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いや違うんです。本当にただの農民なんです  作者: あおのん
第7章 vs 八柱将(サタケ)
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第98話 バトルロワイヤル #1

階下に見える男の群れ。


病院の前の綺麗な並木道は、汗臭い野郎どもの

集団で埋め尽くされた。


その様は例えるなら"壁"。

大柄な男どもご一斉に動き出すとまるで山が

自ら動き出しているようだ。


(……って、いやいや!)


そ、そんな描写はどうでもいいんだよ!


それよりも!

それよりも気になるのはその先頭!

暴走族の先頭を突っ走る総長のごときポジションに、

見知った顔が堂々と歩いているのだ!!



「あ、あいつあんなとこで何してんの…???」



男純度100%。むさ苦しい集団のその先頭。

どういうわけかアリアが

先頭切って歩いてくるのが見えたのだ。



「か、完全にリーダーの……というか総長の

ポジションやんけあれ…」


「そうですね…。

それに皆さんなんだか

強そうな人たちばっかりです」


「そ、そうね」



男たちの顔についた無数の傷。

加えて、腰にぶら下がるは大剣、

あるいは巨大ハンマー、更には大きな盾。

筋肉マッチョの集団が放たれる蜜なオーラが

あきらかに堅気じゃない。


マジでなにやってんのあいつ……?

なんであんな物騒な連中連れ立って歩いてんの?

もしかしてグレたの?

グレて暴走族の総長めざしたの?

思春期特有のやつなの?


(……いや、違うな)


アリアの性格的にその可能性は低いだろう。

となると、最後の可能性だ。


噂に聞いたことがある。

あれこそが、妙齢の女貴族が作ると言われる

"逆ハーレム"というやつかもしれない。


だとしたら、あいつの男の趣味は

「腐りかけが一番うまい!」と言って腐った

バナナを食べるおっさんばりに趣味が悪い。


【ざわ…ざわ…ざわ】


病院周りの住民たちがざわつく。


誰が見ても人目でわかるヤバイ人感。

病院周りのご近所さん方は

声には出して騒ぎはしないが

サイレントに大騒ぎ真っ只中。

集団を見てUターンする人続出中である。


マッチョが一歩歩くたび、

平和な住民達は一歩横に逸れていく。

周りを歩く人がサササーーーっと道が開けていった。


いつもは人通りの多い道が、今日だけは

海が割れるが如く真っ二つにわれた。


(うわーー……)


そんな尋常ならざる光景を見て、

思うことは一つである。


(か、関わりあいたくねーーーーー……)


あんな物騒な連中に関わって、

トラブルにならない訳がないやんけ…。


「……カーテン閉めていい?」

見て見ぬ振りしたいんすけどぉぉ……


「ダメですよ!

ほら見てくださいアリアさんの顔を!

明らかに助けを求めてる顔ですよあれ!」


言うてもなぁ…。

そして再びアリアに目線を移したその時。


「あっ」

「あっ」


【じーーーーーーーーーー】


ア、アリアがっ!

アリアがめっちゃこっち見てくる……!!!


まさしく捨てられた子犬の目!

カーテンに手を伸ばしかけたその時、

アリアと目が合ってしまったのだ!


「……」


アリアの言葉は聞こえない。

だがアリアの表情は

それはもーーめっっっちゃくちゃ困っている!

助けてと叫んでるのが顔にそのまんま書いてある!


「……」

「……」


見つめ合う俺とアリア。


ビリビリっ!と直感する……!!

今この瞬間、俺はリーダーとしての

素質を問われている気がした……!!


タケシ軍団が筆頭アリアが、

リーダーたるこの俺に今まさに助けを訴えている…!?

リーダーとして俺が取るべき行動は……?!



「ア、アリアさんめちゃくちゃこっち見てますけど…」


「そうだな」



そして俺は逡巡することなくカーテンに手をかける。


リーダー云々を理由に色々考えようとしたけど、

それでもやっぱり関わりたくねーな。


臭そうだもんあいつら。匂いうつっちゃうよ。


【ピシャン!】


そして俺は迷うことなく

カーテンをあっさりと閉めたのだった。



・・・・

・・・

・・



「……タケツ様?」 


カーテンを閉められ部屋が一気に暗くなる。


暗がりの部屋の中、サナが顔に影を落としながら

ゆっくりこちらを見つめてくる。

こ、こえーよ!顔に影を差し込むんじゃねえ!



「あー……わかった。わかったよ。行く行く。

助けに行くよ」



はぁ…。まぁ、どちらにしても、

アリアが公衆の面前でこれだけ大騒ぎした時点で

出向くつもりではいた。


これだけの騒ぎだ。

身内のアリアが病院の前での騒ぎに

関わってるとわかれば、

またきっとメアリに怒られる。


(メアリにバレる前に

場所だけでも変えねーと…)


メアリに怒られたくない一心で、

俺は松葉杖をついて、サナと一緒に

嫌々下の階へ降りたのだった…。


・・・

・・


「こ、こんにちは〜……」


病院の外に出る。


嫌でも目につく男どもの軍団に、

とりあえず適当に挨拶をする。


まさしく未開の土地の原住民に

挨拶する心地である。

オイ、ゴリラドモ、コトバ、ワカリマスカー?



「こんにちは!」

「お世話になってます!」

「お疲れ様です!!」


「お、おぉ!?」

「れ、礼儀ができてる……!?」



つ、つうじた!?

というか意外と礼儀正しくね!?


俺とサナは二人して驚いていると、

トトトー…とアリアが近くに寄ってきた。


「ご、ごめん。い、色々あって…」


俺はこっそりと、ゴリラどもに

声が聞こえないように小さな声で返事を返す。



「うん。そりゃあ色々なことがなきゃ

こんな事態にはならんだろうよ」


「ち、ちがうのよ。

タケシに冒険者ギルドに依頼を出すように

頼まれてたでしょ?それが……」


「あー?いや、うん。

詳しい説明は後ででいい。今はとにかく…」



さ、さきほどから周囲の視線が痛い。

病院の真ん前で何十人も相手にするのは

あまりにも目立ち過ぎる。


このままじゃ俺もこいつらの一味だと

善良な町の市民たちに思われてしまう。


「と、とにかく、場所を変えるぞ」


そして俺たちは、

人の少ない西の山の方に移動したのだった……。





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