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VALENZ TAXI  作者: 孤独
試験編
13/100

試験ですよ!②

危害を与えるために人はいるわけではないはずだ。



パラリ



「……………」


それでも、現状に対するぶつけようのない怒りを持てば、人は無意識でも身体を動かし、運転にも通じるのである。

スピードの出しすぎ、ブレーキの扱い、前へ前へと進む姿勢が車間距離の確保を怠る。急な事に対応ができない。その急な事はこちらの被がまったく無くとも起こること。



「……………」

『畦、赤信号だぞ』

「……………」


自分が作った"童話"を読むボンヤリとした特徴が外見にでている青年。今、死ぬような走馬灯の掛け声に、何か感じるも。すぐに視線も意識も"童話"の中にいき、進んでいく足もまたこの現実世界から外れたように、赤信号を無視して行く。左右の確認すらなく、自殺に近いそれは



キキキキキーーィィッ



たとえ、向かってくる車が歩行者に対する警戒を怠り、追い越しで突っ走る車があろうと歩行者に被があるだろう。誰もが歩行者が悪いと言うべきだ。

でも、青信号は"進め"じゃないため、暴走している車の方が交通ルール上、悪い。



「あぶねぇだろおぉぉっ!!前見ろやぁぁっ!!」


今、"童話"を読んでいる青年は猛スピードの車を通過し、何事もなく直進し、信号を渡り切った。


「!?……なんだぁ!?」


運転手には実感があった。今、何も考えずに渡ってきた青年を間違いなく、轢き殺したという感触。にもかかわらず、彼に接触する事ができなかった。幽霊と見間違えたかと、サイドミラーでもう後方にいる信号無視の青年を確認。それじゃない。



『お前が幽霊になっただけ』

「!っ!?なんだ!?」

『ああっ、失敬。霧状になっただけだな』


"童話"を読む青年に憑依している一つの自称する神が、運転手を含めた車全体に憑依した。神が成したのは無自覚なパワーと、理不尽かつ横暴な素質を秘める青年の保護。神もまた、彼から想像し創造された存在。子を守る親と同じく、親を守る子。



『畦が死ねば我も消える。すまんな』


惨いモノだ。

まだこの神に


『我が、メテオ・ホールに殺されないとは、不運なことよ』

「!……!?」


12分後。運転手はおぞましく惨い死を遂げ、この世から消え去っていく。

それをアッシ社長が知るのは半日後のこと。




◇     ◇



ブロロロロ



美癒ぴーの車は行く。颯爽と山道を降りて街まで向かう。曲がるポイント、アクセルの踏み込み、いくらテストであっても、10日も使っている車でやるんだったら違和感はさほど感じない。

馴染んでいて、ちょっと楽しい。



「上手ですね」

「ありがとうございます」



結構な進歩に褒めるアッシ社長。

道路が込んでいないため、事故が起こりやすいゾーンではない。信号も少ないからスイスイ進んでいく。バックミラーを覗けば、一定の間隔で後ろの日野っちのタクシーがついている。

公道に出れば車も多く走っており、ここから駅前まで向かうことになっている。


「……………」


真剣に前を向いて、いかなる事態にも対応できるよう覚悟は決めている。


「ちょっと力み過ぎですよ」

「!そ、そうですか?」

「減点になるわけじゃないですがね」


駅の方へ向かっていけば、車だけでなく、自転車、歩行者と色々な動く障害がいる。

まだ広い公道なら良い。ここから狭い路地も通るルートが決められており、慎重を前提とする運転には緊張がやってくる。


「!」


二車線の通りの前方に大型トラックが駐車されていた。まだ初心者と認識している美癒ぴーは左車線を基本的に走行している。車線変更をしなければならない。目視に、サイドミラーに、それから右へ車線変更するウィンカーを出す。

右の車線を走っているのは日野っちの車。美癒ぴーのウィンカーを出すタイミングに合わせて、加速し始め、無理な追い抜きを計った。



「危なっ」



日野っちの後続車が美癒ぴーを右の車線に入れるため、速度を落としてくれており、悠々と美癒ぴーは右へ車線変更をして、大型トラックの横を通過する。


「いや、今の普通に曲がっていたら交通事故でしたね。よくやりますよ、日野っちは」

「ほ、ホントに邪魔者してますね」


そして、バックミラーで停まっていたトラックの様子を探ると、なにやら嫌な予感が……。

その答えをあっさりとアッシ社長が言ってくれる。


「今のトラックはガンモ助さんですよ」

「や、やっぱり!?2人はこんな感じで私の邪魔をしてくるんですね!?」


再び左車線に戻って、次の信号で左折。内輪差と横断歩道を渡る歩行者に注意しながら、徐行しつつの左折。公道から外れた路地へと入っていく。

信号のない交差点をサーっと通過する車もある。車線もないところを走る時はスピードを落とそう。信号すらない横断歩道も多く、歩行者の動きも色々と複雑になる



「注意すべき歩行者は全員ですが、特別気をつけるとしたら」



やはり子供と高齢者の動きには注意して欲しい。

公園や幼稚園近くでは必ず最徐行を心がけましょう。特に子供は交通規則など分かるはずもなく、成長期の身体はとても脆いため、将来に影響する事故にもなります。

高齢者の場合はその動きと反応、判断の遅さが顕著にあり、横断してくる時は減速を心がけましょう。



「子供は可愛いから良いですよ。でも、爺とか婆が、我が物顔で車の走行を邪魔して横断している姿は腹立たしいですね。轢く時は轢くもんですよ」

「な、何を言っているんですか?」

「横断歩道すらないところを歩くならとっとと渡れ。車にビビッた顔すんのもイライラする。少し先に信号があんだろ」

「あの、……アッシ社長が言っているんですよね?」

「『あなたはどんな運転をしているですが!?轢き殺されるところでしたよ!!ビックリして腰が抜けました!責任をとって1000万円出して謝罪しなさい!!』なんて、……テメェが前後左右の確認もせず、道路に侵入して、自分はあんたの手前で停止して待っていたのに、渡るどころかこっちに来て、謝罪と賠償金を意味分からず要求するとか意味不明だろ!!さっさとどけ!後ろが支えているんだよ!」

「もうダメ!それ以上ダメ!アッシ社長じゃないでしょ!」

「『こんな若者がいるから世の中はダメなのよ。こんな人を雇っている会社があるからダメなのよ。とにかく、腰と心を痛めたから2000万円の賠償金を用意しなさい』なんて、……会社にまで電話してくんじゃねぇ!!営業妨害で警察呼ぶぞ!」

「なんですかこれ!?実話ですか!?」

「『警察を呼ぶの!?いいわよ!呼びなさいよ!……え?本当に呼ぶの!?実況見分?事情聴取?え?いやよ、面倒よ!女性に対して失礼!いいわよもう!ホント酷い会社ね!すぐに警察警察って。お客様を馬鹿にしているなんて会社としてあるまじき行為だわ。え?警察はもう呼んだ?嘘でしょ!!ごめんなさい、ごめんなさい、ホントに軽い冗談なんです!止めて!』」

「婆やられたーー!!」


ホントに高齢者って面倒です。運転手の立場から見ると、子供より人間という奴を理解しているので悪質。


「『特にぶつかってませんよ。でも、この若い奴は凄く危ない運転してましたよ。そのことを取り締まるのが警察なんじゃないんですか?交通事故が起きる原因になりますよ!また轢かれそうになったら嫌だわー』」

「開き直った!うざっ!年取るとすっごくウザくなるんですね!」

「『あー、時間の無駄だった。ムカついた。若い者はホントに腹立つ。高齢者に気を使えないのかね』」

「婆が振った喧嘩ですよ!警察官もこれ嫌だったでしょ!?こんな奴と会いたくない!!」


そんなエピソードを紹介されながら、路地の運転も無難にこなしていく美癒ぴーだった。


「今の、実話なんですか?」

「概ね、作者の実話だそうです。軽くコメディ色を出してますが、現場で体験すると怒りと怒りのやり取りしか起きませんので。第三者目線でいる方が楽しいですよ」



個人情報は固く御守り致していますので、むしろ心当たりのある方は要注意してくださいね。


「じゃあ、次のところを右折で」

「は、はい」


集中力が削られる。いやしかし、そんな見えないパラメータを言い訳にできるわけがない。なんか腹が立つ話を聞かされると、無性にアクセルを踏みたくなる。飛ばしたいという気持ちがやってくる。

再び広い公道に行く道だ。右折レーンがなく、中間地点くらいのところで一時停止。


「あ」


反対車線にいる直進車。その運転手がガンモ助さんであることはすぐ分かった。あんなボディビルダーみたいな運転手は早々いない。


「どうやら、ガンモ助さんは譲ってくれるみたいですね」

「……みたいですね」


なんか怪しい。慎重に進んで行くと、ガンモ助さんの乗用車の横から猛スピードで現れたのは、バイクに乗った日野っちであった。


「やっぱり!」


こっちに手を振りながら、日野っちは通過していく。やり過ごしてから右折を行なった。



「今の気をつけてくださいね。バイクの方もですよ」

「右折車と直進バイクの事故ですね。トーコ様にも言われましたよ」



右折する車に直進するバイクがぶつかる交差点事故は多く、死亡する例もあるほど。

今のように、停まる車の影から猛スピードで進行するバイクに気付かず、右折車と衝突する。車側の対処法としては譲ってもらったり、停止しているからといって、安心して右折するのではなく、慎重かつ速やかに進みましょう。右折車側からの対処法はぶっちゃけほぼないです。通常の右折事故の場合、対向車のスピードを誤り、右折するタイミングを間違えている事が多く、過失は右折車側が多いそうです。



「通常の右折事故はまぁ、右折側の運転手のミスばかりです。直進車が速度超過していてもですよ」



安全な右折を心がけるなら、対向車に先を譲りましょう。それが右折事故を根絶させる最良の判断です。後ろからクラクションを鳴らされますが、その車が前方の車を無視して右折し、直進車と事故ると悲しいですよね。目の前で見てると本当にそうです。


「とはいえ、避けられない右折事故に今の例ですね」


右折側からの対処はまずなく、直進するバイクや車が注意しなくてはなりません。

交差点近くでの追い抜きは違反ではないとはいえ、非常に危険です。(交差点近くの追い抜きに関しては色々と人によって意見が別れており、調べると面白いです)


「バイクが突然侵入することもありますが、最近では自転車の方が多いらしいですよ」

「あ!確かにそれはあるかも!」


対向車線にある車ばかり意識するため、影からのバイクや歩道やその近くを走る自転車の存在に気付くことには遅れる。直進するバイクと自転車もまた、先を急いでいれば赤信号などおかまいなしに進んでいく。そうしてぶつかるケースが多いため、右折車もバイクなども気をつけよう。急ぐくらいのことなら前もって準備しておく事です。


「右折時は止まれる速度で速やかに進んでくださいね」

「その表現をやるのは難しいですね」

「そうですね」


自動車の教習でも一度は必ず視ることになる避けられない事故です。避けられない事故を防ぐには始めから行なわない事が一番ですので、肝に命じておきましょう。



「ところで日野っちって」

「はい?」

「ジェットコースターとか好きそうですよね。先ほどから危険な役割を引き受けて」


こんな危ないことはしないで欲しいけど。

それでも、最初に出会った時の姿勢を思い出させてくれる。



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