月の使者
◇◇◇
俊介と連絡ができなくなってしまった月の騎士たちは、すぐさま晶の義兄である慶之介に報告をした。
不審に思った慶之介は自らが地上へ降りることにした。
晶の暮らすマンションの部屋に着地するなり慶之介は、俊介たちが倒れているのを発見した。
「俊介、起きられよ」
俊介たちは眠らされていた。すぐに鬼の力だと見破る。
慶之介は、俊介の肩を揺すると、すぐに術は解けるようになっていたのだろう。ややあって目を覚ました。
頭を押さえてしばらく呆けて見えたが、慶之介の顔を見ると青ざめた。
「殿下……。なぜ、ここに?」
「そなたと連絡が取れないと報告を受けた。気になって様子を見に来たのだが……。これは婀姫羅の仕業か?」
「姫さまは?」
「ここにはおらぬ」
「そんな……」
流稚杏と舞もようやく目を覚ました。
「流稚杏、そなたまでやられたな」
慶之介の声に流稚杏は軽く頭を振った。
「殿下、わらわの失態じゃ」
「気配をたどれるか?」
「うむ。鬼の気配なら、たどれると思う」
流稚杏の顔は険しい。舞が拝むように手を合わせた。
「流稚杏様、お願いいたします。わたくし、不安でたまりません」
「舞、案ずるな、姫はそなたが悲しむのが一番に堪えるのだからな」
「は、はい……」
舞は涙をこらえようとしたが、次々と涙が溢れてきて困った。
「晶さまはわたくしの手を離さぬとお約束いたしましたのに、なぜですの?」
問いかけたが、晶に届いたか自信はなかった。
そのそばで、目を閉じて気配を手繰っていた流稚杏が目を開いた。顔つきが険しい。
「おかしい……」
「どうだ? 婀姫羅は見つかったか?」
慶之介がたずねると、流稚杏は首を振った。
「姫の気配がない」
「そんなはずはない」
流稚杏は自分の唇に指を添えて考えた。
「わらわは鬼を押さえ込むために、姫から呼び出された。何か考えがあったのであろうか……?」
「姫さまは穢れを吸ったために、自分では鬼を抑えられないとおっしゃっていましたが……」
「そうであったな」
――鬼が出てこようとしたら、わらわなら分かる。
流稚杏の言葉を聞いて、慶之介が顔をしかめる。
「おとりか……」
「え?」
慶之介の言葉に俊介が顔を向けた。
「婀姫羅は最初からそのつもりだったのだ。流稚杏を呼び寄せ皆を安心させようとしたのだろう」
「つまり、姫様は最初から計画を立てて?」
「ああ、裏をかかれたと言うことだ。流稚杏がいることで皆を油断させておいて、自らハンターと接触するつもりなんだろう」
「どういう意味ですの?」
「つまりじゃ……」
流稚杏が苦しそうに言った。
「わらわがおれば、鬼を抑えられるという言葉を信じて皆は姫とわらわを信じる。その信じる心の隙をついて姫は自由に動けるんじゃよ」
「陽一を……探し出せ」
慶之介が唸った。




