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転生悪役令嬢の前途多難な没落計画   作者: 一花八華
第二章
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繋げない

パカポコ。パカポコ。


 赤味がかった空。少しひんやりとした風が野の草を撫で、馬車がその間を駆け抜けていきますわ。行きと違い、乗り合いでなく個人所有の馬車。そして、一緒に乗っているのはレオニダスでもハンスでもなく・・・・オズワルド皇子・・・・。


「あの。私、ひとりでも学園に帰れますわ・・・・」


何故か向かいでなく隣に陣取るオズワルド皇子。隣からひしひしと伝わる圧迫感。居心地が悪すぎて、に げ だ し た い。 


ーっといっても、手を繋がれているので逃げれないのですけれど・・・・・・。




 いや、何故繋ぐ必要があって??街中はまだわかりますわ。危険な事がありましたし、前科のある私を野放しにできない。というオズワルド皇子の主張もわかりますわ。ええ、ふ ほ ん い ですけれど!!



でもね?

今、馬車の中ですのよ?

しかも、オズワルド皇子所有の!!

繋ぐ必要なんてないじゃないですの!

ナニコレ!手錠!?私、レオニダスじゃありませんのよ!?捕縛だなんて納得いきませんわ!


「そろそろ外して下さる?」


ジトっとした目で横を見ると、「ナニを?」っといった顔でこちらを見ますわ。


「手。貴方の体温が高すぎて、手汗が酷いのですわ。」


 貴方、無駄に体温が高すぎですのよ。赤ちゃん?赤ちゃんの体温って高いっていいますわね。ええ。きっとそんな感じ。そして濡れやすい私と肌が合わさると・・・・見事に湿ってきますのよ。ううっ。なんとなく心にダメージがっ。私、汗かきでなくってよ!?人より濡れやすい。それだけですわ!


「あっ?ああっ!!手か!なんで繋いだままなんだ!早く離せ!馬鹿!」

「は?貴方が繋いできたのでしょう!?離してくれなかったのも貴方じゃないですの!私の所為ではありませんわ!失礼ね!」


 私の指摘に、顔を真っ赤にして怒るオズワルド皇子。ちょっと!怒りたいのは私の方ですのよ!手を見つめ、渋い顔をする皇子。くっ!気持ち悪い思いをさせて申し訳ないですわね!そんな顔をするくらいなら、最初から手なんて繋がなければいいのに。



「私、人より(汗で)濡れやすいのですわ!貴方に触れられると(暑くて)濡れてしまいますのよ!ですからお離しになって!」


「・・・・!!!;ぉふっ!んんっ!?ぶはっぁあ!!」


ちょっと!なんですの!?いきなりむせて・・・・やだ!?オズワルド皇子、血が!!


「ちょっと!?どうしましたの!?大丈夫!?」


「おまっ!!俺を殺す気か!!」


「はぁ!?」


「もういい!とにかく近寄るな!俺様に近寄るな!頼むから!!」



血に塗れたオズワルド皇子。手当しようとしたら、拒否されてしまいましたわ。えっと、馬車の中、密室、血だらけ皇子。


私、これ王族に危害を加えたとかなんとかで、捕まりませんわよね?

ね?








◆◆◆



「着いたぞ。」



 会話という会話もなく、気付けばアルファフォリスへと戻りましたわ。ああ、なんという拷問。オズワルド皇子と馬車という密室の中で2人きり。ありえませんわー。やっと解放される。本当に今日は、散々な一日でしたわ。溜息無しでは語れなくってよ


 馬車から降りようとした所、すっと手が差し伸べられましたわ。ああ、オズワルド皇子ね。一応、レディとして扱ってくれるのね。腐っても皇子。俺様でもエスコートくらいはできるのね。


手を添えようとして、身が固まる。



「お帰りなさいませ。お嬢様。」




 差し出された手の先。そこに立つ人物。柔らかな茶色の癖っ毛が、風に揺れる。目を細めこちらを見つめる琥珀色の瞳。いつもと違う服装。街中で見かけたあの服。


目があった瞬間、ギュッと胸が締め付けられ、苦しくなる。



「ーハンス。・・・・どうして。」



何故貴方が此処に。


夕焼け色に染まるハンスの頬と鼻先。触れた手の冷たさに思わず驚く。



「あっ。すみません。手袋するのを忘れていました。」


「私の手・・・・冷たかったですよね。」っと言って、慌てて手を擦るハンス。いつからそこにいたの?貴方、私を此処で待っていたの?ずっと・・・・待っていてくれたの?


ーその手を暖めたい。私の手で。


そう思い、伸ばした手を慌てて引っ込める。


だめよ。ヴィー。ハンスのこの手を暖めるのは、私じゃない。



脳裏に過ぎるのは、ルビアナの後ろ姿。






 私は、この手を握れない。






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