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プロローグ
クラネは俺を抱き寄せた。
「今ならわかるよ。ユネルがどうしてあの怪物につけこまれてしまったのか。大丈夫。私がついてるから。全部受け止めてあげる。また怪物に侵食されないように、ユネルの心を支えてあげる。だから」
クラネは俺の耳元で囁いた。
それは魔法の言葉。自分でも知らなかった開錠のための呪文。ずっと待っていたのかもしれない。誰かが開いてくれることを。いつからか忘れてしまった。そもそも憶えてもいなかったもしれない。でもそんなもの誰からも教えてもらったことなどなかった。義務教育にもなかった。知らないのも当然だと自分を慰める。
しかし開けられてしまった。それは半ば強引に。まるでチートを使ってラスボスを倒してしまうかのように。不正だとか、ずるいだとか、文句を言いたくなってしまう。こっちは城を作ってダンジョンを作って迷宮を作って相手を必死に遠ざけていたのに。それをいとも容易く吹き飛ばされてしまった。
枷が外れた。
全てが溢れる。




