表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生悪役令嬢の前途多難な没落計画   作者: 一花八華
第一章
PR
30/107

貴女を想います


 ーひんやりとした布が、おでこの熱を吸い上げていきますわ。


ああ。気持ちがいい。


茹だるような熱さと、気怠い倦怠感を取っていってくれてるような・・・・そんな気がしましてよ。



私ったら、熱を出して倒れてしまったのね。

情けないですわ。


俺様や腹黒、お馬鹿わんこといった攻略対象に出会ったくらいで・・・・熱を出して倒れてしまうなんて。


多少の不遇や不運など、跳ね除けて差し上げたかったのに…存外私も弱いのですわね。

完璧淑女な悪役令嬢には、まだまだですわ。


これくらいの事で音をあげるだなんて


「・・・・情けないですわね」


しっかりなさいな。ヴィクトリア・アクヤック。貴女、物語は始まったばかりですのよ?1日目で音をあげてどうしますの!?


これから運命に抗うつもりですのに、少し攻略対象と関わったくらいでこの体たらく・・・・そんな事では、ハンスendになんて辿り着けなくってよ?




 あーでも・・・・熱があると・・・・人間・・・・気持ちが弱くなりますわね。寮の自室だというのに、ハンスの香りを感じますわ。


リンゴのようにフルーティで・・・・瑞しく・・・・甘く優しい、咲き立ての白い薔薇の香り。


落ち着きますわ。

まるで、ハンスが傍に居てくれてるような気がしましてよ。



ふふふ。居る筈ありませんわね。

だって、女子寮ですもの。

いくら執事だといっても、男性のハンスが居たら大変ですわ。

見つかれば大問題ですわよ。

退学ものかもしれませんわ。


私ったら、ハンスの事で頭がいっぱいですのね。だからハンスの香りだなんて・・・・恥ずかしいわ。




「ハンス・・・・」

「はい。なんでしょうか。お嬢様」


・・・・あら。幻聴が聞こえましたわ。


「ハンスが、傍にいるだなんて…ふふふ。私ったら。夢の中まで貴方を求めてるのね」

「いますよ?ここに」


あら?この幻聴は、返事もするのね。

私、熱で魘されてるからといって・・・・本当に都合の良い夢を見てるのね。


「そう。ハンス・・・・傍にいるのね」

「ええ。お嬢様の傍に。俺は貴女の執事ですから」


「ふふふ。そうよね。貴方は私の執事ですもの。傍に居て当たり前よね?私から離れたりしませんわよね?」

「・・・・はい。離れたりしませんよ。貴女が俺を求めてくれる限り・・・・俺はお側で仕えさせて頂きます」

「嬉しいわ・・・・でも・・・・できれば・・・・執事でなく・・・・伴侶になって欲しいのだけど・・・・」

「それは・・・・。貴女には、俺なんかよりもっと・・・・お嬢様?」




ーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーー



 会話をしていた筈なのに・・・・いつの間にかヴィクトリアは返事を返さなくなった。


スースーと寝息が聞こえてくる。


「お嬢様・・・・。寝てしまわれたのですね」


 優しい笑みを浮かべ、眠るヴィクトリアの髪をハンスはそっと梳かす。


「伴侶・・・・か」


ヴィクトリアの告げる、愛の告白。

6歳の頃から・・・・一途に求められる愛。


恋と呼ぶには、幼すぎるヴィクトリアの想い。

愛するには若すぎる。まるで薔薇の蕾のような少女。


応えられるわけがない。応えていい筈がない。


ヴィクトリアは、直情的な人間だ。

其処が好ましい所ではあるが、余りにも周りが見えていなさすぎる。


「お嬢様。貴女は、恋に恋をしているんですよ」



 きっと貴女は、此処で素敵な出会いを経験し、たくさんの想いを知るでしょう。それは、向けるモノ。向けられるモノ。戸惑うモノも多いかもしれません。


できれば、俺の傍を離れた状態で経験し…視野を拡げて欲しかったのだけれど・・・・


「だめだな。こうなるのがわかっていたから・・・・入学なんてしたくなかったのに」


傍に居れば、囲いたくなる。

俺以外に目を向けて欲しいと願う癖に

俺以外を見つめて欲しくないと(よこしま)な感情が、胸に宿る。


執事だという立場を利用して、傍にいたいと思う。過保護に囲って・・・・回りから遠ざけようとしてしまう。


「お嬢様の幸せを・・・・俺は心から願っていますよ」


だから、俺なんて見ないで。

もっと他に目を向けるべきなんだ。


「お嬢様。俺は貴女に相応しくない。だから、この4年で…きちんと貴女を諦めますから。・・・・執事でいる事だけは、俺から取り上げないで下さい」





 ハンスは撫でる手を止め、その金糸の髪のひと房に・・・・そっと口付けを落とし呟いた。








第1章~完~です。


閲覧、評価、お気に入り、感想、レビュー


本当にありがとうございます。

アルファポリスでバレンタインに投稿した番外編を挟んで、第2部投下をゆっくりしていきます。


引き続きお付き合い頂けますと幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ