~舞踏会・後編~
レイシャ(以下レイ)「え~、それではぁ、皆様ご注目下さぁ~い! 国王陛下とぉ、王妃殿下とぉ、王子殿下のご入場でぇ~っす!」
ユリア「キモい! 激しくキモい! もうやだ、帰る!」
由梨亜「え、え~っと、ユリアさん、ちょっと落ち着いて下さい……」
マレイ「ほら、ご覧なさいな、尚鈷、鈴南。王子殿下がご入場なさるわー(棒読み)」
尚鈷 「本当だわー。(棒読み)それにしても久し振りねぇ。出て来るの……。ね、鈴南?」
鈴南 「え、ええ……ほう、旦那様、かっこいいです……。さすがは旦那様です。貫禄がおありになるから、国王陛下役がお似合いですね。それにしても、何ですか? あの司会役は。男のくせして、ふざけ過ぎです」
マレイ「ご、ごめんなさい、鈴南さん……。あれ、あたしのルームメイトのレイシャ。かっこ女かっこ閉じ」
尚鈷 「お……女?」
マレイ「そう……。一体、何仕出かすやら……」
由梨亜「ほ、ほら、ユリアさん! 出番ですよ!」
ユリア「うう、はい……。王子達が大広間に出て来ると、会場は沸き立ちました。こっそりと会場にいた由梨亜も、その継母や継姉達も、王子の登場に心躍らせました」
由梨亜「どこが」
ユリア「せ、先王陛下、台本通りに……」
由梨亜「しょうがないわねぇ……。ああ、何て素敵な王子様。是非とも一緒に踊りたいわー(棒読み)」
ユリア「そして、一方、王子達」
シュール(以下シュー)「ほほう……これは、また……」
耀太 「どうだ、シュール。お前に似合いそうな娘はいるか?」
シュー「いえ、ここまで美姫が多いと、そう簡単には……」
耀太 「はは、そうか」
マリミアン(以下マリ)「まあ、ですが、不実はいけませんわ、シュール」
シュー「は、はい、母上……。(何か、私の名前だけ、異様な迫力があった気が……)」
耀太 「まあ、そこまで硬くなるな。取り敢えず、楽しめばよい」
マリ 「ですが、耀太様……」
ユリア「え、え~っと、由梨亜妾様。台本だと、『貴方』もしくは『陛下』となっているのですが、何故名前で呼ぶのでしょうか……?」
マリ 「勿論、峯慶様に申し訳が立たないからです。わたくしが『貴方』と御呼び致すのは花雲恭峯慶様、ただ御一人に御座いますわ。『陛下』にしても同じこと。わたくしにとっての『陛下』とは、癒璃亜女王陛下や籐聯陛下、峯慶様ですわ」
ユリア「は、はあ……」
マリ 「確かに、わたくしの娘や義娘である富実樹や富瑠美も『陛下』ですが、富実樹はわたくしが己の腹を痛めて産んだ我が子ですし、富瑠美は十になるまで、わたくしが手ずから育てた愛娘です。目上の存在として敬うのとは、少し違いますのよ」
ユリア「本当に、峯慶陛下がお好きなんですね……(そう言えば、由梨亜妾様が由梨亜妾様だってばれる前もばれた後も、何かにつけて峯慶陛下の自慢をされたような……)」
マリ 「当たり前でしょう? だって、一目惚れだったのですもの。ああ、でも、耀太様を邪険にしているとか、敬っていないと言う訳ではないのよ? だって、耀太様は富実樹を育ててくれた、富実樹の養父ですもの。あの子も耀太様のことを父親として慕っていますし……。本当に、耀太様とその奥方様の瑠璃様には、峯慶様もわたくしも、頭が上がりませんわ。心から感謝しております」
耀太 「いや、その……うむ……」
由梨亜「あら? お父様と御母様、一体何を話しているのかしら? お父様も、照れてるみたいだし……」
耀太 「い、いいから続けるぞ! ほら、レイシャ! 続けろ!」
レイ 「は~い! じゃあ、早速みんな踊りましょ~お! 楽団さん、ミュージック、スタートォッ!!」
ユリア「うわぁ~~~! 古典的なワルツを奏でる楽団に、現代音楽みたいなスタートの掛け方っ……! もうやめてぇ、レイシャーっ!」
レイ 「ふっふっふ~。あのいっつもお堅くて冷静なユリアちゃんが混乱してるぅ~! おっもしろ~いっ! は~はっはっは~。ざまあ見ろ!」
ユリア「……もしかしてレイシャ、この前夕ご飯抜かれたの、根に持ってんの……?」
レイ 「あったりまえでしょぉ? 食べ物の恨みは深いのよ!」
ユリア「……でも、夜中の十二時に帰って来ておいて『夕ご飯ある?』は、いくら何でも……」
レイ 「あ~、煩い! 殿下、運命のお姫様、探して下さ~い!」
シュー「……面倒臭い。一発勝負でよいか」
ツカツカツカ
シュー「美しい姫君、どうか私と踊って下さい」
由梨亜「……ええ、喜んで? どうぞお話もしましょうか? 御父様の暗殺未遂の件と、私の大事な異母妹である早理恵を使って、同じく大事な異母妹と弟妹である、富瑠美と些南美と柚希夜を謀った件について」
シュー「はっはっは。何のことやら」
マリ 「いいのよ、別に。ふふ、ふふふ……二人で楽しんでらっしゃい? ふふ、ふふふふふ……」
バキッ!
耀太 「……大丈夫でしょうか? 今、嫌な音が……」
マリ 「まあ、嫌だわ、わたくしったら。つい力が籠もって、扇子が折れてしまったではないの。申し訳ありませんわ、耀太様。か弱い女の子に近付く害虫を見ていたら、つい……ふふっ。この折れた扇子が、害虫であればよいのに……」
耀太 「……さ、さすがは、由梨亜の産みの母だな……」
マリ 「まあ、何か言いまして?」
耀太 「い、いや、何も……」
マリ 「まあ、御覧下さいな、耀太様。あの女の子とシュールが踊っていましてよ」
耀太 「あ、ああ……」
由梨亜「あら? 何だかお父様、怯えているみたい……。でも、御母様は何だか楽しそうだわ」
シュー「はは、そんなことを御考えになる余裕がおありになるのですか? 先王陛下?」
由梨亜「ええ、そうですね。余裕ですわ」
ギュムッ
シュー「~~~~! き、貴様、わざと踏んだだろう!」
由梨亜「まあ、ご免遊ばせ。わたくし、このような晴れやかな場には縁遠いものですから……殿下には、真に申し訳なく」
シュー「……どうしてこういう時だけ、台本の台詞を使う?」
由梨亜「まあ、何を仰っておられるのか意味が分かりませんわ。おほほほ……」
ユリア「あのぉ、お二人とも……もうそろそろ十二時です」
由梨亜「あら、もうそんな時間? 復讐を色々考えていたら、つい時間の感覚が……」
ユリア「……そこは、『王子殿下との楽しい逢瀬に気を取られて、時間の感覚がなくなってしまったわ』ではなかったでしょうか?」
由梨亜「細かいことは気にしないの、ユリアさん! 『時間の感覚がなくなった』っていう要旨はあってるでしょう? それでは殿下、これにて! ふふ……ようやく帰れるわ!」
ユリア「ああ、良かった……。後は、もう帰るだけ……。にしても、この段に至っても、レイシャが何も仕出かさないのが気になるけど……ま、何にもなければそれで――」
レイ 「よくなぁ~いっ!」
ユリア「げげ! この疫病神!」
レイ 「う、酷いよ、ユリア……! この妙齢の乙女に向かってっ……!」
ユリア「妙齢? 乙女っ? どこがっ!!」
レイ 「ふ~ふっふっふ~。お口の悪いユリアちゃんの代わりに、先王様には、ちょっと申し訳ないけど……うふふふ……」
由梨亜「あ、じゃあ私、そろそろ! ばいばいっ!」
レイ 「ふっふっふ~、逃がすものか! 殿下、ご命令をっ」
シュー「あ、ああ……だが、本当にやるのか?」
レイ 「勿論」
シュー「……原作無視して暴走し過ぎな上、恋愛要素が含まれた物語としては全く成立しないということとなるのだが、それで本当によいのか」
レイ 「はい。楽しんで何ぼでしょう! 第一、お歳を考えては? 宗賽大臣さん?」
シュー「……まあ、正直面倒臭いからな、いいだろう。許可を出す」
レイ 「よっしゃあ! ……って、あれ? あ~、もう! 宗賽大臣が許可出すの遅らせたせいで、もうあんな遠くに! 実際の政治とおんなじことしないで下さいよぉ~。んじゃ、行きますかぁ!」
由梨亜「はあ、はあ……ようやく、出口……あとは、階段降りるだけ……」
ユリア「ここまで……遠かったです……」
由梨亜「よし、あとは靴を片方脱いで、階段を駆け下りれば、だいじょ、う、ぶ……?」
ユリア「ひぎゃぁぁぁあああああ!」
レイ 「こ~の~あ~た~し~か~らぁ~! 逃げられると思うなぁっ!」
由梨亜「嫌ぁ~~~~~! 鬼ぃ!」
レイ 「待ぁ~て~っ! きゃ~はっはっはぁ~!」
由梨亜「ぎゃ~~~~~~! 来ないでぇ~~~!」
ユリア「嫌っ! 気持ち悪い~!」
レイ 「ふ~ふっふっふ~。二人とも、前見て階段降りないと、と~んでもないことになっちゃうよぉ~?」
ユリア「え、前って……! ちょっとあんた! 退きなさい! まだ出番じゃないでしょ! 二回もしゃしゃり出て来るなんてぇ~~っ!」
由梨亜「そうよ! あんたの役目はうちに来た時にガラスの靴を捧げ持つことでしょぉっ?! 休憩時間(幕間)に作者が間違いなく、そう言ってたんだからねっ? 眞湖聡!」
聡 「さて、何のことだか……。この僕が、そんな地味な役に徹するとでもお思いですか? そして、ただの庶民なんかの言うことを聞くとでもお思いですか? 由梨亜さん」
由梨亜「くぅ~! さすがは私と千紗と睦月の目の前で、庶民が野蛮人だとか半人だとか、庶民が人じゃなくて『物』だとか、私達が純潔で純血だとか抜かして千紗をぶち切れさせたことはあるわね! 徹底し過ぎて踏みにじりたくなるほどの選民主義だわっ!」
ユリア「そ、そこまで言ってたんですか……」
由梨亜「だから私も千紗も、あんた達のことが大っ嫌いなのよ! 婚約者候補なんて、最低最悪な制度ごとねっ! 特に千紗なんて、トラウマなんだから! そういう選民主義! 私も会った当初は知らなかったせいで、うっかり傷付けちゃったけど!」
聡 「トラウマ……? 何故トラウマだと?」
由梨亜「あんたなんかに言う訳ないでしょうがっ?! 第一、これは番外編のネタだから絶対言うなって作者に言われてんのよ! って、きゃあ! もうぶつかるんだから好い加減退いて! 退きなさい!」
レイ 「そーいう訳にはいかないんだよなぁ~。聡! お願い!」
聡 「了解。美しいご婦人の仰ることならば……」
スッ
由梨亜「ひぎゃっ!」
聡 「ああ、貴女は何て美しいのか。本当に、荒野に一輪咲き誇る薔薇のようだ。気高く、誇り高く、艶やかで艶麗な美貌を誇り、それに寄せられて集う男達を、その身に纏う鋭い棘で寄せ付けない……」
由梨亜「ううっ、キモい!」
ユリア「せ、先王陛下! スピード落ちてます!」
聡 「ああ、本当に貴女は、薄汚い庶民なんかには似合わない。この僕のように、貴方と身分が吊り合うほどの、高貴で威厳と優雅さがある人物でなければ、到底貴女の傍にも寄れぬというもの。さあ、由梨亜さん! あんな獣は捨てて、この僕の手をっ――!!」
由梨亜「だから……。キモいの! ウザいくらいっ! 二度と触るな話し掛けるな視界に入るなっ! お前なんかが香麻を貶す余地はない!」
聡 「ふ、ふぐっ……」
ユリア「す、凄い……見事な飛び蹴り……!」
由梨亜「ふ、こんなものね。ちょろいわ。あの時は、千紗がキレまくってたものねぇ……。キレる機会がなかったから、丁度良かったわ」
レイ 「うふふ~。尊い犠牲、ありがと~、聡。見事な噛ませ犬だね~。あたしの言ったことを本気に取っちゃうなんて、か~わい~い! とりゃっ!」
由梨亜「きゃあっ! ちょ、痛っ……!」
ユリア「ちょっと、何これっ?! 投網なんて卑怯よ!」
レイ 「ん~? これ、投網って言うんだ~。初めて知った。んでも、何でユリアが知ってんの?」
ユリア「ぐっ……(使い方習いました、なんて言えないでしょうがっ……!)じ、実家が漁業やってんのよっ! っ、これ、どんな投網よ! このあたしが、魔族の体力を持つあたしが、力を籠めて破れないですってっ?!」
レイ 「ん~ふっふっふ~。それ、特別製なんだよねぇ~。さ、戻りましょうか、お姫様?」
由梨亜「え? きゃっ! 何っ?! これ、この、気配っ……! ちょっとレイシャさん、これ曾御祖母様の魔力じゃない!」
レイ 「うふふ~。言ったでしょ? 特別製だ~って。さあ、殿下の元に戻りますよぉ~」
由梨亜「嫌ぁ~っ!!」
ユリア「レイシャ……あんた、原作無視のとんでもないことやらかしたわね……」
レイ 「何とでもどうぞ? あたしは楽しかったしぃ~。さて、次回は『アウトロダクション―再び大広間へ』だってぇ。シンデレラ編は、次回で終了です! 次回も宜しくお願いしまぁ~すっ!」
これ以降の出番がない人達による座談会
早理恵「まあ、お気付きになりましたか? 聡様」
聡 「ああ、何てお美しい――」
ガシッ
聡 「……? お美しい姫君、どうかなさいましたか?」
早理恵「まあ、何もご存じないのですね。わたくしは花雲恭早理恵。この子は花雲恭麻箕華。貴方に制裁を与えに参りましたの」
聡 「は……?」
早理恵「ほら、御父様も、睦月様もこちらにおいで下さいませ。楽しいお仕置きの時間ですわよ?」
聡 「え、は、え……?」
麻箕華「よりにもよって、富実樹御異母姉様に色目を使うなんて……。万死に値しますわ」
峯慶 「ああ、実に楽しみだな。折角愛しい娘と会える機会を、君が潰してしまったのだ。その罪科は重い。思う存分、八つ当たりの相手となってもらう」
睦月 「まあ、俺は……何だ? 千紗の婚約者候補だったのがムカつくっていうことと、由梨亜に言い寄ってたのに激怒した香麻の代わりってことで……」
聡 「う、あ、え……? あ、君は蔡条護じゃないか! 助けたまえ!」
護 「僕もぼろっぼろだっつうのに……。自己中が。いたぶられて死んでしまえ」
聡 「なっ……!」
峯慶 「さて……眞湖聡君、だったかな? 覚悟はいいかい?」
聡 「ひ、ひゃーーーーっ!!」
その後、彼の行方、及び安否を知る者は、いないという……。




