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虚ろな世界  作者: 鈴木
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3



ターゲットは自ら冥界へ行ったので、次の仕事をもらうために冥界の生命管理機構(life managenent mechanism)略称LMMへ向かう。


人間を含め、あらゆる物質の最小単位は量子である。

人間の目に見えないが、誰しもが感じ取ることができる。人間の肉体から造られた俺たち死神は、自らの肉体を量子に分解し、飛ばすことができる。


いわゆるテレポートだ。



LMM管理部に来ると、死神が溢れていた。誰か有名な歌手のライブを待つ様に並んでいる。上を見上げれば、生まれ変わる為の設定の作業をしている職員が忙しなく働き、同じ様に魂が列をなしていた。


来世の課題はLMM管理部が決めるが、容姿や場所に関しては魂自身で決めるらしい。とはいえ時代や場所によって容姿の流行りは違うので、ここで良いと思ってもいざ生まれてみるとイジメにあうなどして大変らしい。

あとは機械にも制限時間が設けられていたり、一度決めたら戻れないとかで左右非対称になることもあるとか。


情報通な同僚の話だから、恐らく正確な情報だろう。



目線を戻すと、やっと最初から半分の辺りまで進んでいた。前方には、ジャンプして誰かに存在をアピールしている死神がひとり。リレカだ。


この自己主張の強い死神を俺は知っている。生まれ変わるシステム情報を教えてくれた同僚だ。そいつしかいない。


俺と目が合うと、リレカは嬉しそうにジャンプをしながら激しく手を振ってきた。と、ちょうどの順番が来たらしく、職員に呼ばれたところで大人しくなった。


死神は個性を必要としない。淡々と仕事をするだけだ。

リレカだけ何故か異端だった。

別の異端という意味で、"彼女"もそうだった。


リレカは職員と何かを話していた。

基本、職員に話しかけられても話しかけることはない。禁止はされていないが用事がない。


職員は戸惑いながら答えているが、様子からしてリレカと話すのは慣れている様だ。


2、3言葉を交わしてリレカはテレポートした。



それからはスムーズに列が進み、俺の番が来た。


まず前回の資料を渡すと、自動書記で記されたターゲットの冥界入り時刻を見られる。


「1分47秒、予定より早いです。今回は然程この魂に影響の少ないですが、気をつける様に」


事務的に言われ、新しい資料を受け取る。


次のターゲットは、北緯35度40分33.2秒

東経139度44分41.9秒。これは日本の国会議事堂だ。



資料を受け取り、俺はテレポートする。

仕事まであと8分23秒だ。



着いた先は衆議院本会議場だ。

ターゲット、南條澄、男、62歳



「幾多」


リレカがいた。しかも演壇にいる。


「霊感がある人間がいればアウトだぞ」


「大丈夫っしょ、この人ら頭固いから。てか50年ぶり。変わんないね」


リレカは演壇から飛んで近づいてきた。


「俺らの容姿は変わらないだろ」


「おもんねーな。俺のアピールにも眺めるだけだしよお」


こいつは何か期待していたのだろうか。


死神が同じ場に二人という事は、少なからず二人死ぬ。頭に埋め込むICチップが主流となりつつある世界の動向の中、日本は遅れつつあった。その議論を眺めるリレカは、本当につまらなそうだった。



「眺めるのが仕事だ」


「バカだな、俺との対話は仕事じゃねーだろ。それに、今回は眺めるだけじゃ済まないと思うぜ」


リレカは片方の口角だけ上げて、向かいの扉を見ている。俺もそちらを見るが、特に変わった様子はない。


"彼女"もそうだが、リレカも何を見ているのかわからない時がある。



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