縁生(えんしょう)
晶と舞は、駅で陽一たちと分かれてマンションに向かって歩き始めるとすぐ後ろから俊介が現れた。
どうやら今日はずっと見守ってくれていたらしい。
時刻は昼を過ぎている。すっかりお腹が空いていた。
晶が軽くあくびをして目をこする。舞も口数がなく、少し疲れているようだった。
「姫さま、疲れたのですね。水の中で泳げばそうなります。その……次からはプールとやらはお断りなさった方がよいかと思いますが」
「そうだの。水の中で襲われたくはないな」
晶は戯言のつもりで言ったが、いつ、何が起きるか分からない。
「腹が減ったの」
「おにぎりを作っております。それを召し上がられたら横になられるといい」
今日は午前中に待ち合わせしたので、俊介は少し早起きをしてくれたらしい。
舞の言葉ではないが、本当に俊介がいてくれて助かる。
マンションについて、三人は遅めの昼食を摂ると晶と舞はそのままベッドで昼寝をすることにした。
俊介は片づけをすませると、マンションの部屋全体に結界を張った。
食器を片付けて自分もソファに座る。そのうちに自分もウトウトし始めた。
プールとやらは自分には刺激が強すぎた。
殿下には黙っておかねば、と思いながらいつの間にか彼も寝入ってしまっていた。
それから数時間後、晶はよく眠っていた。
机の上に置いてあったスマホがブーブーっと振動してその音で目が覚めた。
体を起こしてスマホを見ると、さっそく朋樹からのようだった。
今何時だろうと窓の外を見ると、すっかり薄暗くなっていた。気づけば夜になっている。
リビングの方からは俊介が食事の用意をしているのだろう。カチャカチャと音がしていた。
晶はスマホの内容を確認すると、晶の顔の写真が欲しいとあった。
「我の顔?」
晶は不思議に思いながら、スマホを持って部屋を出た。
キッチンでは俊介が野菜を洗っていた。舞はまだ寝ているらしい。
「俊介、朋樹が我の写真が欲しいそうじゃ」
俊介はタオルで手を拭くと晶の方へ近寄ってきた。
「そのスマホで撮ればよろしいのでは?」
「そうじゃな」
晶がそのままスマホを俊介に渡す。
俊介がスマホのタッチパネルをトントンと軽やかに弾き、晶にカメラを向けた。
「姫さま、撮りますよ」
「うむ」
カシャカシャと数回音がする。
「見せてみよ」
晶は手際よく画面をスクロールして画像の確認すると、あっという間に朋樹に送った。俊介がそばで作業を見ている。
「姫さま」
「ん?」
「俺もその画像、見てもいいですか?」
「かまわぬぞ」
俊介は、晶が写っている画像を見てため息をついた。
「どうした、ため息などついて」
「いえ……何でもありません」
含んだ言い方をするので、晶は眉をひそめた。
「何かおかしな写真でもあったかの」
「そうではなくて、姫さまは愛らしいので……。殿下もきっとご覧になられたいだろうなと……」
「そうか」
晶は苦笑した。
「しかし、なぜ、朋樹は我の写真が必要なのじゃ?」
と首を傾げた。
その隣で俊介は、姫さまは隙がありすぎる……と別の意味で息を吐いた。




