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ありやしき

この作品はフィクションです。

「人が住む場所と言えば?」

「急だな。」

「私が急なのなんて日常三時半なんだよ。」

「茶飯事な。」

「で。人が住む場所と言えば?」

「んー、アパートとかマンションとか一軒家とか?」

「そう。それらを総称して、家、と呼ぶ。」

「呼ぶけど。」

「一方で、だ。人間以外の生物が暮らす場所のことは、基本的に、家、とは呼ばない。」

「巣、だな。」

「それについてどう思うんだよ?」

「別にどうとも。」

「はぁ〜〜〜〜〜。」

「なんだよ。」

「そんな情も何もない解答をしてるうちはキミはそれがあれなんだよ。」

「何がどれなんだよ。」

「差別的だとは思わぬのかね?」

「そう言われても。」

「そもそもキミは、家、と、巣、を、どこで区別しているのかね。」

「具体的な定義は別にないけど。人間が住んでたら家で、動物が住んでたら巣。」

「はぁ〜〜〜〜〜。」

「なんだよ。」

「そんな動物差別な解答をしているうちはキミは餅がガチなんだよ。」

「どういうことだ。」

「巣、という言い方を改めたまえよ。」

「どんな風に。」

「屋敷。」

「急に豪邸。」

「例え見た目が人間の住む場所より劣っていたとしても、彼らにとっては大事な我が家。それを認めることが第一歩。」

「別に最初から認めてるよ。っていうか、巣、っていう表現を差別的だと思っている時点で、お前こそ差別してるんじゃないのか?」

「とりあえず無視します。」

「するなよ。」

「というわけで今日から蟻の巣は蟻屋敷になりました。」

「まぁ、好きに呼べばいいけど。」

「まず正面玄関をくぐると、」

「一時停止。」

「なんぞ。」

「呼び方を変えただけなんだよな?」

「うん。」

「形自体は、あの形なんだよな?地面の中にある。」

「うん。」

「正面玄関?」

「うん。」

「あるの?」

「入り口があるなら、そこがすべからく正面玄関なんだよ。」

「強引だな。」

「ともかく、正面玄関をくぐると、右手に日本庭園が」

「呼び方を変えただけなんだよな?」

「うん。」

「なんで蟻の巣に日本庭園があるんだよ。」

「蟻屋敷、な?」

「厳しいな。」

「キミだって、自分の家の事をミッシングオブホイコーローとか言われたら嫌でしょ?」

「そんな風に言う奴がいるなら紹介してくれ。」

「はじめまして。」

「お前かよ。」

「私は基本、住居のことはミッシングオブサムゲタンと読んでいる。」

「変だし変わってるし。」

「話が折れた。」

「逸れた、な。」

「ミッシングオブ蟻屋敷に話を戻すと」

「気に入ったのか。」

「正面玄関をくぐって左手には金型工場が」

「呼び方変えただけなんだよな?」

「しつこいんだよ。さっきからそう言ってるんだよ。」

「蟻がなんの金型を生産するんだよ。」

「有田焼。」

「焼き物工房じゃん。」

「蟻だけに?」

「それは求めていない。」

「金型工場と言っておきながら、その実態は焼き物工房。これまさに、」

「………、」

「なんだろ?」

「知らん。」

「まぁ、ともかくさ。呼称差別はなるべく無くしたいってことなんだよ、要するにさ。」

「…ふと思ったんだが。」

「なんなんだよ?」

「お前、巣、のことを何て言ってるんだっけ?」

「屋敷。」

「家、のことは?」

「ミッシングオブフラペチーノ。」

「家はミッシングすれば何でもいいんだな。」

「家は基本的にミッシングと背中合わせだから。」

「巣にはミッシングつけないのか?」

「そんな無礼なことは出来ないんだよ。」

「無礼かどうかは知らんが、さっきミッシングオブ蟻屋敷とか言ってなかったか?」

「さっきはさっき。山田は斎藤。」

「違うと思うぞ。」

「記憶がミッシングしたので証明ができません。」

「便利だなそれ。」

蟻の巣のある場所にも行かなくなったなぁ…

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