181 帝国からの使者がやってきた!
飴の売れ行きも順調に進み、領主としての仕事に専念しているクレハの元に、ルークが大声で駆け寄ってくる。普段であればこのようなことはないのだが、かなり動揺しているようだ。
「オ、オーナー大変です。オーナーにお客様が来ています。」
「私にお客様ですか?いったいどなたでしょうか?」
「そ、それがですね、帝国の使者という方がいらしていまして。オーナーとお話をさせていただきたいと言っているんですが。」
帝国からの使者が来たという事実にかなり動揺しているルークと裏腹に、クレハはあまり驚いてはいなかった。彼女はいたって冷静だ。
「あぁ、ようやく来たんですね。さて、さて、いったいどんな話を持ってきたんでしょうかね?」
こうして、クレハはルークに案内され、帝国から来たという使者の元へと赴くのであった。
「さて、早速ですが、使者さんのお話を聞きましょうか。どのような要件で本日はいらしたのですか?」
「は、はい。本日は、クレハ様が販売なされている飴に関してお話を出来ればと思い、皇帝陛下からの命でこちらに足を運ばせていただきました。」
クレハの堂々とした態度とは裏腹に、使者の人間はビクビクとしている。彼は皇帝から帝都の治安悪化の原因がクレハの策略によるものと説明を受けており、彼女の機嫌を損ねてしまえば非常にマズいことになる、なんとしても、帝国でも飴を販売できるようにしてほしいと勅命を受けていたのだ。
そのため、自分のせいで交渉が失敗してしまえば自分の身がどうなってしまうのかと怯えているのだ。しかし、そんな彼の内情など知ったことではないとでも言いそうな顔でクレハは出口を示す。
「なるほど、うちで販売している飴に関して、帝国でも販売を行ってほしいということですね。ですが、既に帝国には販売を行わないことは決定していますので、ここまで来ていただいて申し訳ございませんが、お引き取りください。」
しかし、彼だってそう簡単にあきらめるわけにはいかない。どんな条件でも皇帝から受けても良いと言われている彼はクレハの望みをなんでも叶えるという条件で帝国でも飴の販売を求める。
「そ、そんな待ってください。どうにか、お願いいたします。陛下から、どんな条件でも良いから帝国での販売を取り付けてくれと命を受けているのです。どんな条件でも言っていただければお飲みいたしますので、どうかうちでも販売を行っていただけないでしょうか。」
そんな彼の熱意を見たクレハは笑顔でこういうのであった。
「嫌です、私は今の生活で満足をしているので特に何かを叶えて欲しいことなどないので条件なども必要ありません。最も、一番の問題はその条件を帝国が必ず守るという保証が全くないということですが。」
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