Lesson1
プロクスがアブソルトジャスティアへとやって来て早一カ月、彼は宮廷兵団の一員となるために今現在軍事学校へと通っていた。
彼の通っている軍事学校用の制服は、ゴーストホワイトの長袖シャツと土器色のブーツトップを着用し、その上から黄土色のスエードベストを羽織ったもので男女共通だ。
ただし、戦闘訓練時はスエードベストの変わりに鉄の胸当てを装備しなければならない。
しかし、軍事学校に入るのにも様々な試練が必要だ。
一つは、試練を受ける者が危険思想の持主でないかの確認をするため、三部門の教官と魔導師から審問を受けること。
だがプロクスに危険な思想は特に無く、問題なくクリア。
一つは、その者が軍事学校を卒業出来る程の強靭な肉体を持っているかの試練。
騎士部門、兵士部門からそれぞれ二人ずつ生徒が用意され、彼らと木製の剣で戦いに挑み、どれくらい保つのかを確認するというもの。
魔物の相手をしたことのあるプロクスにとってはなんて事は無い。
四人の生徒達はプロクスの闘志に負けて瞬く間に戦意喪失していき、無事合格。
そして最後の一つは、その者の勇気が試される試練。
妖術師の創りだした魔物の幻影と戦うこと。
幻影された魔物は泥水晶――ゲンマ・リームスであった。
幻影とはいえ魔物の強さはほぼ同程度。しかも人体に影響を与えかねない程の痛みを味わう事になる可能性もあり得る。
そもそもプロクスにとって、泥水晶の幻影を見ると言うことは、アニマ・ケルサスの一員――斬鬼ロセウムが目の前で捕食されるトラウマを想起させるのだから、堪ったものではない。
それでもプロクスは試練用に用意された全長百五十センチメートルのアイアンソード一本を両手に装備して構え、飛び掛かってくる泥水晶の赤核のみを冷静に狙って断ち斬り、難なく倒していた。もちろん判定は一発合格。
その三つの試練を難なく乗り越えた彼だからこそ、こうして軍事学校を全生徒二百人の内から七番目という好成績を残しているのである。
○
――ああ、次は歴史の授業か……早く体を動かしたいなあ。
軍事学校兵士学部第四教室の一番左前端の机椅子に座っていたプロクスは、窓の外で木剣を何度も振っている一人の男性生徒をぼんやりと眺めながら、そんな事を考えていた。
「ほいほーい、みなさんの大好きな歴史の授業始まるんで席に座りましょうねー」
小鳥のさえずりの様に高く、少し間の抜けた声が聞こえてプロクスが振り返ると、そこには幼子ぐらいの背丈をして、黒いキラキラ星柄の三角帽子を被り、紺色のローブを纏った少女の姿が、活き活きと明るい笑顔を振りまいていた。
「おっ、今日はマナちゃんの授業なんだー。よろしくー!」
「おおう、ちゃんとわたしの授業を寝ずに聞けよなー。それと、もしも寝てたらこのフラムで焼いちゃうぞー!」
一人の軽そうな男生徒にマナちゃんと気安く呼ばれた少女は、明るく笑いながらも指先から、銅貨一枚サイズの火の玉をポッと燃え盛らせる。
「ま、マナちゃ……先生ー、フラムだけは本当にやめてください、お願いします」
突然敬語になる軽い男生徒が頭を下げてもマナは笑顔を絶やさなかったが、指の炎だけはパッと消していた。
「あははーっ、冗談ですよウィリデくーん」
「あ、あはは……ですよねー」
「その代わり、先生を子供扱いとかしましたらー……もう何が起こっても知らないですよー?」
とつぜんマナの鋭い眼光がウィリデを睨むと彼はだらだらと汗を垂らし、座っている席で無言のまま縮こまってしまう。
だけどもマナは何事もなかったかのように眩しすぎる程に満面の笑顔を作り、話の流れを戻す。
「はいっ、それじゃあみなさんも一生懸命歴史の勉強して、魔物をさくっと倒せる様な伝説の勇者になりましょうねー」
「歴史を学んだだけで強くなれるわけないじゃん……」
プロクスのその一言で、マナ以外の全生徒が必死過ぎる顔で一斉に注目した。
ある者は“空気読めよバカ!”という視線に、“あ、あんた死ぬ気ー!?”と冷めた視線ばかりであったが、その中でもこげ茶色の長い髪をなびかせる気弱な少女ただ一人だけが、彼に熱い視線を送っていた。
「ははー……さてはプロクス君、キミって歴史の勉強が苦手なんじゃないかなー」
だがマナはとくに怒ることもなく、飄々とプロクスにそう問いかける。
「そんなことないよ先生、だって俺歴史ならもうだいぶ知り尽くしているし」
「ふーん……へえー……そうなんだー?」
そう言いながらマナは、じとーっとした目付きをプロクスに向けていた。
「だからさ、俺としてはもっと戦闘訓練したいんだけど……」
「わかりました! プロクス君がそこまで言うんだったらー、
今日は趣旨を変えて特別授業をしてあげましょー」
「ほ、ほんとか!?」
「かわいい生徒のためですよー」
「やった!」
プロクスは思わず右拳を握りしめ、爽快に天高く掲げた。
「せ、先生ー! あたし、先生の歴史の授業受けたいでーす!」
「お、俺も俺も!!」
「オレもーっ!」
だが他の生徒達は、飄々としているマナに対してどことなく嫌な予感を感じ、どうにかしてマナに歴史の授業をさせようと必死に訴えかけていた。
「うん、安心しなさいキミ達ー! 特別授業を受けるのはプロクス君一人だけですからねー!」
「な、なんだ……」
「よ、良かったあ……」
「マジ心臓に悪いわ……」
安心してざわつき始める十八人の生徒達に、マナは絶えない笑顔を向ける。
「はーいみなさーん! 静かにしないと先生、リガートゥルしちゃいますよー!」
その一言でマナの背後に無数の真っ黒な触手が蠢き、それを一瞬でも見た十八人の生徒全員がしーんと静まり返ってしまう。
すると何事もなかったかのように触手は消え去り、はたまたマナは何事もなかったかのように笑顔で話を続ける。
「さてさてー、歴史大好きな勉強家のみなさんのためにー、代わりにアルキュミア先生を呼んできてあげますよー!」
アルキュミアという名前を聞いた生徒達の額から嫌な汗がぶわりと漏れだす。
「そ、それはちょっと……」
「か、勘弁を……」
「あ、あたしちょっと気分が……」
そんな中、先ほど熱い視線をプロクスに送っていた気弱な少女が手を挙げた。
「せ、先生!」
そんな気弱な少女の大声を聞いて、生徒全員の目線が彼女に注目してしまう。
「ひっ……」
だが、プロクスとは違って肝が据わっていない少女にとって注目は酷く息苦しいものであり、そのまま黙って俯いてしまうしかできなかった。
「こ、こらこらみんなーっ! そんなにスマラグダさんに注目しちゃ可哀相でしょー! ダメですよホントー!」
マナも俯く少女の姿を目の当たりにして、先生らしくみんなに注意を呼びかけていた。
「あ、すいません先生……」
「ごめんねスマラグダー……」
「あっ、えっとその……先生……」
「はいはい、なんでしょうかー」
「私もその……特別授業をゲントさんと一緒に……」
それを聞いた生徒全員が再びスマラグダに注目し、今度は隣にいた彼女の友人である女生徒が必死にこういう。
「や、やめときなってスマラグダ! 下手するとケガだけじゃすまなくなるよ本当に!!」
「あの……でも私も……強くなりたいし……」
「ねえっ、先生もなんとか言ってあげてくださいよ!」
まごまごするスマラグダを一先ず置いて、女生徒は必死にマナに問い詰める。
「うーん……先生困りましたねー……スマラグダさんの意志は固そうですけどー……」
「わ、私……ケガしても平気ですから!」
それでも必死になるスマラグダを横目で見て、女生徒は彼女の気持ちを察した。
「……そっか、あんたがそこまで言うなら……もうあたしには止められないよ」
「ファキア……ごめんね……我がまま言って……」
スマラグダの友人――ファキアは、スマラグダの右手を両手でギュッと握り締める。
「……ケガだけは絶対にしないでね」
「うん……ありがとう……ファキア」
「おおー、なんて美しい勇情愛でしょー……先生、感動して涙出ちゃいますーっ!」
感動して若干瞳を潤わせたマナは頬を真っ赤に染めていた。
それからファキアは、キッとプロクスを睨み付けながら彼の顔を指さす。
「プロクス! あんたスマラグダが先生の特別授業で少しでも怪我したら、
このあたしが絶対に許さないからね!」
「ちょっ、ちょっとファキア……!」
突然ファキアに怒鳴られても、プロクスは動じる事無く真剣な眼差しを彼女に返す。
「ああ、俺が責任を持ってスマラグダを護るよ……この身に代えてもさ」
あまりにも真っ直ぐにそう言われたファキアは、思わず彼から目を逸らしてしまう。
「……ふ、ふーん……それだけの覚悟があるなら……あんたに任せても大丈夫そうね」
「あ……あわわわわ……」
だがプロクスの言葉を聞いて一番驚いていたのはスマラグダであった。
――護る……今護るって言ってくれた! ゲントさんが私を護るって……!
彼女の顔は真っ赤に染まり心臓もばくばくと脈打って止まらず、彼の言葉をそう何度も思い返しては、頭をくらくらとさせていた。
「よろしくな、スマラグダ」
「はうっ!?」
プロクスがスマラグダに右手を差し伸べると、彼女はびくんと体をはねさせて縮こまりながら震えてしまう。
「ん? 大丈夫かスマラグダ、もしかして寒いのか?」
「あっ……ち、違うの!」
なんとか鈍感なプロクスに心配させまいと、スマラグダは彼の差し出した右手を両手で力いっぱい握りしめたものだから、彼の右手からゴリゴリゴリっと嫌な音がする。
「あいだだだあああ!!!」
スマラグダの握力は予想以上に強く、痛がるプロクスから彼女が急いで握る手を緩めた。
そしてプロクスは思わず身を捩らせながら床に倒れ伏せてしまう。
「あっ……ご、ごめんなさい私ったら……!!!」
床に倒れて右手を押え痛がるプロクスに、スマラグダは申し訳なさそうに何度も頭を下げていた。
「あ、プロクスごめーん。言い忘れてたんだけどこの子、物凄い力持ちだから気を付けてねー」
ファキアはすっとぼけた感じでペロリと舌を出しながら、プロクスに遅すぎる忠告をしてくれた。
「お、遅いよ……わざとだろ……」
「さあねえ?」
「あ、あのー……盛り上がってるところ悪いんですけどー……別に先生、スマラグダさんを怪我させるほどひどい授業はしませんよー?」
だが生徒達は三人の修羅場的なやりとりにすっかり盛り上がってしまっていたせいで、マナの話など聞いてすらいなかった。
「んー……まあいいかなー。じゃあ二人ともーっ! 自分の持ってきた武器を用意してきなさーい!」
「はい!」
「わかりました……!」
ざわつく生徒達の中からプロクスとスマラグダの大きな声が、マナの耳元へと届いていた。
「それと今から十分後、訓練広場に集合することー! わかりましたかー!?」
――もちろんです!
そんな息の合った二人の声を聞いて、マナは安堵する。
「それではわたしはアルキュミア先生を呼んでから訓練広場に向かいまーす!」
それだけ言い残すと、マナは教室を出ていってしまう。
プロクスとスマラグダも、なんだかんだで他の生徒達から愉快に見送られながら教室を後にした。
○
ここは中世の闘技場コロッセオを模した様な形に作られた訓練広場で、地面いっぱいに散らばる小岩や石ころの上に、満遍なく砂が敷き詰められていた。
マナから言われた通りにプロクスとスマラグダは、それぞれ自分の武器をこの訓練広場まで持ってきていたが、訓練用の鉄の胸当てまでは用意できなかったので、スエードベストを着たままであった。
「前から思ってたんだけどスマラグダの……大きいな……ものすごく……」
じろじろと見てくるプロクスの視線に、スマラグダは頬を真っ赤に染めてしまう。
「は……恥ずかしいです……」
「はは、素晴らしい事じゃないか。そんな大きな物なんてさ……なかなか使いこなせないって」
「で、でも……こんな物さらけ出してたら……バカみたいに思われそうで……」
プロクスはスマラグダの両肩に手を置いて、真剣な眼差しで彼女の瞳を見つめていた。
「バカみたいなもんか! それだけ凄いってことなんだから自信を持っていいと俺は思うぞ」
「ゲ、ゲントさん……!」
「だからさ、スマラグダ……」
「は、はい……」
真剣な表情のプロクスの顔を見たスマラグダは、ごくりと唾を飲みこむ。
「先生が来るまでにさ……俺と一回……真剣勝負しよう!」
「はっ、はい!?」
非常に驚いているスマラグダを無視して、プロクスはキラキラと目を輝かせながら続ける。
「だってなんかさ、そんな馬鹿みたいにでかい大剣見てたらさ! 興奮しちゃうじゃないか!」
スマラグダの持ってきた全長五メートルはある超大型の片刃剣――処刑人の大剣を間近で見たプロクスは本当に活き活きとしており、むしろ今すぐにでも戦いたいんだと心躍らせていた。
「あの……でも私……ゲントさんに刃を向けるなんて……」
「大丈夫! 俺はとろそうな攻撃を喰らう程、そんな弱くないから!」
敢えてスマラグダに戦意を持たせようと挑発するプロクスであったが、特に何も気にしていないという風にスマラグダはまごまごしていた。
「ですが……」
あまりにうろたえるスマラグダを前にしたプロクスは、どうしても彼女に戦意を持ってもらうために、とある手段を考えた。
「……ごめん、スマラグダ!」
むにゅりと、プロクスは一言謝りながらスマラグダの左胸を右手で鷲掴みしていた。
「えっ……?」
――うっ……思った以上に大きくて柔らかいし……びっくりした……。
プロクスは鷲掴みしているスマラグダの左胸を思わず見たくなってしまうが、それは流石に可哀相だと思って目だけは絶対に開かなかった。
「あ……ああ……わああああああああ!!!」
それからやっと、今自分が思い切り胸を鷲掴みされている事に気付いたスマラグダは血相を変えて右手に握っているエクスキューショナーを片手で力任せに薙いだ。
そのとんでもない重さの風圧に気付いたプロクスは彼女の左胸から手を離し、即座に後ろへ跳躍した。
「うわっ、あぶな!?」
「ひどい……ひどいですいきなり!!!」
「や……やっと戦意を表してくれたか」
むしろ殺意にしか見えない彼女の豪快な一振りを目の当たりにして、プロクスは武者震いしてしまう。
「あなたなんて……あなたなんて……もうどうなっても知りませんからー!」
それからスマラグダは両手でエクセキューショナーを力強く握り締めると、自分の眼前で地面に付けずに剣先を上空に向けて構えた。
「うわあ……本当に馬鹿デカいな……」
スマラグダの二倍程ある全長に、思わずプロクスは嫌な予感を頭に過らせる。
「さっきから馬鹿、馬鹿と……あなたの強さを示してくれませんと……
私、絶対に許しませんから……!」
「そ、それはスマラグダを馬鹿にしたんじゃなくてな……ちょっと聞いてる?」
もう聞く耳持たずのスマラグダは、強く握ったままエクスキューショナーの切っ先を背後の地面に落とし、両腕に力を溜めていた。
「はあ……はあ……はああああああ!!!!!」
するとスマラグダは少し呼吸を整えた後、エクスキューショナーを力いっぱい前面へと振り落とした。
エクスキューショナーが地面に振り落ちたその瞬間、地面はかなり深く抉れ、砂の下に敷き詰めていた砂利や小岩が、半径五メートル程度の周囲で爆弾のように飛び散ってしまう。
「あ痛たたた!!」
プロクスはすかさず勇者の剣を抜いて右手側にかわしながら砂利や小岩の爆弾を剣で防いでいたが、あまりにも範囲が広すぎて剣で防いでいた部分以外を諸に浴びてしまう。
「な、なんて剛腕だ……!」
砂利や小岩の雨を食らったプロクスはダメージを受け、少し怯んでしまう。
そこでスマラグダは地面にめり込んだエクスキューショナーをずぼりと抜くと、今度はプロクスの胴体目掛けてすかさず左斜め上に大きく振り斬った。
「わあああああ!!!」
「うおっ!?」
怯んで動くことができなかったプロクスは、伝説の剣でエクスキューショナーを受け止めようとしたが、あまりにも重たい衝撃によって剣で受止めたままの状態で背中から弾き飛んでしまう。
「やっ、やば! ぜ、全然止まらない……!」
しかも弾き飛んだ彼の体は全然止まることなく、このままでは訓練場の壁際へ激突してしまう程であった。
――このままじゃ壁に激突する……そうなれば致命傷は免れない……っ!
そう思ったプロクスは伝説の剣を地面にグサリと突き刺して、どうにか弾き飛ぶ勢いを減らそうとする。
「う、うおおおおお!!!」
だが、それでもプロクスの体は止まることを知らず、やむなく壁際に激突してしまった。
「がっは――っ!」
地面に剣を刺して勢いを減らしたプロクスは、壁際に背中から嫌な音を立てながら思いきり打ちつけられた勢いで肺に溜まっていた空気を全て吐き出しながら、地面にうつ伏せて倒れてしまう。
「やべ……ごほっ、ごほっ! ……苦しくて……う、動けない……っ!」
早く立ち上がろうとプロクスは気合を入れるが、体の方はそれに反応できない。
そんな絶望的な状況の中でも、エクスキューショナーを右肩で担いだスマラグダが、地面を揺らす勢いの足音を立てながら、彼の元へと歩き出す。
「動け……動けよ……俺の体……っ!」
なんとか顔だけでも上げる事ができたプロクスであったがその目の前には、既に目付きの据わったスマラグダが彼を汚物でも見るかのように見下していた。
「なんだ……ゲントさんって案外弱いんですね……非常に残念です……」
「お……俺はまだ負けたわけじゃ……うわっ!?」
スマラグダは持ち上げたエクスキューショナーをブオンっと強力な風圧を巻き起こしながら、顔を上げようとするプロクスの目と鼻の先の地面に叩き落としたことで、彼の顔から血の気が引いた。
「ゲントさん、私……本当にあなたのことを見損ないました……」
「だ、だからあれは俺が悪かったって……」
「そうではありません……私……もっとあなたが強い人だと思っていたから――……だったのに……」
本当に辛そうな顔で話すスマラグダを見て、プロクスは申し訳ない気持ちと自分に対する悔しい気持ちでいっぱいになってしまう。
「く……っ!」
スマラグダはエクスキューショナーを右肩へ再度担ぐと、プロクスに背中を向けた。
「……ですがゲントさんのおかげで……私はもう一人でも大丈夫って……分かりました……さようなら」
それだけ言い残すと、スマラグダは寂しい背中をプロクスに向けながら訓練場から姿を消してしまう。