15:女友達
「サラ、お帰り!」
部屋に戻り帰省から戻ってきたサラがいるのを見た瞬間、リオンは彼女に抱きついた。
「ただいま、ってたった3週間なのにリオンのこの感じ、懐かしく感じるわ」
そうトントンとリオンの背中を優しく叩く。
「元気してた?私、寂しかったよ?」
「うん、いたって元気だったわ。リオンは?……って聞くまでもなく元気そうね」
そう相変わらず呆れた笑顔をサラはリオンに向けた。
やっとサラから離れたリオンの顔はとろけるように笑っていた。いや、とろけていた。
サラが帰ってきてくれて嬉しいことこの上ないのだ。
「そうだ、リオンにこれ、お土産」
そう渡されたのは1本のペンだった。
蓋の部分に繊細な花の彫刻が施された素人目でも良いものだろうと思えるものだ。
「え、サラ、これ私にくれるの?」
「お土産って言ってるじゃない。そう、リオンに」
「ぅわ〜〜嬉しい…うれしくて…泣けてきた……」
「お土産一つで泣かれるこっちの身にもなってよね」
苦笑いをサラが浮かべる。
「これで勉強したら1番取れる気がする!」
はいはいとサラは返事をしてまだ片付けきれていない荷物を片付けていった。
(……お土産……嬉しい)
城にいる頃、他国の人間がその国の土産を持ってくることは当たり前のようにある。
けれどもどれも礼儀としての物であり、決してリオンのためのものではなかった。
だから自分のためにとお土産なんて貰ったら泣けるほど嬉しいのだ。
リオンはそのペンを大事にいつもの勉強セットの横に置いた。
(明日から、これ使おうっと)
その日は授業が始まる前日だった。
きっと多くの生徒は授業なんて始まるなとでも思っているだろう。
けれどリオンの心は真逆だった。
(早く始まれ)
そう願っていた。
「リオンは結局ずっとここにいたの?」
「うん!図書室通ってた」
「去年も同じこと言ってた」
サラが少し首を横に倒しながら笑って言う。
「うん、けど今年は先週からカイもいたから去年よりは賑やかだったよ」
「カイが賑やかってことはないだろうから、リオンが楽しかったってことね」
その言葉にそうか、と思う。
確かにカイに賑やかと言う言葉はしっくりこない。
「うん!」
そう言うとサラは包み込むような顔をリオンに向けた。
その表情を見てリオンはサラに飛びついた。
「どうしてここで抱きつくの?」
呆れた笑顔でサラが言う。
「サラのその顔見ると甘えたくなる」
はいはいと相変わらずサラはリオンをあやすように背中を軽く叩いた。
「片付け終わらないし、また今日から一緒にここで過ごすんだからちょっと離れてくれると嬉しいけど?」
そう言われたら離れなければならない。
サラが嬉しいことならリオンはやらねばならない。
仕方がなくその後は彼女から離れ、その片付けを眺めていた。
そうしてその後はサラとなんてことのない話をし、翌日からの授業に備えて早めに眠りについた。