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◇◇◇
先程からいらいらしている陽一の穢れを吸ってやろうと思ったのだが、まさかハンターがここまで力をつけていたとは。
朋樹が家まで送るよと言ってくれたので、晶は甘えることにした。
晶はじくじくする手をひた隠しにして歩き始めた。
陽一が触れた手が大変な事になっている。
朋樹は、晶の様子が変わったことに気づいて心配してくれたがばれないよう黙っていた。
できるだけ急ぎ足で、以前暮らしていたマンションの方向へ向かった。
「舞ちゃんに会いたいけど、もう遅いから明日にするよ」
マンションのエントランスの前で陽一が残念そうな顔をした。すると、隣にいた朋樹が出し抜けに声を出した。
「ねえ、晶ちゃん、明日プール行かない?」
「プール?」
晶はプールに行ったことがない。よく理解できずに了承すると、朋樹が飛び上がって喜んだ。
「やったあっ」
ガッツポーズをする姿に思わず笑ってしまった。
「朋樹は面白いの」
晶が笑うと、朋樹の顔が赤くなった。
「明日、朝の十時頃に迎えに来るから」
晶は、そう言えばここに住んでおらんのじゃった、と思いだした。
「待ち合わせは最寄り駅がいい」
「うん、いいよ。ありがとう」
陽一の友達は素直じゃの、と晶は思いながらちらりと陽一を見ると、彼は少し怖い顔でこちらを睨んでいた。
我は、何かまずいことを言ったか?
なぜ、陽一が睨んでいるのか分からなかった。
「じゃあ、僕たちは帰るから」
「……舞ちゃんも行くのか?」
陽一が急に口を開いたので、ハッとして陽一を見た。
「おそらく行くであろう。舞は我の行くところには必ずついて参るからの」
「じゃあ俺も行く。いいだろ? 朋樹」
「当たり前だろ、何言ってるんだ?」
朋樹が不思議そうに聞いたが、陽一は黙っていた。朋樹が手を振って帰ろうとしたので、晶も左の手で振り返した。
二人の姿が見えなくなってから晶は右手を見た。
陽一の手に触れた右手が黒く焼け焦げている。
晶は目を閉じると、落ち着けと自身に言い聞かせた。心臓が痛いほど鳴っている。
深呼吸をして左手で自分の右手にそっと触れる。
ただれた細胞が再生を始めた。みるみるうちに元の白い手に戻った。
ふっとため息をつく。
陽一はハンターと接触している。しかし陽一は相手をハンターだと認識していない。
晶は顔を上げて空を見上げた。星がまたたいている。
鬼よ、聞こえておるだろうの。我々が還る道をようやく見つけたぞ――。
晶のひとりごとを聞いたのは鬼のみであった。




