしくね」
そうリオンに言われ、やはりリオンはカイに「次のこと」を約束してくる人間なのだなと感じる。当たり前に、遠慮もなくこちらの都合など聞かずに言われるのは案外気楽で悪いものではないと思う。
「あ、魔法植物よりも魔法陣の方が良いかな?あーでも、調薬も捨て難いし、魔法史もやりたいなぁ」
図書室へ向かう途中でリオンは相変わらず喋っている。最初こそその話のテンポについていけなかったが慣れれば割と楽しいもんだ。
その言葉たちは思っていること以外きっと言えないのだろうと感じるような素直なものだからだ。
(生きる世界が違うと思ってたけど、魔術や魔法に関しては気が合うからな)
そう次から次へと横で喋るリオンを見て、カイはまた小さく笑った。