150 怪しさ満点のお客さん
従者に説得され、ケーキはもう食べられないと分かると彼女は今にも泣きそうだった。流石に、クレハも悪いと思ったのか、彼女には耳寄りな情報を教えてあげる。
「安心してください!この帝国万博が終わればコーカリアス王国にある私たちの商会でこれを売り出す予定です。その時は購入制限などを設けませんから食べに来てください。
ただし、この食べ物は基本的に傷みやすいのでその場でしか食べることが出来ません。ですので、ご自分で食べに来ていただく必要がありますが。」
クレハのその言葉を聞き、彼女は大喜びだ。先ほどの絶望した表情から一点、今では笑顔満点である。
「本当なのですか?お金を出せばこのケーキをもう一度食べることが出来るのですね?」
彼女は確認の意味で再度クレハに質問する。しかし、この質問がいけなかった。
「はい、もちろんですよ。お金を出していただければお売りしますよ。あっ、でも帝国の人間には残念ながら売ることが出来ないんです。」
「へっ?」
突然のクレハの発言に彼女は固まってしまう。それもそうだ、帝国で開かれている万博で帝国の人間には売りはしないなど、どうかしていると思われてもおかしくない言動だからだ。
その発言に彼女は驚いており、護衛の人間に関してはクレハのことを睨みつけている。幸いなことに、クレハはその目線に気が付いていない。
「あの、差支えが無ければなぜ、帝国の人間には売らないのですか?」
「あぁ、実はですね。帝国で開かれている万博でする話ではないのですが、この帝国の貴族に昔、散々な目に合わされたので帝国の人間には売らないと商売を始めた時から心に決めていたのですよ。」
そんなクレハの発言を聞いて次第に彼女は冷や汗をかき始める。明らかに先ほどに比べ挙動がおかしくなっている彼女をクレハは心配する。
「あの、大丈夫ですか?体調が悪いのであれば休まれますか?」
「い、いえ、大丈夫です。あの、そのケーキを売り出す商会の名前というのは何というのでしょうか?」
この万博ではクレハ商会の名前はまだ出していなかった。これはクレハ商会の名前が国外にも広がっていると考えた王妃が例のオリクト王国のテクネー王妃を出し抜くためにわざとクレハに頼んで名前を大々的に発表していなかったのだ。
クレハ商会の存在を彼女が知っていれば毎年のように嫌味いっぱいに絡んでくることがなくなってしまうため、クレハは最終日にクレハ商会の名前を大々的に発表するように王妃と打ち合わせを行っていた。もっとも、個人で聞かれた程度であればその限りではないが。
そのため、クレハは自身の商会の名前を冷や汗をかいている女性に教えるのだった。
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