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142 バカはどれだけ時が経ってもバカなまま

クレハはいきなり部屋を訪れた第四皇子の馬鹿さ加減にうんざりしていた。いくらこの国の皇族だとしても他国の貴族の部屋に許しもなく勝手に押し入ろうとするなんて大問題だ。


しかしながら、残念な彼の頭ではそんなことを思いつくはずもないとクレハはため息をつきつつ、ここを訪れた理由を考えるのであった。


「エピメテ皇子、こんな時間に勝手に部屋に押し入るとは何事ですか?というか、なぜここにいらしているのですか?」


「何を言っているんだ?僕とクレハの仲じゃないか、僕は君を救いに来たんだよ!」


「はい?あなたこそ何をいっているんですか?そもそもどういう仲なんですか?」


クレハの頭では彼が何を言っているのか全く理解できなかった。第四皇子と面識があったクレハは怪訝な表情を浮かべるだけで済んだが彼と初めて会ったルークは今の発言で頭がショートしてしまったのだろう。完全に固まってしまっていた。


「聞いたよ、クレハ。君は僕があれだけ悪いことはダメだって注意したにもかかわらず止めなくて家を追い出されたんだって、本当に君はダメな子だな。でも、最近は改心したと聞いたよ、小さなお店を始めたんだってね。やっと僕のために自立していい子になってくれたんだね。


僕は君が改心してくれることを信じていたよ。今の君なら僕には釣り合わなくて文句を言う貴族たちもいると思うけど、君なら耐えられるさ。さぁ、明日は僕と一緒に帝都に向かうよ。もう一度僕の婚約者にしてあげるからね。」


第四皇子の発言に何とか理性を保っていたクレハでさえもついにはルークのように絶句してしまった。そもそも第四皇子の悪いこととはサンドラが言い張っているだけの嘘を馬鹿な彼が真に受けただけのことだ。


そのうえ、確かにクレハは家を追い出されはしたが正確には自分から家を出たのだ。自立したのもさっさと家を出ていきたかったからで断じてこんなポンコツ皇子のためではない。


ポンコツ皇子のために改心して婚約者に返り咲くために今まで頑張ってきたなどゾッとする。確かに彼は皇族であるためその点に関しては身分的に釣り合わないのは分かる。


しかし、毎日をお気楽に生き、生産性もなくただ金を消費するだけのニートに比べれば領主としての仕事や商会としての仕事を行って自立しているクレハの方がよっぽど人間的に上だ。こんな皇子の婚約者になるなど吐き気がするほどの提案だった。


「なるほど、あなたの言い分はよく分かりました。その提案を聞いたうえでこの際ハッキリ言います。あなたの婚約者になるなど、ごめんです。あなたが取り巻きの貴族達にどのようにそそのかされたのかは知りませんが私にはそんな気はみじんもありません。」


クレハの言葉に第四皇子は理解できないという表情を浮かべていた。彼からすれば皇族である自分の婚約者になるなど大変名誉なことで泣いて喜ぶようなことなのだ。現に彼が社交界に出向けば周囲の令嬢たちからは黄色い声が上がり、話しかけた令嬢などは頬を赤めていた。


幸いなことに第四皇子は皇子であるため、今後の生活は保障されているうえにバカだが顔だけはいいのだ。もちろん、物事を冷静に考えることのできる貴族たちはバカな第四皇子に関わりを持つことすらしない。


しかし、そんな貴族はほとんどいないのだ。大多数は彼のことを皇族という目でしか見ておらず、彼がバカであるなどとはみじんも考えていないのだ。大半の人間の彼の印象はカッコいい皇族だ、令嬢たちから黄色い声が上がっていたのはそのためだった。


「どうしちゃったんだい、君らしくないよ。あぁ、平民である君が皇子である僕と付き合うのはマズいと思っているのかい?そんなことは気にしなくていいんだよ。君は僕の妾になるんだから平民でも関係ないしね。」


第四皇子はクレハのことを事前に調べていなかったのだろう。彼はクレハのことをただの小さなお店をやっているだけの平民としか認識していなかったのだ。クレハのことを貴族であるということすら理解していなかった。


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