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VALENZ TAXI  作者: 孤独
試験編
12/100

試験ですよ!①

美癒ぴーです。


『VALENZ TAXI』に入社して、10日目。今日は学校をちょっとズル休みして、日中の運転をする事になっています。周りの都合でしょうがないんだけどね。

車の運転にも、点検にも、部品の交換にも慣れてきました。

学校が終わった後での運転の訓練ばかりでしたが、すでに日中も夜間も、公道に出て走ってきました。やっている緊張も終われば自信と繋がります。苦労した駐車も、



「100回くらいやればバッチリですね」


様々な事があり、徐々に仕事や運転以外にも気持ちが向けられるようになって、気付いた事がいくつかあります。


「くぅ~……くぅ~……」


まず、トーコ様。出会った時は、いつも眠っているような安らかな表情であることに驚いていたけど。どうやら、トーコ様が眠っているか眠っていないかの区別がようやくできました。

ポイントは姿勢と眼鏡でした。

猫背気味の時の睡眠は眠りながら行動を可能にしていて、若干意識があるみたいです。逆に猫背にならずにリラックスして眠っていると、完全に寝ています。眼鏡を外して、眼鏡ケースにしている胸ポケットに入れていたら完璧に寝ています。

ずーっと眠っているようで、実は起きているという、なんでこんな面倒な行動をしているのか。よくは分かりません。



「トーコ様のちゃんとした睡眠時間は、そんなに長くありません」


そうそう、眼鏡といえば。

アッシ社長とトーコ様の眼鏡は同じなのです。なんでも2人は、この会社を立ち上げたとかでずーっと昔から仲が良かったとか。



「ともかく、運転に集中してください」

「してます!少し余裕を見せているだけです」


今日はアッシ社長が助手席。トーコ様が後部座席へ。背もたれを倒して、布団を用意して熟睡するというお客様役を自ら勝手出た。

そんなわけで今日は気合を入れて臨む。


「卒業測定です。本番ってわけです」

「はい!」


アッシ社長の厳しい目で行なう、路上運転の試験である。

色々とすっ飛ばしてここまでやるわけなので、眼鏡をキリっと挙げて二度忠告する。


「私は厳しいですよ。もう一度、厳しいです」

「わ、分かりましたから……」


運転免許の資格を渡すという事は、それを決める者の判断能力もまた問われるという事である。先生という優しい立場ではなく、教官という立場で厳しくしなければいけない。免許を渡して、すぐに事故が起きたとすれば、資格を渡した者達にも当然、責任があるのだ。

情に流される性格でもない。



「とりあえず、出なさい。まずはそこからしましょう」

「え?分かりました」


せっかく、運転席に着いて、シートベルトまでしたのに。なんでと?

トーコ様を後部座席に置いたまま、一旦。外に出る美癒ぴーとアッシ社長の2人。そこへやってきたのは2台のタクシーであった。



「こっちの準備も整ったぜ」

「無事に合格をもらえるといいね」

「日野っち、ガンモ助さん!」


なんか協力者という感じにやってきておいて、


「2人には邪魔者をやってもらいます」

「え?」

「日野っちには我々の後ろを、ガンモ助さんにはルートを先行してもらい、脅かし役をします。運転中には何が起こるか分かりません。しかし、いかな天変地異を言い訳にしても、交通事故は交通事故です」



アッシ社長の真剣さが出ている一面だろう。不測の事態は頭の片隅に、常に入れて欲しいものだ。


「車は、人を殺せます。"殺人車"なんて、上手いこと言う人もいますし」

「き、緊張感持ってやりますから!」


試験とはいえ、終われば日常として使いこなさなきゃいけない。期末テストの一夜漬けを許して良い試験じゃないと、この場でまた意識させられる。


「私、毎日勉強するタイプですし!厳しく見てどうぞ!」

「ええ」


緊張感が高まる美癒ぴー。にも関わらず……


「日野っちー。どーして、俺の隣に座らなかったんだ?」

「だから、あんたと一緒に乗車したら、俺死ぬだろ!?」

「死ぬ?どーいう事だ。お前の身体付きをチェックするだけじゃないか。美癒ぴーが試験するなら、俺がお前を試験したい」

「止めろー!何執拗に俺の後ろについてくるんだよ!」

「ドライブテクニックは一流だな。しかし、身体の使い方はどうかな?」



日野っちと、ガンモ助さんはこんな駐車場でスキンシップなカーチェイスを始めて……



「むにゃむにゃ、あと28時間は寝かせてくださ~い……」


美癒ぴーが運転する後部座席には眠っているトーコ様。

あれ?これ本当に試験なのかな?

すでに色々な妨害を受けて、緊張感が上下する。まだ試験が始まっていないのにも関わらず、邪魔者を完璧にこなしている。


「なんとかなりませんか?この3人。やっぱり、ウザイです」

「タクシーに関わらず、運転することは如何なる事にも動じない精神力が必要です。気合がないと運転ができないようでは、資格を与えるわけにもいきません」



すごいもっともな事。

平常心の大切さを教えてくれる。過度な緊張感ではなく、適度な緊張感で運転する事が大事。


「ガンモ助さん。とりあえず、先に行ってください」

「あー、そうか。じゃあ!頑張るんだぞ、美癒ぴー!」


アッシ社長に指示されれば、ガンモ助さんも素直に従う。日野っちとアッシ社長で比べれば、背はアッシ社長の方が高いけど、日野っちの方が健康的な身体だよね。お弁当が中心なのにボチボチな体格。顔も、日野っちが良いかな。

自分が思う感情を、ガンモ助さんに合わせればちょっとやり過ぎなところも、まぁ、頷けるかな?でも、ホモなのがちょっと……私には理解できない。



「まったくあの人は。なんでいつも俺ばっかり、……アッシ社長の言う事は素直に聞いて……」

「大変だったんだね、日野っち」

「日野っちも準備してください。"変型交代"を」

「あいよ」


そう言って、日野っちとアッシ社長は自分達が乗るタクシーにある魔法のボタンをいくつか押し始める。10日目になるけど、美癒ぴーにはみんなまだ触らせてくれない。色々な仕掛けがあるため、押し間違えると大変なんだとか言われている。爆発とかもあるわけだしね。


2人が使った魔法である、"変型交代"とは



ウイイィィンッ



原型であるタクシーの形から様々な形に切り替わる魔法である。

タクシーでは乗せられない大人数を乗せるため、大型バスにもチェンジしたり、あるいはバイクのように車の間をすり抜ける形に変化したり、果てには湖や川を渡るために船にもチェンジし、お客様がマンションでご自宅まで希望するなら飛行機やヘリコプターになって、本当の自宅まで送ることができてしまうとか。


とはいえ、今日は運転の試験であるため、そこまでど派手な変型はないし、今挙げた乗り物に変型できても、全てを操作できるのはアッシ社長だけらしい。どの機能にも免許がなければ運転できないようロックされているんだって。

ちなみに日野っちは船舶免許を持っていて、ガンモ助さんもヘリコプターの操縦免許を持っているとか。


美癒ぴーが乗る車は白い乗用車。日野っちが乗る車は青い乗用車。

それぞれが変型を終える。ものの5分でこんな変型が行なわれるとかなり時代の進みを感じてしまう。


「タクシーの車体のままいけば、お客様を乗せることもありますからね」

「あれ?ナンバープレートも変わってません?」



ここで車のナンバープレートについての簡単な捕捉。

一見、数字と地名、ひらがなだけの違いにしか思えないが、文字の色やプレートの色、デザイン、サイズなどによって、その種類は色々とある。

仮免許の時は、ちゃんとプレートにも仮免許と書かれた物もある。

また、"ひらがな"の部分は51音全て使われているわけではなく、"お"、"し"、"へ"、"ん"はない。


"お"は、似た字形が多く、"し"は死を、"へ"は屁を連想させるため、"ん"は発音がし辛いから、という理由で使用されていない。

また、"わ"は、レンタカーで使われているプレートである。(たまに"ろ"とか"れ"もあるらしいけど)。

他にも地名の横にある小さな数字は分類番号と呼ばれ、その車種を数字で示している。

プレートなどからでも、前方を走る車を運転する技量を大まかに測れることが可能である。


「当然ですよ。バスなのに乗用車のナンバープレートを使っていたら、バレますから」

「ちゃんとこれは、法的にセーフになっているんですよね?」

「もちろん。では、これより!試験開始です!!」



運転技能の試験が始まる。まだ乗っていないところから始まるという、なんか不思議に思うかもしれないけど、乗りこむところからも重要なポイント。

落ち着いて、この10日間でやってきた事を平然とやればここは簡単。


まず、扉を開ける際。そっから始まる。いくらここが駐車場だからって、気を緩めてはいけない。車の運転席は大抵右側であり、道路側に扉を開く事になる。後方の確認は常にしてから、扉を開けるのだ。でないと後方の車が開けた扉にぶつかることもある。



「それから」


乗る前に車からの死角のチェックも忘れない。車の下に誰もいないか、後方に隠れている子供がいないかどうか。発進時にそんな万が一が起こるかもしれないから、チェックをする。チェックを済ませてから速やかに扉を開けて、乗り込んですぐに閉める。

エンジンを掛ける前に減点されることもあるので、注意しましょう。乗ったらシートベルトを付け、ギアの位置を確認してからエンジンを掛けます。"N"のままだったから、ちゃんとエンジンが掛かる。



ブロロロロ



バックミラー、サイドミラーのチェック。右に発進するため、ウィンカーを出して、自らも目視。ここに誰もいない事は知っているけど、それを癖にしてしまったら事故の元。


「そっちの扉、閉めてますよね?」

「ええ。問題ありませんよ」


アッシ社長がシートベルトを付けて、ドアもロックしている事を確認し、ようやく車の発進。

昼間の混雑している公道に向かう私達でした。


挿絵(By みてみん)

2017年9月1日


遅くなりましたが、アッシ社長とトーコ様の表紙です。


大分、描き方が変わった気がします。とはいえ、根本的にデザインとか自信ないとかいう以前に、知らんのが大半ですね。とはいえ、前回とは上手くなったのでは?って思っています。最初が0以下だったからってのもありますが。

ポージングも徐々に複雑にしたいです。今のところ、1人1人作って、中にぶち込んでるだけなんで。



アッシ社長が小さく見えるようで、トーコ様が馬鹿デカいだけです。あの人、190cmは超えてますから。描いてる時、トーコ様の髪色を黄緑にしていたんですが、自分で紫にしていたのを忘れていました(笑)。

アッシ社長は不健康設定なんですが、頬を痩せているように影を入れたら、かなり老けてしまい、結局止めました。ストレスをあんまり感じない雰囲気になってしまいましたが、それなりにモテ描写もあるキャラなんで、若さを保ってもいいかなっていう妥協です。

描く速度は結構上がってきましたが、質も上げていかないといけませんよね。



次回の同業者編は、山口兵多と山口夏目の2人。




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