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自分から追放された元貴族令嬢ですが許せないので見返します  作者: 創造執筆者
六章 ビオミカ男爵領
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132 天は二物を与えず

サラの抵抗もむなしく部屋の扉が閉じられた後、クレハは笑顔でルークに振り向く。


「さて、ルーク砂糖ができたのよね。」


「はい、以前にオーナーが発見されたテンサイという植物から、前に教えて頂いた製法を行った所、砂糖の結晶が完成しました。それがこちらになります。」


ルークが差し出してきたものは白色の小さな結晶で見た目は砂糖そっくりだった。一口、口の中に入れると瞬く間に溶けだしてしまい、甘みが口の中いっぱいに広がる。それはまごうことなき砂糖である。クレハは以前の豚の角煮を試作した時に考えていた砂糖の生産を成し遂げたのだ。


以前にも述べたようにこの大陸での砂糖の生産は行われていない。これは砂糖の原料となっているサトウキビがこちらの大陸では育たないからだ。そのことに目をつけたクレハは砂糖のもう一つの原料であるテンサイに目をつけた。


こちらの世界で砂糖の原料と言えばサトウキビしか知られておらず、それこそが固定概念である。前世の知識を持っていたクレハ以外にテンサイが砂糖を生み出すとは誰も考えもしなかったのだ。見た目が大根やカブに近いものを使うことによって砂糖を生み出せると誰が想像するだろうか。


クレハはこの大陸で初めて砂糖の作製に成功した人間となったのであった。


「これですよ、完成しています。よくやってくれましたね。」


「僕は何もやっていませんよ、オーナーの指示を作業してくれる方に伝えただけです。それと、紙の製法と同様に砂糖の製法やテンサイの畑は機密にしていますがそれでよかったですか?


こちらの大陸で砂糖の製法を確立するということは砂糖を独占できますからね。こんな重要なことがよその商会に漏れてしまえば大損害ですから。」


「そうね、場合によっては紙の製法よりも機密は高いかもしれないわね。早めに動いてくれてありがとう、とても助かったわ。何だか文官としても頼もしくなったわね。」


「えへへっ、そうですか。オーナーの役に立てているのであれば僕も嬉しいです。それにしても、見た目は大根のようなテンサイが砂糖の材料になるなんてよく知っていましたね。オーナーは天才です!」


ルークは照れながらもクレハに褒められてうれしそうな表情を浮かべていた。それとともに、クレハに対して何か求めるような表情を浮かべていた。しかし、それに気づくクレハではない。


「さて、砂糖ができた今、スイーツなんて何でも作ることができます!王妃様に提供する試作を考えるとともに販路を広げていきますよ。まずは、試作を作っちゃいましょうか。ルークには味見を任せてもいいですか?」


ルークの発言したことには全く気付かずに話は砂糖を使ったスイーツの試作へと進む。


「も、もちろんですよ、僕は甘いものにはうるさいですからね。いっぱい美味しいスイーツを作りましょう!」


(あれ?ドルクスさんの話だと会話の途中にギャグを仕込むことによって笑いが生まれて話が盛り上がるって聞いたんだけどな。テンサイと天才をかけたんだけどスルーされてるし!う~っ、はずかしい。)


ルークは最近クレハと話す機会がめっきり減っていたためドルクスに相談を行っていた。そこでドルクスからアドバイスを受けた結果がこれだったのだ。文官としての才を授かったドルクスであったがコミュニケーションの才は授からなかったのだろう。


お陰でルークにとっては赤っ恥である。この場合、クレハに気づかれなかったことが不幸中の幸いであろう。もしも気づかれていればどれだけ気まずい空気が流れていたか想像することもできない。


ルークが一人そわそわしながら恥ずかしげにしていたことにクレハは気づいていたがその理由までは理解していなかった。


そんなルークをしり目にクレハは砂糖を用いてさらなる商会の拡大計画を考えていた。しかしながら、クレハはまだ、大陸でただ一人、砂糖の製造に成功したという事実を正しく理解していなかったのである。


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