101 見た目がこんなでもピュアなんです
「とりあえず話を始める前に自己紹介をしましょうか。私はこの街の領主であるクレハ・ビオミカと言います。そしてこちらはルークと言います。あなたの名前を伺っていいですか?」
「ああ、俺、いえ私はプエストです。この度は大変申し訳ございません。」
「もう謝らないでください。プエストさんですね、よろしくお願いします。」
そうするとクレハはこのようなことになった原因を話し始めた。
「ということなんですよ。本当にごめんなさい、私の配慮が足りませんでした。」
クレハは本当にプエストに申し訳なく感じており、誠心誠意、頭を下げ謝罪した。
「謝らないでください、もとはと言えば俺が領主様に無礼なことを言っていたのが悪いんですから。」
「それでは謝罪はここまでにして、警備の話を行ってもいいですか?とりあえず、プエストさんにお願いしたいのは、この街の主要産業となる製品を作製する製造施設を侵入者や危害を加えるものから警備してほしいのです。製造施設は重要な施設となるため、信頼できるような方に働いてもらいたいのです。どうかお願いできないでしょうか?」
プエストはしばらく考えると、真剣な顔をし、クレハにあることを尋ねる。
「その、主要産業が成功すればこの街は貧しさから解放されますか?」
プエストにとってはそのことが何よりも大切であった。彼は今までも、貧しさ故に飢えていた人たちをたくさん見てきた。そのため、街全体が裕福になることは長年の望みでもあったと言えた。
「それは保証します。私の考えていることが成功すれば間違いなく、この街は王国一の裕福な街になるはずです。ですが、この技術は秘密にしてこそ、成功するのです。そのため、買収されることや、見張りを怠って侵入者を許すことになれば瞬く間に失敗します。ですから、絶対的に信用できる人材が必要なのです。」
「確かに領主様の言い分は分かりますが、俺とあったのは最近ですよね?どうして、そんな俺に話を持ち掛けてきたのですか?」
プエストは最近、出会ったばかりの自分にどうしてそのような大切な仕事の話をしたのかと不思議に思っていた。プエストの知っている貴族であれば平民のことなど信用せず、そのような仕事は兵士たちにすべて任せていたからだ。
「あそこまで、この街の住人たちのことを考えていたのに、裏切りなどをするはずがないと思ったからですよ。あんな風に他人のことを思うことができる人はそれだけで信用に足ります。」
「そんなことを貴族様に言われたのは初めてですよ、その、本当に俺なんかでいいんですか?」
プエストが知っている貴族とは自分たちのことを道端に転がっている石ころ程度にしか考えていないようだった。
そのため、自分のことを信頼しているなんて言う言葉をかけられたのは初めてで、ガタイに見合わず、感動で心を震わしていた。心なしか、先ほどから彼の声が震えている。
「あなただからいいんですよ、それに信用できる人たちも何人か用意できるのですよね?」
「もちろんです!確実に信用できる奴らなら何人かいます。そいつらも、俺が説得すれば喜んで働いてくれるはずです。もともと、その日暮らしの仕事しかしてないので、継続的に雇ってもらえるのなら進んで引き受けてくれるはずです!」
「それでは決まりですね、詳しい話は係りの者からお伝えしますので、これからよろしくお願いします!」
既に、ドルクスからは紙の製造に必要な作業員と施設は用意できていると連絡が来ている。この短時間で良く用意できたものだ。クレハはドルクスの予想外の有能さに感心していた。さて、これですべての準備は整った。あとは製品を販売するのみである。
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