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第六話 母の教え

姉たちが部屋を出ていったあと、母がミコの前に座った。


灯りの下でも、その表情は穏やかだった。

声も、いつもと変わらない。


「巫女の家に生まれた以上、役目からは逃げられません」


言い切りだった。

叱るでもなく、諭すでもなく、ただ事実を告げるような口調。


「神託が下り、くじで選ばれた。

 それが、この国のやり方です」


ミコは、思わず目を伏せた。


「……やりたくないって、言ったら?」


母は、すぐには答えなかった。

少しだけ視線を落とし、それから静かに口を開く。


「それでも、あなたは選ばれた」


淡々とした声だった。


「逃げることも、拒むこともできます。

 誰も、あなたを縛りつけることはしない」


ミコは、顔を上げた。


「でも」


母は、まっすぐに娘を見る。


「それを選ばなかった時、

 あなたは一生、自分に問い続けることになる」


胸の奥を、正確に突く言葉だった。


「“やらなかった”のか、

 “できなかった”のかを」


しばらくの沈黙のあと、母は小さく息をついた。


「私は……あなたなら、やれると思っています」


それは励ましでも、命令でもない。

ただの、信頼だった。


「だから、役目を言います」


ミコの手を取ることも、抱きしめることもせず、母は言った。


「──国のことを考えなさい」


それだけ言って、母は立ち上がった。


「休みなさい。明日は長い一日になります」


背を向ける直前、ほんの一瞬だけ、声が柔らいだ。


「……無理は、しなくていい」

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