表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/95

けわい(気配)



 晶は、陽一の気配をさぐることができる。

 二人はすぐに見つかった。

 流れるプールのそばにいて、晶たちを探していたようだった。

 陽一と目が合うと、なぜか睨まれた。

 晶は足がすくんだ。


 どうしてだろう。せっかく舞と二人きりにしてやったのに、なぜ、睨まれるのか。


「晶さまっ」


 舞が飛びついてきた。


「泳がなかったのか?」


 舞の体はすっかり乾いていた。


「晶さまが心配で…」

「大丈夫だと申したのに」

「晶ちゃんがアイスクリームを食べたいって言うから、食堂に行こうよ」


 朋樹が言って、四人はプールから少し離れた食堂へ向かった。


「流れるプールは楽しかったぞ」


 晶が言うと、舞は首を振った。


「わたくしは少し疲れました」

「そうか」


 食堂は人で賑わっていた。

 カウンターに行き、晶は抹茶バニラアイスを他の三人はソフトドリンクを注文した。

 晶の隣に朋樹が座り、話しかけている。晶は軽く頷いて、朋樹に笑いかけた。

 陽一は舞と話をせず、朋樹と晶の様子を見ていた。


「アイスクリームが好きなんだね」


 朋樹の声が耳に入って来た。


「好きじゃ」


 晶が髪をかけ上げるしぐさを見ると、陽一はどきりとした。

 さっと目を逸らして、舞を見た。


「舞ちゃん、泳ぎに行こうか」

「せっかく来たのだから、舞も泳ぐといいぞ」


 晶が提案すると、舞はしおらしく頷いた。


「はい」


 その後、プールで少し遊んだ後、四人は帰ることにした。

 駅に着いて、朋樹が家まで送ると申し出た。


「ここでよい」

「夜、メールしてもいいかな」

「かまわぬぞ」


 晶が頷くのを見て、陽一はいらいらした。


「俺も舞ちゃんと連絡を取りたいんだけど」

「陽一さま、わたくしも晶さまと一緒に使いますので、ご連絡下さいませ」

「でも…」

「我は人の物を見る嗜好しこうはない」


 晶がそっけなく言ったが、陽一は憮然としたままだった。


「何だ、何を怒っておるのだ?」

「べ、別に怒ってないけど」


 どきりとして、陽一は晶と目を合わせられなかった。

 まさか晶に、朋樹と仲良くするな、などと言えるはずがない。


「じゃあな」


 陽一は朋樹の肩を突いて促し、晶たちと別れた。

 二人が見えなくなると、朋樹は大きなため息をついた。


「晶ちゃん、女神さまだ…」

「はあ? どこが」

「まあ、お前は舞ちゃんを見てればいいんだよ」

「朋樹、お前、うぐいす姫に会いたかったんだろ」


 陽一がイラついて言うと、朋樹はにこっと笑う。


「うん。でも、もういいんだ」

「えっ」


 朋樹の変わりように陽一の方が驚く。


「どうしてっ」

「僕はきっと、晶ちゃんのような女の子を探していたんだと思う。じゃあな」


 朋樹はそう言うと自分の家に帰った。

 陽一は少しの間立っていたが、ようやく歩きだした足取りは重かった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ