地球照 月の欠けている部分が淡く光って見える現象
俊介と舞からの連絡が途絶えてしまい、晶の兄、慶之介は自らが地上へ降りた。
晶の暮らすマンションの部屋に着くと、部下たちは方々にわかれて、俊介たちが眠っているのを発見した。
「俊介、起きよ」
俊介は、強い力で眠らされていた。
慶之介はすぐに、鬼の力だと見破る。
慶之介が力を使って、俊介を起こすと、彼は頭を押さえてしばらく呆けていた。そして、慶之介の顔を見ると青ざめた。
「殿下…なぜ、ここに?」
「うぐいす姫の仕業か」
「姫さまは?」
「ここにはおらぬ」
「そんな…」
瑠稚婀と舞もようやく目を覚ました。
「瑠稚婀」
慶之介の声に、瑠稚婀は頷いた。
「鬼が目覚めた。鬼の気配ならたどれると思う」
「瑠稚婀様、お願いいたします」
舞が涙目で懇願した。
「舞、案ずるな、姫はそなたが悲しむのが一番堪えるのだからな」
「は、はい…」
舞は涙をこらえようとしたが、次々に溢れてきて困った。
「晶さま、わたくしの手を離さぬとお約束いたしましたのに、なぜですの?」
問いかけたが、晶に届いたか自信はなかった。
目を閉じて気配を手繰っていた瑠稚婀が目を開いた。
顔つきが険しい。
「おかしい…」
「どうだ? 婀姫羅は見つかったか?」
慶之介がたずねると、瑠稚婀は首を振った。
「気配がありませぬ。姫も鬼もおらぬ」
「そんなはずはない」
瑠稚婀は唇に小さな手を添えて考えた。
「わらわは新月には呼ばれるはずだったのに、鬼を抑え込むために早めに呼び出された。何か考えがあったのであろうか」
「姫さまは穢れを吸ったために、自分では鬼を抑えられないと思ったようです」
「そうであったな」
――穢れのために、わらわを呼んだ。
慶之介が顔をしかめる。
「婀姫羅は、ハンターと接触するつもりか」
「かもしれぬ」
「陽一を探し出せっ」
慶之介が叫んだ。




