イケメンとヒロインと私と
「何?コイツら」
愛らしいフィロスの口から、刺々しい言葉が吐かれますわ。
ー貴女、仮にもヒロインですのに攻略対象への態度でそれで宜しいの?
「俺様は、ヴィクトリアの婚約者だ」
噴水の傍に座り込む私達を、グレイ様とオズワルド皇子が見下ろしますわ。
「婚約者では、ありませんわ」
どさくさに紛れて、何を仰ってまして?
「うん、候補でしかないからね。残念だねオズ」
「煩い。いずれ俺様の嫁になるからいいんだ」
良くありませんわ。私、貴方の嫁になんてなりませんわ。
なるとしたら、こちらにいるフィロスの方でしてよ?
何をとち狂った事を仰ってるのかしら?相変わらずオズワルド皇子は、私を屈服したいと執念を燃やしていらっしゃるのね・・・・。その情熱を別に向ければいいのに、本当に残念な方。
ーあら!?これってヒロインと攻略対象のイベントですわね!?
私ったら、うっかりその現場に立ち会ってしまっていますわ!!
あぁ。ヒロインは一体どちらに恋をするのかしら。グレイ様もオズワルド皇子もヒロインの愛らしい姿に一目惚れを・・・・。
一目惚れ・・・・を?
「聴こえなかったか?そこの女。ヴィクトリアは、俺様の婚約者(候補)だ。あまりベタベタと触れるな。燃やすぞ」
「そうだね。いくら女同士といっても・・・・僕もキミがヴィクトリアにベタベタするのは、正直不快だな。離れてくれる?フィロス・インカ?」
険しい顔で、フィロスを睨みつけるオズワルド皇子。
そして、冷やかな視線でフィロスを刺すグレイ様。
いつもの貼り付けた笑顔を、また何処かに落っことしていらっしゃるわ。
「何?コイツら。ヴィーちゃんの知り合い?」
唸るような声で、フィロスが二人を睨み付けましたわ・・・・
バチバチと火花が散って・・・・
「うわっ!?急に冷気が!!」
「熱っ!熱風!?なんで!!」
「眩しい!目がっ目がァ!!」
てっ天変地異!?
嫌ですわ!私達の周りで冷気と熱風と閃光が渦を巻いていますわよ!?
他の生徒達も巻き込んで、大事になっていますわ!?
えっ?乙女ゲームのヒロインと攻略対象のご対面ってこれが通常ですの???
過剰演出すぎませんこと!?
とんだ、世紀末なんちゃらな絵面ですわ!
「ちょっと!貴方達!魔力がダダ漏れしてましてよ!」
これだから思春期は!!なんですの!
運命の出会いで、お互い興奮でもしてらして!?
興奮するのは勝手ですけれども、それに私を巻き込まないで頂戴!
このままでは、ここら一帯が乙女ゲーム演出被害で悲惨な事になってしまいますわ!!
ここは、私がなんとかしなければ!
「貴方達!!いい加減になさって!これで頭を冷やしなさい!」
ありったけの魔力を込めて、水魔法を展開しますわ。
水でも被って、頭を冷やせばきっと冷静に!!ええ!冷水で冷静に大作戦☆ですわ!!
ーバッシャーン!!!
「うわっ!」
「ひゃっ!」
「冷たっ・・・・」
「きゃあっ!?」
あー忘れてましたわ。私も傍にいたんだった。
冷たい・・・・。
また、びしょ濡れですわ・・・・ぶるるつ
「ヴィクトリア・・・・この方法はあまり関心しないな。頭からじゃなく、顔を狙うだけでも良かったんじゃない?何も君まで濡れなくても・・・・」
顔を顰めながら、グレイ様が私に上着を掛けますわ。
「上着?なぜ?」
「いいから着て。まったく、この場を収める為といえ・・・・君の考え無しの行動には呆れるよ」
ヤレヤレとため息を付き、濡れた髪をかき揚げますわ。
くっ!水も滴るいい男って奴ですの!?
いちいち行動が嫌味ですわ!このドS美人!
私だって、濡れて滴るいい女ですのよ!
「酷いよー。ヴィーちゃん。私はローブを着てるからまだいいけど・・・・」
同じく濡れたフィロスが、困った顔でこちらを見ますわ。
貴女、顔が真っ赤よ。鼻から血もでていますわ。ヒロインの癖に鼻血流してどうしますの!女の子なのよ?貴女。
「もう。フィロス・・・・ほらじっとなさい。鼻から血がでてましてよ」
「それは、ヴィーちゃんが」
ハンカチでフィロスの鼻を押さえますわ。
世話の焼けるヒロインですわね。
それにしても・・・・何故私の胸元を凝視しますの?
って、ああ!
また濡れて制服が透け透けですわー!?
「・・・・ヴィ…ヴィクトリア…おまっ…おまえ!?」
「あーオズ。落ち着いて?頼むからこれ以上興奮しない。」
「こっ…興奮!?おっ俺様がこいつのこの姿で…こっココココこここ」
「頼むから、落・ち・着・い・て」
「煩い!興奮などしていない!!!」
ーぼフッ!!!
叫ぶと同時に火の手があがる
「うわっ!オズ!鎮火!鎮火させてヴィクトリア!!水魔法をオズに!!」
・・・・その日
オズワルド皇子が発火した事は、ちょっとした騒動になりましたわ。




