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いや違うんです。本当にただの農民なんです  作者: あおのん
第7章 vs 八柱将(サタケ)
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第112話 ※アリアの視点

【アリアの視点】


・・・・

・・・

・・



「そんな弱者の戦い方じゃこの先たかが知れてる。

S級魔獣が出てきたら、それだけで

あっという間にお陀仏さ」



S級魔獣————。

サタケの口からふいに出たその単語に、

私の意識は奪われる。



"S級魔獣…?"

"S級魔獣なんて御伽話の生き物じゃ……"

"S級魔獣が出てくるわけが……"



冒険者の何人かが呟いた。

その存在は知識としては知られている。

けれどそれは、誰も見たことがない架空の生き物。


【S級魔獣は存在しない。】


それが世間の常識で、私も"ついこの前までは"

実在しないものだと思っていた。


そう。思って"いた"、のだ。


(……けど)


……けれど私は知っている。

それが架空でもおどき話でもない事を、

ティタノデビルという御伽話にでてきた化け物が

確かに存在する事を、

先の魔人との戦いで知ってしまっていた。



「絶対的な強者というものがどういうものか、

自分がいかに無力か、

しっかりと教えてあげないといけないようだね。」



自分がいかに無力か教えてやる、ですって?


S級魔獣のティタノデビルの前に

なすすべもなく屈したこの私が?


魔人をあと一歩まで追い詰めながら、

弄ばれるようにあっさり逆転されたこの私が?



この私が、ひたすらに敗北し続けたこの私が、

この後に及んでそれを自覚していないわけがない。


私は弱い。私は無力だ。

サタケがこれまで私に言ったことは全て正しい。

私は二流。………三流以下だ。



「……ふふふ」


全てを承知した上で、されども私は不敵に笑う。


スキル"双剣無双"。

私にはまだ強くなれる可能性がある。

可能性があるなら、その可能性に賭けるべきだ。

手を伸ばさない理由がどこにある。


心の底からサタケに同意しながらも、

それでも私は笑った。

己のスキルを掲げて、

自分を強者と宣うサタケを嘲笑い、

サタケのいう事全てを否定する。


そして堂々と、厚かましくも平然と、

一度も勝利を収めていない弱者たる私が、

さも自分を強者のように振る舞い、宣った。




「ふふ。強者というのはあなたのこと?

羊の皮を被った狼ならぬ、狼の皮を被った羊ね。

人からもらったスキルでよくも

偉そうに言えたものだわ。」



「……」




つらつらと、無感情に強情に、

強者の言葉を重ねていく。



「スキルなんて必要ないわ。私にはあなたと違って、

これまで積み上げてきた技術と経験があるもの」


「あなたにこそ、教えてあげる。

他人の力で自分が強いと勘違いするあなたに、

本当の強さを見せてあげる。」



そして私は思ってること真反対のことを

堂々白白と言ってのけた。


こんな無力な私が

一体何を強気な事を言っているのだろう。

厚顔無恥な発言だと自覚しながら、

それでも私は不敵にサタケを鼻で笑った。


「……」


押し黙るサタケ。

私の真意を探るようにジッとみる。


スキルは不要と、これほど強く断言されたこの男は、

今一体何を考えているだろう?


サタケはきっとこう思う。

『この娘は、本当にこの戦いで

スキルを使うつもりが一切ないのだ』と。



「……君の気持ちはわかった。

なら僕は、君が積み上げたもの全てを

力で全てをねじ伏せよう。

そしてなんとしても、君にスキルを使わせる」



……全ては策略。

僅かな勝率を上げるための浅い悪知恵。


普通に戦えば私が勝てる確率なんてゼロに等しい。

でも、サタケという名の戦闘狂は、

私のスキルを是が非でも体験したいはず。


そんな彼が、私がスキルを発動する前に、

完全に決着がついてしまうような"過激な"攻撃を

するだろうか?




……答えは否、だ。


サタケが私のスキルと闘いたいと思う限り、

必ずどこかで「手心」が生まれる。

スキルを見せない限り、彼は絶対に

本気を出さない、出すはずがない。


その隙に、私は勝機を見出した。



(姑息だろうとなんだろうと…

卑怯な手だろうとなんだろうと……!

私はもう、絶対に……負けない……!!)



もう十分に私は負けてきた。

これ以上、誰が負けてやるもんか!


そして決意を新たに、

私は腰に下がる剣に手をかけたのだった。


・・・・

・・・

・・




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