172 葛藤する皇妃
「な、なんですって!ま、まさか、そんな!」
皇妃はまさか自分が求めていた商品を売っている商会の会頭が自分の息子が帝国から追い出した人間だとは思わなかったのだ。
綺麗になる商品ということもあり、砂糖の話の時には一切興味を見せなかった皇妃も目を血走らせている。
「ど、どうしましょう。もしも、その商会の会頭にお詫びを入れなければ今後、きれいになれる薬を手に入れることが出来ないし。でも、そうしたらこの子の首を差し出さないとお詫びになんてならないし。」
皇妃は初めて揺れていた。先ほどまでは皇帝やテクネー王妃に何を言われても第四皇子が大切だと、二人を言い負かしていたが、第一皇女の話はスルーすることが出来ない。
「どうです、お母さま。これを処刑することによってはじめてクレハに話を聞いてもらうことが出来ると私は考えています。いえ、もしかすればそれでも不十分と言わざるを得ないかもしれませんね。これが行った仕打ちはそれくらい酷いのです。」
皇妃が言い返さなくなったことにより、第一皇女は次第に第四皇子を処刑する流れになっていると確信している。そんな皇妃を見て第四皇子も気が気ではない。
先ほどまでは自分のことを何が何でも守ろうとしてくれていたのだが、今は何も言わずに悩んでいるからだ。
「お、おふくろ、何を悩んでいるんだよ。助けてくれよ!」
そんな第四皇子の声に皇妃も何を考えているんだと、頭を振り、邪念を取り除く。
「そ、そうよ。いくらその薬が大切だからって自分の息子の命に比べたら何も問題ないわ。そうよ、帝国を去ってしまったのは残念だけど、仕方がないわ。今回は縁がなかったと思いましょう。」
「くっ、もう少しだったのに。」
第一皇女はもう少しで皇妃を説得できたのにと苦虫を噛んでいる。しかしながら、第四皇子をこのまま生かしていれば何か問題を起こすのは必然なのだ。
「ですがお母さま!これを生かしていれば今度は戦争まで引き起こす問題を起こすかもしれませんよ。そんなことになれば我が国は世界中の笑いものです。お母さま、母親としてではなく、この国の皇妃として決断をしてください!」
そう言われると、流石の皇妃も考えるそぶりを見せる。確かに彼女は先ほどまで、第四皇子の母親として話をしていたが皇妃としての話をするのであれば第四皇子を生かしておくのは問題なのだ。
母親としては第四皇子を生かしたい感情と皇妃としては処刑してしまいたい感情。この二つがせめぎ合い、ついに皇妃は決断するのであった。
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