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いや違うんです。本当にただの農民なんです  作者: あおのん
第7章 vs 八柱将(サタケ)
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第110話 開戦の狼煙

20191109 サタケの最後のあたりのセリフが

途中で切れていたので修正

(つ、つまりなにも進展なしってことか……?)


(は、はい。そー……なりますね。あはは)


こ、ここまで盛り上がっておいて

結局得るものなしかよ!


(い、いやそりゃおまっ……!)


しかし言葉は続かない。

突如響いた大きな爆発音によって、

俺の言葉はかき消されたのだ。


【ドゴオオオオオオオオオオン】


草原に響く爆発音。

それからすぐに、後ろで聞こえていた

剣戟の音がピタリと止まる。


途端、静けさが草原を支配する。

その静けさに、すぐに俺たちは

サタケと冒険者たちとの乱闘騒ぎが

決着を迎えたのだと悟った。


そしてそれは同時に、

俺たちの話し合いの時間が

終わってしまったことも意味するのであった……。


・・・

・・




【ドゴオオオオオオオオオオン】


巨大な爆発音。俺たちは一旦話し合いをやめて

慌ててサタケの方を見る!




「はい、僕の勝ち」

「ガッ……ハッ……!?」


回復したばかりだというのに、

冒険者たちは、再び同じように倒れている。


「く、くそぉぉ……」


とはいえ、死に体ではない。

以前ほどの凄惨な様子はなく、冒険者たちはただただ

ボコられてのされていた。


「じゃあ君もちょっと気絶しててね」

「なっ……!?ゴホッ……!」


そして唯一意識を保っていた冒険者も

サタケの強烈な蹴りで倒れ、たちまちに動かなくなる。


サタケは手の汚れを払うように、両の手を叩いた。


「はー、やっと終わった。

ごめんごめん。待たせたね」


にこりとこちらを振り返る。

「じゃあさっきの話の続き、始めようか」


そしてサタケのフォーカスが、

ついにアリアだけに注がれた。



✳︎



(く、くそぉぉぉぉ……!!

け、結局ろくに準備できないまま

戦闘開始かよおおおおおおお!!!)


さ、さいあくだ!だ、だがせめて…

せめて"あの策"だけは施さねーと…!



(ア、アリア!

役に立つかはわからんが、やりたいことがある!

少しの間トークで引き伸ばせ!)


(了解)



そしてアリアは一歩前へ。

一切臆することなく堂々とサタケに向かい合う。


(ニコニコ)


サタケは相変わらずニコニコと笑ったまま、

アリアに語りかけた。


「じゃあさっきの話の続き、始めようか」


「……」


話題でも逸らすように飄々とアリアは返す。



「……話、というのは合否の話でいいのかしら?」


「ん?あぁ、そういえば、

今回のそもそもは、君たちの依頼を誰が

受けるかっていう話だったね」



サタケはニコニコと変わらず笑顔で続ける。


「でも、合否もなにも、

みんな辞退しちゃったから、

僕しかやる人はいないんじゃないかな?」


「そう、ね」


冒険者をチラリと見る。アリアの目配せに

誰もが申し訳なさそうに目線を逸らすばかりだ。


格付けはすでについてしまった。

冒険者たちは皆全員、サタケに屈してしまっている。


怯える冒険者とは対照的に、

ただ一人、アリアだけは、

爽やかに微笑をたたえながらサタケに話す。


「でも残念。あなたは不採用よ。」


「え?」


「性格に難がありすぎるもの」


アリアは屈さない。

国の最大戦力を前にして飄々とさらりと告げた。


「協調性がマイナスね。慎重さもマイナス。

ちょっと人間性が胸糞悪すぎるわね。


残念だけどそんな人と

冒険するなんて絶対ムリ。残念だけど諦めてね」


「あらま。それは残念。

じゃあ諦めるとしよう」


しかし諦めた割には

抜いた剣を鞘に納める気配がない。

むしろ気配をより濃密に高めながらサタケは続けた。



「さて、これで君の用事は済んだかな?

それじゃあ次は僕の用件だ。」


「……っ」



ッ!刹那、空気の"色"が変わる!

素人の俺でも分かるプレッシャー……!

サタケの濃密な見えない圧に気圧される!



「大体察しはついてると思うけど、

僕の用件はなんだと思う?」



(つ、ついに本題を打ち込んできたか!)


サタケの用件はなにかって?

そんなもん決まってる!

こいつの行動理由は常に単純。

アリアと戦いたい、ただそれだけなのだ!


大方、採用面接のための試合に便乗して、

アリアと戦うつもりだったのだ!


そんなサタケに、アリアはしれっと

知らん顔して話を進める。


「さぁ?あなたみたいなサイコパスな人間の

考えることなんて、私には全くわからないわね。」


「そっか。じゃあ単刀直入に言うね」


サタケは案の定なその言葉を告げた。



「僕は君と、戦いたい」



そして再び再現される。

病室での一幕が繰り返される。


「あ。返事は慎重にね?

もしも断ったら、君の代わりに

ここにいる冒険者たちに相手になってもらうから」


サタケは一際優しい笑顔で続けた。


「ここにいる冒険者を皆殺しに

されたくなければ、僕と戦って?」


・・・

・・



……戦闘は、避けられない。


二人の距離は十メートルと離れている。

しかし二人の戦気がその遠い間合いを

濃密な空気で埋め尽くす。


「……あなたは本当に、勝手気ままね」


「あはは。そんな怖い顔しないでよ?

この戦いは、僕が君と

戦いたいからっていうのももちろんあるけど、

それ以上に、君のためでもあるんだよ?」


はぁ?なんでやねん??


サタケはこれまでにない"凄み"を

発しながら、アリアを覗き込むようにじっと見る。


「僕はね、強くなれる人は

強くならないといけない義務があると思ってる。


神様は国々や地域の戦力に

偏りが生まれないように、意図的に

均等に強いものを生み出している。

そうやって、世界の均衡を保とうとしている。


それなのに、もっと強くなれるのに、

それをやらない人、それは神の意向に従わぬ者。


神の恩恵を無碍にするそう言う輩が、

僕はたまらなく許せないのさ」


「……」


そしてサタケはここまでで1番の

真剣な表情で、アリアに尋ねた。


「君は一切、自分のスキルを

使おうとしてないね。それは何故だい?」




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