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終末の証人  作者: GrayAmber
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東京編 第20話「傷と亀裂」

撤退した翌朝、マンションのロビーに全員がいた。


全員起きてはいるが誰も話さなかった。


ガルドはゼノンとの戦闘の影響で右腕が上がらずいまだ上がる気配はなかった。表情が硬く目に光がなかった。何を考えているのかすらわからなかった。ただじっと窓際から外を見つめていた。窓の外は辺り一面曇りで何一つ音もないだけに不気味な静けさがあった。

シアは戦闘後の魔力が回復していないのか部屋の壁にもたれて項垂れておりやつれた表情をしていた。回復するのにも時間がかかるのだろう。

そんな中、アルだけはいつも通り考え事をしているように見えた。


この状況下なだけにアルの行動は異常で1番不気味だと思った。



そんな異様な雰囲気にケンと他3人は、声を出さなかった。

「ご飯配るよ」とケンだけ言って配った。

だが、誰も手をつけなかった。

「早いうちに食べてね。」と田中さんが優しく言う。それでも誰も手をつける事はなかった。


その中、沈黙を破ったのはアルだった。


「誰も食べないのなら後でいい。次の作戦を説明する。」アルはそう言いながらご飯をどかして代わりに地図を広げた。


「まず前回の作戦では、RAの資料にあった抑制剤、完全解除剤(軽度用)の入手に成功した。よって次の作戦はRA施設の破壊又は無力化になるが____」と言ったところでアルの手が一瞬止まるのを奈々は見逃さなかった。

今まで作戦説明中に手が止まり、言い淀む所を見たことがなかったので尚更おかしく感じた。

「やるとしても問題なのは撤退前に交戦した恐らくあの施設の責任者であろうゼノンになる。」交戦した全員が理解していた。ゼノンをどうにかしない限りあの施設を無力化する事は叶わないと、

奈々は、ゼノンを思い浮かべた。ゼノンとの対峙で感じた重圧。あれは強いとか弱いとかではない。柔道の試合で格上と立ち会った時にある(強者特有のオーラ)と似てはいた。だがあの重圧はあの時とは比較にすらならない。あの存在は格も、次元も違い絶対的な風格をも纏っていた。


「それだけではない。」とアルは続けた。

「もう一度行くにしても全員回復できていないかつゼノンと遭遇した時の戦略も考えなければ___」とアルがいいかけた所で、


不意にガルドが立ち上がって外へ出て行った。


奈々は突然の事に不安になりガルドの後を追おうとしたが、シアに後ろから止められた。

「今はそっとしといてあげて」とシアは言った。

確かにガルド渾身の技をもってしても倒しきれなかったのだ。思う所があったのだろうと奈々は元の場所に戻った。


元に戻った後も

「前回は相手の実力が不明な点、準備が足りていなかった点もある____」アルの声だけが響いていた。


奈々はただただ部屋全体を眺めていた。


止めた後項垂れたまま動かないシア、壁に寄りかかり膝を抱えるケン、そしてついさっきまでガルドがいた場所。みな淀んだ雰囲気を出していた。その中アルだけは普段と同じ様子で地図を指しながら作戦を説明していた。

だが___、

アルの発する言葉が一度だけ誰も気付かないくらいの一瞬言葉を紡ぐのが止まった時があった。指先も止まっていたが一瞬の事で、他の皆んなは気付いていなかった。


奈々だけはそれを見ていた。


1人だけ平然と説明しているが、今の状況を察していないわけがない。むしろ____





アルの話が終わり、誰も言葉を発さずしばらくして辺りが静かになった頃、


「おやすみなさい。奈々お姉ちゃん。」とケンがお眠そうに言った。

「おやすみ、ケン」と奈々は言い返した。


やりとりを済ませた後奈々は手帳を開きこう書いた。



気づかないふりをして気付いている人間が1番孤独だ。



今日のアルを見ていたら、そんな気がした。


ガルドはまだ拠点に戻ってはいなかった。


それでもいずれにしろけりをつける時はもうすぐそこまできてる。


そう思いながら奈々は眠りについた。


窓の外はまだ曇っていたままだった。


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