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187 入港局

クレハは彼以外にレモン畑の生産者がいないことを聞くと、早速、おじいさんとの交渉を始める。


「おじいさん、このレモンの現在の売り上げとかを教えて頂けますか?」


「売り上げか?そんなもん、ありゃせんよ。ほとんど、うちで食べたり、ご近所さんに配ったりで何処にも売れねぇだ。昔はあんなにも売れてくれたんだがな。」


「なるほどそうですか、では、領主としての権限で、おじいさんのレモンを買い取りたいのですがいかがでしょうか?」


そう言うと、クレハは彼に金額の書いた紙を差し出すのだ。幸いなことに、今まで稼いできた金額などもあるため、今年の分はすべて先払いでも問題ないくらい、クレハは莫大な財産を動かすことが出来る。


そんな彼に差し出された金額は彼の家族が10年は暮らすことのできる金額を毎年レモンを専属的に買い取ることを対価として差し出すという契約書だったのだ。


「な、なんだこの金額は。領主様はワシを騙そうとしているのですか?」


老人は流石の金額に、クレハが騙そうとしているのではないかと考えるも、そのことがクレハにも伝わったのか、思わず笑みを浮かべてしまう。


「そんなことはありませんよ、あなたが作るレモンにはこれくらいの価値があるんですから。ですが、これだけの金額を出す代わりに私たちにだけ販売を行う専売にさせてください。別に、いままで通り、ご近所さんにあげる分やご自身で食べる分に関しては特に規制はしません。


商人たちにだけ、販売を止めて欲しいんです。そうなってしまうと、少々事業がやりづらいですので。いかがでしょうか?多少の制約はつくかもしれませんが、毎年、安定した報酬を約束できるのですが?」


もちろん、老人は大歓迎だった。今まではレモンが大した売り上げになっていなかったせいで、くらしも貧しかったが、クレハが毎年安定して報酬をくれるのであれば話は別だ。老人はこれから息子夫婦ともども、貧しい思いをしないで済むとクレハの手を取り、喜ぶのであった。




こうして、老人との話もまとまったクレハが次に訪れたのはこの街の港を管理している入港局である。


「失礼、こちらの責任者のかたと話をしたいのですが、どちらにいますか?」


クレハは入港局を尋ねるとすぐさま話を進めたいからと受付に責任者を尋ねる。もちろん、いきなり責任者を出せと言われても出せるはずがない。この点に関しては先ほどの交渉があまりにもうまくいってしまい、考えが及んでいなかったクレハが問題だろう。


「申し訳ございませんが、お約束はされているでしょうか?いきなり、代表者を出せと言われましても、ご対応しかねます。」


「あっ、それもそうですね。すみません、うっかりしていました。私はこの度この街の領主となりましたクレハと申します。船乗りたちの大半がかかると言われているあの病に関して、責任者のかたと話がしたいので、お時間をとっていただけますか?


私はその病気の予防方法を知っています。間違いなく、予防できる方法ですので、これから船舶を用いた産業が活発になるはずです!


ですので、事前に準備をしたいので責任者の方とお話をしたかったのですが、急にお邪魔してしまいましたからね。今日が無理なのであれば、面会が可能な時間を教えて頂けますか?」


しれっと、長年の問題であった船乗りたちの病気を予防できると言ったクレハの発言に受付や周囲の入港局の者たちは黙り込んでしまうのであった。


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