カンガ√考える
うわぁ、前からトラックが。
「私は神です。貴方にはこの世界で比類なき史上最強のカンガルーにして差し上げましょう」
「うわ~」
おお、起きたらカンガルーになってる。
反射して見えるその姿は完全に完璧なカンガルーそのもの。
さて、どこに行くのが良いのだろうか。
今の俺はカンガルーだろ、果たして人間の町に溶け込めるのだろうか…。
「カンガルーで考えるーってね」
「きゃああああ。二足歩行カンガルーよ」
声のした方を振り向くと、なんかいい感じの人間が居た。
ポリタンクを背負っていて、作業着を着ている。
「オデ、ニンゲン、スキ」
「きゃあああ」
???
「こんにちは。私こうったものです」
そういって名刺を差し出す。
「あ、どうも。私もこういった者と申します」
女性から渡された名刺を見る。
どうやら女性は総合フィーリング波動研究所と言うところに所属する、スピッテ・ル・オバーカと言うらしい。
「それでオバーカさんは何を無さっていたのですか?」
「ああ、私は波動の研究をするために車屋さんの前の街路樹をからしていたんです」
「と言うことはそのポリタンクの中に入っているのは除草剤ですか?」
「そうです」
「でも何故波動研究所の方が除草剤を?」
「木の波動が車の売り上げにどう相関しているのかを調査するためです」
その顔には仕事に対する確かな埃があった。
「そうですか。それならば私も貴方の気持ちに応えなくては」
そういって目の前の街路樹を足で軽くつつこうと振り上げる。
するとその足は音、光、その全てを置き去り、物理法則を無視した、禁じられた無限の質量を持った黒い足で木を蹴り上げる。
その打撃を受ける事に世界の誰もが気づかぬ間に、振り上げた本人すら預かり知らぬところでその足は振り抜かれていた。
突如、すさまじい破裂音と共に、木とその奥に広がる扇形の大地は消え失せていた。
いや、足を振り上げた途端、そのあまりのエネルギーに原子が崩壊したのだ。
「ふむ、またつまらぬものを斬ってしまった」
「今のは凄いですね。物凄い爆発音とともに木がこの世から消えちゃいました。最強ですね。このままこの世の木全てなぎ倒していきましょう」
隣を見ると、耳から血を垂れ流している女性が立っていた。
もしかして今の音で鼓膜が破れてしまったのだろうか。
「もしかして鼓膜敗れちゃいました?」
「次のも行きましょうよ。これで定時で仕事を上がれそうです」
「あのー、鼓膜大丈夫でしょうか?ていうか二回目は命が危ないと思いますよ」
「何してるんですか。ほら、早く逝きますよ」
よし、聞こえてる。
その後、何回か木を伐採すると、まさかのまさか、いつの間にか車中古販売会社も消し飛ばしてしまっていた。
「あちゃーやってモーター」
「今日はありがとうございました」
そういって女性は頭を下げると、どこかへと去って行ってしまった。
__俺は思いもしてなかった。
この出会いが俺のkangaroo生を揺るがす大きな出会いになるなんて。
「あのー君、ちょっといいかな。この辺で爆発音がしたって通報があったんだけど」
「あー、これ運転免許証です」
財布に入っていた運転免許証を差し出す。
「へーゴールドなんだね。はい、協力ありがとうね。それじゃ気おつけて家に帰るんだよ」




