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いや違うんです。本当にただの農民なんです  作者: あおのん
第6章 はじめての冒険者らいふ!
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第86話 謝罪

「確実に中心に何かいるよなぁ」


王都に一番近い丸い円。

その大きさは小国三つ程度であれば

余裕で飲み込めるほどの大きさにまで成長していた。


これほど広範囲に

影響を与えられる存在とは

一体どんな存在だろう?


そもそもどうやって

日照りを起こしているのか、

故意にやってるのか、悪意はあるのか。

王都に向かうその理由は何か。


さまざまな疑念や不安が

雲のようにポツポツと浮かぶ。


そして、その黒いもやのような思考は、

消えずにそのまま停滞し続けた。


(うーん)


オリビアは地図を見ながら唸る。



(日照りを起こせる魔物とかっているのかな?)


「聞いたこともないわね…」


(そっかー……)



……いくら考えたところで答えは見つからない。

そんな中、アリアがポツリと言った。


「わからないことだらけだけど……

確実に言えることがひとつあるわね」


「?」


集まる一同の視線。そしてアリアは言う。



「もしもこれを意図的に起こしてる

誰かがいるのなら、その人は

絶対に只者じゃない。それは間違いないと思う」



「……」

(……)

「……うわー」


イヤーー……な声が思わず漏れる。

漏れないわけがない。



「絶対面倒ごとになるだろこれ」


「争いになったらかなり厳しいでしょうね…」



王都に最も近い巨大な円を見ながら、

俺は天を仰ぐように大きくため息をついた。


や、やりたくねええええぇぇぇぇぇ……!!!!!


この中心地には確実に何かいる!

そして、間違いなく俺たちは、

依頼の名の下にこの地を

調査しなければいけなくなる!!


……そ、そんなもん

面倒ごとにならないわけがねえ!!!!


「こんなはた迷惑なことする奴が

まともな奴なわけがない。

ァァァア……関わりたくねぇぇぇぇー……」


肩を落として心底うんざりする俺に、

アリアが肩をポンポンして励ました。


「まぁまぁ。今回の依頼ってあくまで

調査の名目であって、

討伐ではないところが救いよね。」


アリアは気持ちを切り替えるように

明るい調子で続けた。


「あんまり無理はしすぎない方針で

動くことにしましょう?」


「そうだな…」

(うん…)


先々の暗い見通しが立った中、

席を外していたメイドの

メアリがトトトと戻ってきた。


「ご主人様」

「ん?なんだ」


「お客様がいらっしゃいました。」


✳︎


メアリの突然の報告。

客の来訪が告げられる。


「客が来た?俺に?」

「はい」


客の来訪。反射的に冷や汗が背中を伝う。

圧倒的なデジャブが俺を襲った。


当然、思い起こされるのは昨日の記憶。

クレイジー八柱将が俺の元に

強引にやってきたときの記憶である。


(ま、まさかまたアイツが来たのか……!?)


そう気づくや否や、俺は無理矢理体を起こす!

窓枠に手を伸ばす……!!

しかしその途中で、

メイドのメアリがやんわりそれを遮った。



「サタケ様ではありません。

教会の神官様がいらっしゃったようです」


「なぬ?」



はぁ…?神官??なんでまた急に??

まさか俺が死んだと勘違いして、

お経でも読みに来たのか??


「タケシ、教会所属の冒険者ってこと忘れてない?」

「……そうだった」


…そうだった。

気づいたら俺は教会の冒険者になってたのだった。

今回の依頼の件で何か話でもあるのだろうか。



「ふーん。まぁいいや。

とりあえず中に入れてやってくれ」


「かしこまりました」


・・・

・・


そしてそれから数分後、

見知った顔が俺の部屋にやってくる。


「お邪魔するよ。」


キリッとした顔立ち。短めに切り揃えられた黒髪。

そしていかにもクソ真面目そーーーなお堅い顔。


スキル授与式で俺のことを援護してくれたり、

協会強襲事件では、唯一市民を悪魔たちから

守ろうと奮起していた神官である。



「久しぶりだね。

タケシ君、オリビアさん、アリア様、

それから…」


「あ、はい!私はサナと申します!」


「サナさんだね。はじめまして。僕は王都の教会で

神官をやってるライラ・アクシルだ。」



そんな簡単な自己紹介を終え、

神官は改めて俺たちに向き直る。


そして挨拶をしてから早々に、

神官はすぐさま頭を下げたのだった。


「ここ数週間は、本当にすまなかった」


俺たちよりもなん歳も年上の大の大人が、

深く深く頭を下げて謝罪していた。



はぁ?なにやってんだこいつ?w

という気持ちをおくびにも出さずに、

俺は静かに神官に問いかける。



「……何に対して謝罪しているのでしょう?」


「まずは、一般人の君たちを

あの戦いに巻き込んでしまったことを謝りたい。


そして君たちを守れなかったどころか、

君たちに助けられてしまった我々の不甲斐なさを、

謝罪したい……」


神官は深く深く、俺たちに謝罪した。


「……」

俺は黙って神官の話を聞いた。

純粋に思う。


まっっっっ………たくもって、

その通りである!!


えぇ?神官様よぉ。

いつも高い場所から偉そうに神託とやらを

告げる割には一つも

役に立たないでいやがるんだなぁ…。

俺たち国民の税金で

飯食えてる自覚あるかおめえらぁぁ……??


忘れていた教会への恨み辛みが蘇る。

なんか腹立ってきたから、

ずっと嫌な感じの態度で貫いてやろう。


表情を硬くしたまま、俺は再び問いかける。


「……謝罪は以上ですか?」


「いや……。それから、

魔人強襲事件の事後処理でドタバタしてしまって、

いろいろなことがおざなりなまま、

事態が進んでしまったことも謝りたい」


「事態というのは具体的には

なんのこと……いや、どれのことでしょう?」


「具体的には、君たちが教会所属の冒険者として、

依頼が通達されたことだ。」




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