183 二度目の交渉
使者が去ってから何日か経ち、彼はもう一度、クレハの元へとやってきていたのだ。しかし、彼が前回の時と異なるのは今までに比べ、自信に満ち溢れているということだ。
なぜ、彼が今回は自信満々なのか?それは前回、クレハから真相を伝ええられ、その話を皇帝に話したからだ。使者が帝国に帰ってきたことにより、皇帝はてっきり交渉は完了したものと思い込んでいた。
しかし、使者から話を聞いてみればむしろ状況は悪化しているというではないか。しかも、使者に詳しい話を伝えていなかったことにより、交渉相手であるクレハの機嫌はさらに悪くなったと使者から話を聞いた彼はこのままではまずいと、使者に対してこの件を一任することにし、かなりの裁量権を与えたのだ。
そのため、使者本人の意思である程度クレハと交渉することも可能で、莫大な金を動かすことも可能なのだ。そのため、ここまで裁量権を与えられれば、あそこまで首を振って居るクレハであろうと必ず交渉を成功できると考えていたのだ。
「まずは、皇帝陛下に変わりまして、第四皇子の非礼をお詫びいたします。」
前回は交渉から話を進めていた使者だが、事の成り行きを知っている彼は第一にすることとして謝罪に徹したのだ。
そんな彼の意図を組み取り、クレハは謝罪を受け入れる。
「分かりました、ひとまず謝罪を受け入れます。」
「ありがとうございます。」
とはいえ、これは定型的なものということを二人とも承知しており、内面的には全く意味がないことを理解している。
「さて、それでは謝罪を受け入れて頂いたことですし、引き続き、例の件に関して交渉させていただきます。今回は皇帝陛下から全権を与えられています。
そのため、この場で好きなものを言っていただければ必ず用意させていただきます。また、以前におっしゃられていた皇帝陛下の命ということが信用できないということに関してですが、そちらに関しても安心していただければと思います。
コーカリアス王国の国王陛下に皇帝陛下が親書を出され、今回の約束事は国王陛下が仲介人として約束を締結するという話になりました。
つまり、これは皇帝陛下が約束を反故にすればクレハ様だけではなく、国王陛下からの信用も落とすことになります。そのため、国王陛下が約束を反故にすることは絶対にありません。」
「そうですか、まぁ、信用問題はそれでいいとしましょう。ですが、本当に私の欲しいものを用意することが出来るんですか?」
クレハは本当に欲しいものを用意できるのかと不安げな表情をしている。もちろん、本当に心配しているわけではない。クレハからすれば、今回欲しいものはもらえなければ別にそれでもいいのだ。
「もちろんです、必ずや用意して見せましょう。」
しかし、使者も用意できませんでした等、簡単に言えることではないのだ。既に、帝国では治安の悪化がかなり進行しており、皇帝からは早急に飴の販売を始めるようにしてほしいとせかされていた。だからこそ、使者である彼に、皇帝は今回の件に関して全権を与え、交渉がすぐさま進むようにしていたのだ。
「そうですか、それでは安心ですね。では、あそこをもらいましょうか。」
そうして、クレハは使者に自分の望むものを伝えるのであった。
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