~アウトロダクション―再び大広間へ~
由梨亜「う、うう……酷い、鬼、悪魔っ……」
レイシャ(以下レイ)「うふふ、何とでもどうぞ~! はい、王子殿下、プレゼントで~すっ!」
シュール(以下シュー)「ああ、よくやった、レイシャ。礼を言うぞ」
レイ 「は~い! さ、ユリア! 仕事しなさい! 方向転換を受けて、急遽作者が作った台本があるでしょ?」
ユリア「……何か、レイシャに『仕事しろ』って言われるのだけはヤダ。いっつもサボりまくって『バイト代ない! ピンチっ!!』って叫びまくってんの誰だと思ってんの?」
レイ 「ふ~~~ん?? じゃあ、ユリアのあ~んなことやこ~んなこと、ばらすよ? ほら、証拠写真だって――」
ユリア「こうして、由梨亜は大広間に戻ってきましたっ!」
レイ 「ちぇーっ。つまんないの~」
ユリア「つまんなくって結構! ……全く、油断も隙もありゃしない。一体いつの間にそんなの用意したんだか……」
シュー「ああ、美しい姫君よ。私に相応しい姫君は貴女だけだ。どうか結婚して下さい」
由梨亜「……ねえ、ユリアさん。これ、嫌って言っていい?」
ユリア「……一応最終話なので、作者の意向に従った方が賢明だと思います」
由梨亜「ちぇっ。……はい、喜んで(棒読み)」
ユリア「……と、そこに、継母達が割り込んできました」
マレイ「待ちなさい! 貴女、どこの誰かと思ったら由梨亜ね? 王子殿下、ご再考を。私の娘達の方が、よっぽど器量良しで後ろ盾もしっかりとしていますわ」
尚鈷 「そうよ! どこがいいの? そんなひょろひょろで色白で不健康そうな奴!」
鈴南 「そ、そそ、そうですよ。選ぶなら、私達にして下さい」
ユリア「……何か、ノリノリね。マレイ……」
マレイ「最後の機会なんだから、とことん楽しまなきゃ!」
由梨亜「まあ、マレイさんは楽しそうね。それに比べて尚鈷、あんた……私のこと、ひょろひょろで色白で不健康そうって思ってたの? ふ~ん、そう……思わぬ所で私の悪口を聞けて、とっても嬉しいわ。ね?」
尚鈷 「くっ……! それなら、鈴南さんはどうなるのよ!」
由梨亜「鈴南? 忠義の鏡じゃない。私をあいつと結婚させたくないから、あんなことを言ったに決まってるわ」
鈴南 「お嬢様……分かって下さったんですね」
由梨亜「当たり前よ、鈴南。一体いつから一緒にいると思ってるの? 私が産まれた時からじゃない」
シュー「余計なお喋りはよい。何だ、私の決めたことにでも文句があるのか? 不細工ども」
マレイ「ぶ、ぶさっ……! ムカつくわ! こんな不快な場所、あと一秒だっていたくない! さあ、帰るわよ! 尚鈷、鈴南!」
尚鈷 「あ、お母様!」
鈴南 「待って下さい!」
ユリア「そうして、継母達は家へ帰って行きました」
由梨亜「あ~あ……。シンデレラの醍醐味って、最後に靴を履く所だったのに……全部パアかぁ……」
ユリア「……あの、先王陛下。それってもしかして、継姉達がシンデレラの小さな靴を履く為に、ピーーをピーーした場面ですか?」
由梨亜「そうよ。それ以外にある? そこが一番笑えるんじゃない。……って言うか、何でそこを伏せ字にするのよ」
ユリア「いや……それを入れると、ちょっと『残酷描写』に引っ掛かるんじゃないかと……。これ、一応コメディで軽いってことになってますし」
由梨亜「ふ~ん……仕方ないかぁ。あ。次、御母様とお父様の出番じゃない。ユリアさん、お願い」
ユリア「はい。シュールが由梨亜を見詰めていると、王様と王妃様が、玉座から降りて来ました」
耀太 「おめでとう、シュール。そして、我が娘よ。其方達の婚姻を、心から祝福しよう」
マリミアン(以下マリ)「ええ。耀太様の仰る通りですわ。二人とも、幸せになりなさいな」
シュー「祝言をありがとう御座います、父上、母上」
耀太 「うむ? そちらの娘に『父』と呼ばれるいわれはあっても、其方に『父上』と言われるいわれはないが?」
マリ 「わたくしもですわ。そちらの方に『御母様』と呼ばれるのは大変嬉しいのですが、貴方に『母上』と呼ばれると、どうも叩き潰してしまいたくなる気分になってしまうのです」
ユリア「……え~っと、由梨亜妾様。それ、主語がないんですけど……」
マリ 「ふふ。うふふふふ」
ユリア「あ~、はい、分かりました! 触らぬ神に祟りなしですね!」
由梨亜「え~っと、ユリアさん。お母様と藍南を出さないと終わらないから、やってもらっていい?」
ユリア「はい。……何か、妙に積極的ですね」
由梨亜「だって、早く終わらせたいもの」
ユリア「あ、やっぱりそうですか……。え~っと、突然のことですが、十二時を過ぎたのにも拘らず、魔法の解けなかった由梨亜は、その場で結婚することになりました。馬車の馬とその馭者になっていた瑠璃と藍南は魔法が解けたので、鼠の姿で結婚式に駆け付けました」
瑠璃 「チュウ! チュウ!」
藍南 「……くっ! それもこれも、全てはこの屈辱を終わらせる為っ! チュウっ!」
由梨亜「まあ、瑠璃、藍南、ありがとう」
シュー「さて、するか」
由梨亜「何ですか? 唐突に」
シュー「作者は未婚だし、披露宴に出たことはあっても式自体に出たことはない。そもそも何年も前の記憶だから、かなりあやふやだろう。ただ、未熟な知識として、一般的には口付けを交わすということは知っているだろう。だから、作者の負担を軽減する為、この私自らが、お前のような小娘と口付けを交わそうと言っておるのだ。分かったか」
由梨亜「……はっ?」
シュー「何、照れなくてもよい。ほら……」
由梨亜「嫌っ! ちょ、誰かっ……」
シュー「何を言っている? どちらにしろ、覚悟はしていただろう?」
由梨亜「ちょっ……!」
ゲシッ!
シュー「ぐあっ!」
ドスッ! ドガッ! グガッ!
瑠璃 「ちょっと貴方……私の娘に、何をしようとしているのかしら? うちの娘に手を出して、ただで済むと思ってる訳じゃないでしょうね?」
由梨亜「お母様……!」
藍南 「うん……ちょっとこれは、いくら何でも見過ごせないよ。友達の貞操の危機だし」
由梨亜「藍南も……!」
マリ 「まあ、先を越されてしまいましたわね?」
耀太 「そうだな。だが、まあ無事であればそれでいい」
ユリア「……え~っと、何で鼠がいきなり人間になったのかって、突っ込む人は誰もいないんですか? え、いない? はあ……そう、ですか……。え~っと、実況です。鼠から突如として人間になった瑠璃と藍南に蹴飛ばされたシュールは、そのまま昇天してしまいました。うん……王子と結ばれないお姫様か。斬新だな……」
耀太 「娘よ、名は何と言う?」
由梨亜「由梨亜と申します、陛下」
マリ 「それでは、由梨亜。シュールはあのように逝ってしまいました。そこで、わたくし達の娘となり、この国の王位を継いでは頂けませんか?」
由梨亜「はい、喜んで! 御母様っ!」
ユリア「そうして、由梨亜は王女となりました。……いいのか、これで……?」
マリ 「ねえ、由梨亜。貴女のお婿さんはどうしようかしら?」
由梨亜「あ、私、香麻がいいです!」
マリ 「香麻さん? 今、どちらにいらっしゃるのかしら」
由梨亜「白雪姫で、小人その五をやっています」
瑠璃 「じゃあ、そちらでの役目が終わったらこちらに来て頂いて、その時にお式を挙げましょう?」
由梨亜「ええ、それがいいわ! じゃあ、みんなで踊りましょう! 今日は無礼講よ!」
マリ 「まあ……ふふ。こんなに元気な娘だと、大変楽しいですわね」
耀太 「……うむ。まあ、そうだな。だが、香麻君と結ばれると言うのなら、一安心だ」
ユリア「え~……言うんですか? 言うんですか? これ」
由梨亜「勿論!」
ユリア「……こうして由梨亜は王女となり、小人の香麻と結婚して、幸せな家庭を築きました。娘にも二人恵まれ、長女を莉衣奈、三歳年下の次女を美央菜と名付けました」
莉衣奈「え~っと……私達って、ここに出てもいいの? だって、本編の最後にしか出ていないじゃない」
美央菜「え? 別にいいんじゃないの? だってお父様とお母様の娘っていうのはあってるんだし。別に私は気にしないわ。お姉様は細か過ぎるのよ」
莉衣奈「だって……悠にずるいって言われちゃったんだもの」
美央菜「私も稟香にずるいって言われたけど、高笑いしてきたわよ?」
莉衣奈「だって、貴女達は女の子同士だから……」
美央菜「ん? ……やっぱお姉様、悠兄様のこと好きなの?」
莉衣奈「えっっ??! ま、まさか!」
美央菜「へぇ~。やっぱそうなんだぁ~。じゃあ、悠兄様は従兄からお義兄様に変わるんだぁ~。じゃあ、稟香は従妹じゃなくて義妹? 何、楽しそうじゃない!」
莉衣奈「全く、美央菜ったら……」
由梨亜「へぇ~。私と香麻の娘って、こんな感じなのね……。あとで千紗に会ったら自慢しちゃおう! ところで、悠と稟香って誰?」
美央菜「千紗小母様と睦月小父様の子供よ、お母様。ちなみに悠兄様はお姉様の一つ年上で、稟香は私の一ヶ月下」
由梨亜「へぇ~。益々面白くなってきたなぁ。これで千紗をからかえるわ!」
莉衣奈「ちょ、お母様!」
美央菜「まあ、程々にねぇ~」
莉衣奈「ちょっと美央菜ったら! ふざけないでよ!」
美央菜「お姉様は、千紗小母様がお義母様になるから怒ってるんでしょ? 気に入られたくって」
莉衣奈「ち、違っ……!」
美央菜「あ~、からかってるってちょっとは気付いてよ。もう、こうなったお姉様はお父様に似て煩いんだから。ナレーターの方、こっちは放っておいていいから、進めてもらってもいいですか?」
ユリア「あ、はい……。そう言う訳で、みんな幸せになりました……めでたしめでたし?」
レイ 「ちょっとユリア、そこハテナにしてどうすんのよ」
ユリア「……レイシャ、家に戻ったら覚悟しててね。全く、癒璃亜女王陛下まで引っ張り出して来るなんて……お仕置き確定ね」
レイ 「ゲッ! こうなったら逃げるが勝ち!」
ユリア「あ、ちょっと待ちなさい! え? ちょっともう……。しょうがないなぁ。全く勝手なんだから。ここまで読んで下さり、本当にありがとうございました! まだ本編を読まれていない方は、どうぞそちらも宜しくお願いします。さて、次回からは白雪姫バージョンでお送りします! 興味のある方は、是非ご覧下さい! じゃ、これでいいわね。待ちなさい、レイシャッ!!」
(終)