表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いや違うんです。本当にただの農民なんです  作者: あおのん
第7章 vs 八柱将(サタケ)
119/120

第111話 策戦


「君は一切、自分のスキルを

使おうとしてないね。それは何故だい?」


サタケは改まった様子でアリアを見る。

アリアは少し驚いたようでサタの顔を見た。



「……私のスキルを、知ってるの?」


「もちろん知ってるよ。

スキル授与式で与えられたスキルは

毎年必ずチェックするからね。」



拳をぐっと握る、

興奮した様子でサタケは更に続けた。



「スキル授与式で与えられるスキルは、

長年ずっとこの目で見てきた…

君のスキルはここ数年…

いや!数十年で見てもずば抜けてる…!

はっきり言って格が違うよ!」


一呼吸も間を置くこと無く、

サタケがアリアのスキルを

捲し立てるように褒めちぎる。


あのサタケがここまで興奮するとは、

よほどアリアのスキルは凄いのだろう。


し、しかし……


(アリアのスキルってどんなだっけか…?)


たしか『双剣無双』とか言ったか…??


その名前は全くと言っていいほど

俺の印象に残っていなかった。


理由は至極シンプル。アリアがそのスキルを

使ってるところを一度も見たことがないからだ。



「どうしてスキルを使わない?

どうしてそれほどの力を持ちながら、

その力を行使しない?」


「……」



繰り返されるサタケの質問。

その質問に対して、アリアは終始無言だった。


答えに悩んでいる、というよりは、

俺が先ほどお願いした「時間稼ぎ」を

してくれているのだろう。


(サナ。準備の進捗は?!)

(もう少しです!)

(よぅしゃ)


アリアが会話で時間を稼いでくれている裏で、

俺たちは"とある策"の準備を着々と進めていた。


それは決定打にはならずとも、

有効打くらいにはなりうる手だ!




「……」

「……」


無言で見つめ合う二人。

俺たちが企ててることなど知る由もなく、

サタケはアリアだけに意識を向ける。


「スキルを使わない理由、教えてもらおうか」


「……」


そしてアリアはたっぷりと間を置くと

ゆっくりとじらすように口を開いた。


「双剣無双……だったかしら。

貴方の言う通り、きっと私のスキルは

とても強いスキルなんでしょうね。」


「強いなんてものじゃないよ!

神話にすら登場するスキルだよ?

歴史も格も十二分さ!」



サタケはしきりにアリアのスキルを褒めちぎる。

しかしアリアの反応は冷めたものだった。



「そう。けど無理ね。

私にそんなスキルは必要ないわ」


「……なんだと?」



アリアはたった一言、ピシャリと断じる。


「古すぎる。

あのスキルの戦闘理念は、

あまりに古すぎるもの」


「……」


「スキル"双剣無双"。神話によれば、

それは両手に剣を持って、敵と肉薄しながら

剣を振るうスキルらしいわね。


敵と数センチ目の前で剣をぶつけ合って戦う。

しかも両手も塞がった状態で、

インファイトを強要されるスキル……。


いつでも大きなカウンターを

受けかねないその戦闘距離、

そして両手が塞がってるが故に、

力任せに剣を振る以外に選択肢がない戦い方。


ハイリスクハイリターンといえば聞こえはいいけど、

常に死と隣り合わせの戦闘スタイル…。」



アリアはかぶりを振りながら、淡々と結論付けた。



「古代の神話では英雄に

ふさわしい力なのかも知れないけど、

"現代"の戦い方には程遠いわね。


あれは戦いのためだけに命を捧げた者が使う力。

戦いを娯楽か何かと思い込んで、

手段と目的を履き違えた輩が使う蛮族のスキル。」



「冒険者の矜持として、

生きることを最優先にしない戦いは絶対にしない。


私は明日を生き残るためにしか、

剣を振るうつもりはないわ。


リスクのある戦い方なんて絶対しない。

私は魔人との戦いで大剣を振るって

それを痛感したの」


「あなたはきっと、このスキルを見たくて

ここまでのことをしたのだろうけど、

ここではっきり断言するわね」


「……」


「私はこのスキルを使わない。」


サタケは……終始無言だったが、

ついに言葉が放たれる。


「…………二流だね」


「……は?」


「二流だよ。二流が染み付いた考え方だ」


「……」


「そんな弱者の戦い方じゃこの先たかが知れてる。

S級魔獣が出てきたら、

それだけであっという間にお陀仏さ」


S級魔獣。

その言葉にアリアがぴくりと反応した。


「絶対的な強者、というものがどういうものか、

自分がいかに無力か教えてあげないと

いけないようだね。」


サタケがスラリと剣を抜く。


そして同時に、俺はサナに

準備を進めた"その策"を発動するよう

号令をかけたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ