169 心を入れ替えようとしたときには大概手遅れ
「なるほど、よく分かった。よ~く分かった。どうやらお前は本当に余計なことしかしないようだな。まったく、面倒になるからシルドラ家の残党どもを見逃してやったが、やはりここは血筋を滅ぼすべきか?」
国王は何か言っていたようだが、最後の部分はあまりにも小さな声で囁いていたため、ここにいる人間には誰にも聞こえなかった。ここにいる人間に聞こえたのは前半部分だけだ。
「それで、お父様。こいつは私達からケーキを食べる機会を奪っただけでなく、テクネー王妃からはクレハとの話し合いの機会を奪い、帝国から貴重な人材を奪いました。
本来であれば、クレハは帝国の貴族だったはずです。彼女が今もこの帝国に残っていれば砂糖の生産を国で全面的に支援出来ましたから、砂糖で周囲の国に有利に政治を進めることもできました。
そう考えれば、こいつはことごとく周囲に不幸をまき散らします。こんな奴は生きているよりも殺してしまうほうが恩恵は高いと思いますが?いかがでしょうか?」
もはや、第四皇子を活かしておく必要性がないというように第一皇女は皇帝に彼を処刑することを進言する。
「ま、待ってくれよ!クレハを連れてくればいいんだろ。て、帝国にクレハを連れてくればすべて解決するじゃないか!だったら今すぐに連れてくるから、処刑なんて勘弁してくれよ!」
第四皇子はこのままでは本当に処刑されてしまうと考え、助かりたい一心から起死回生の一手を思いつくが、やはり第四皇子なだけある。彼が提案した方法は事態をさらに悪化させるだけだったのだ。
「バカたれが!そんなことをすれば取り返しがつかなくなることが分からないのか!これまでは見逃してきたが、どうやら俺が甘やかしすぎたようだな。こんなことをしていればいつか取り返しのつかないことになる。
どうやら、お前が余計なことをする前に対処しないといけないようだな。お前の首をもってクレハに詫びを入れに行こう。それくらいしないと今後、彼女と関係を持とうとするのは不可能だ。砂糖を生産できるような人間とは、つながりを作っておきたい。
この馬鹿のせいで、それができないなどあってはならない。お前とクレハを比べればどちらをとるべきなど、誰が見ても明らかだ。これはお前が起こした問題だ、最期くらい自分で責任をとって見せろ。」
ついには国王も本当に第四皇子を処刑しようとしていることが第四皇子にも伝わり、彼はポロポロと涙を流し始めてしまう。
「待ってくれ、親父。助けてくれよ、これからは心を入れ替えて何でも言う通りにするからさ。そんなことを言うのはやめてくれよ!」
第四皇子は必死に弁解を行うが、皇帝は彼と目を合わせようとすらしない。そんな皇帝の態度に既にどうしようもならないところに自分は着ているのだとすべてを悟り、第四皇子は絶望の淵に立たされる。
そんな彼に相反し、第一皇女とテクネー王妃は満足しているように、うん、うんと頷いていた。しかし、そんな彼を救ったのはある意味、この国で最も発言力が高いと言っても過言ではない人間だった。
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